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ノンスロット型光ケーブルにより光敷設コストを低減

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 今年4月は「通信・放送Week2018」や「CATV×KDDIパートナーズ・コンベンション2018」が都内で開催され、多くのCATV事業者が会場を訪れた。これらのイベントに共通したテーマの一つとして地方創生があり、主催者や出展社からはCATVインフラの光化やモバイル5G、IoTを活用したアプリケーションが提案されていた。
 光化の課題に関してCATV事業者からヒアリングすると、PON方式の選択や集合住宅の広帯域化という技術的な項目の他、導入コストを如何に下げるかという点は変わらずに存在する。導入コストに関しては、今後の10G級PONを視野に入れるかといったように個々の経営ビジョンにより最適な解が異なるものの、何をするにしても発生するのが光ケーブルのコストだ。光ケーブルはHFCエリアのFTTH化だけでなく、HFCエリアにおける光部分を拡大して小セル化を図る際にも影響する。
 国内CATV市場では未だ普及していない光ケーブルのコストダウンの方法として、NTTや海外データセンタ(DC)事業者、北米CATV事業者が採用している「ノンスロット型多心光ケーブル」がある。これは光ファイバテープ心線の技術により光ケーブル内のスロットを省いた製品で、多心光ケーブルの細径化と低コスト化を実現している。最近、NTTが導入シーンを広げたことでも注目が集まっている製品だ。
 細径・軽量という特長を持つ「ノンスロット型多心光ケーブル」は既設設備の有効利用、日本では特に電柱の共架などで分かり易いメリットがある。今回は「ノンスロット型多心光ケーブル」に関して、普及の推移や現状をまとめた。

ノンスロット型多心光ケーブルがNTTや海外データセンタで普及

 「間欠接着型光ファイバテープ心線」を用いた超細径高密度光ケーブルは、日本の大手ケーブルメーカーによるNTTへのVA(付加価値)提案の一環として開発が進められ、2012年に実用化された。この「間欠接着型光ファイバテープ心線」技術はケーブルのノンスロット化にも貢献し、複数の大手ケーブルメーカーが「ノンスロット型多心光ケーブル」を製品化した。これにより多心光ケーブルの細径化は飛躍的に進歩し、今ではNTTだけでなく海外のハイパースケールデータセンタにおけるデータセンタ間接続(DCI)や北米の大手CATV事業者の光配線においても「ノンスロット型多心光ケーブル」は重宝されている。
 日本発の技術である「ノンスロット型多心光ケーブル」が海外で普及している理由として、次のような背景がある。海外では数十心までの少心に適したルースチューブ型の光ケーブルがデファクトであるのに対し、世界に先んじて光幹線の整備が進められた日本では、多心仕様に適した光ケーブルとしてスロット型が開発された。例えばDCI では狭隘な管路における屋外光ケーブル敷設が一般的だが、海外の光ケーブルメーカーは未だルースチューブ型の光ケーブルがメインであり、管路敷設を可能にする細径の多心ケーブルには対応できない。その為、日本で独自に発展を遂げた「スロット型多心光ケーブル」を更に細径化した「ノンスロット型多心光ケーブル」は、敷設のトータルコスト低減やクロージャ等のコンパクト収納を可能にした点も含め海外市場でも高い評価を得ている。北米OTTのDC市場はもとより、欧州の北欧DC移設や中国OTTのBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)による新規DC 建設等、今後もDC 投資はワールドワイドで拡大を継続するので、それに伴って「ノンスロット型多心光ケーブル」の普及も一層進む見通しだ。

国内市場における需要拡大の兆し

 一方で、日本市場における「ノンスロット型多心光ケーブル」の普及は海外ほどではなく、NTT以外では一部の事業者が採用しているに留まっているというのが実情だ。例えば、国内における既設DC の半数以上は築20年以上と老朽化しており、膨張を続ける通信トラフィック面及びハイエンド機器や空調を支える電力面の双方から新規DC 建設の需要がある。そこで国内のDC 事業者においても「ノンスロット型光ケーブル」の採用は検討されてきたが、DC事業者、そして通信事業者やCATV事業者が数十年に亘り使用してきた「スロット型多心光ケーブル」に対し、「ノンスロット型多心光ケーブル」は国内市場での実績が少なく、導入に踏み切れないというのが国内の事業者サイドの声だった。その流れを変えたのが、昨年下期のNTTの動きだ。
 NTTの通信設備では、2012年より架空ケーブルのスロット型からノンスロット型への置き換えが進められており、最近では地中用ケーブルでもノンスロット型への置き換えが進んでいる。地中用ケーブルの動きをベンダに聞いたところ「昨年下期より400心/1000心のノンスロット型光ケーブルを従来のスロット型からの置き換えで納入した。これにより架空だけでなく地下もノンスロット型光ケーブルでの実績ができた。今後の新規引き合いについてはノンスロット型を推奨していくとともに、ノンスロット型光ケーブルの製品ラインナップを拡充していきたい」としており、施工に関しては「シースを剥く段階から使う工具が変わるので、我々もフォローができるようにチームを編成して日本各地を回ったが、特に問い合わせもなくスムースに進んだ」と話している。
 従来のスロット型がほぼ国内向けの仕様品であることを考えると、大型顧客であるNTTがノンスロット型へ移行することでスケールメリットが低減すれば、スロット材料や設備コストが製品価格に反映される可能性も出てくる。そのため、NTTが地中用ケーブルでノンスロット型を採用したインパクトは大きく、各分野の事業者は国内の実績としても注目している。これを機に国内市場におけるノンスロット型の導入が拡大するのか、今後の関係各社の動きに注目したいところだ。