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各国のデジタル化を推進する、シスコのCDAプログラム最新状況【1】

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 シスコが取り組んでいるカントリーデジタルアクセラレーション(CDA)プログラムは、戦略的な共同投資と共同イノベーションのプラットフォームであり、その国の産学官が一つになってデジタル化の価値を引き出すことで、インクルーシブな社会と回復力のある経済を実現するものだ。
 本記事では、CDAプログラムの海外、日本の最新状況について、6月14日に開催された記者説明会の情報をベースにレポートする。

(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)

シスコ グローバルにおけるCDAの最新状況と事例

シスコ
SVP 兼 グローバル イノベーション オフィサー カントリー デジタル アクセラレーション(CDA)&シスコ ネットワーキングアカデミー担当
ガイ・ディードリック氏

 シスコはCDAプログラムを通じて、各国の国家デジタル戦略を支援し、様々なプロジェクトの実行計画にも協力してきた。シスコのSVP 兼 グローバル イノベーション オフィサー カントリー デジタル アクセラレーション(CDA)&シスコ ネットワーキングアカデミー担当であるガイ・ディードリック(Guy Diedrich)氏は「この取り組みは、十年前にフランス、イタリア、ドイツ、イギリス、インドの5カ国から始まり、今では50カ国で活動している。50の国の指導者が私共をパートナーとして選びデジタル化を進めており、これからの20年間を見据えた、国家として重要な意思決定を国民のために行っている」と話す。

現在、CDAプログラムを通じて、業種を問わず1,600を超えるデジタルプロジェクトが実行されている。

デジタルプロジェクトの事例

 現在、CDAプログラムを通じて、業種を問わず1,600を超えるデジタルプロジェクトが実行されている。ディードリック氏は「主要な業界全体のデジタル変革を通じてシスコのパーパスを実現する」とし、教育、サステナビリティなどの事例を紹介した。

教育
 南アフリカでは、EDGE Centreというプログラムが実施された。EDGEという名称はExperience(経験)、Design(設計)、Go To Market & Earn (市場開拓、収益)を意味しており、同プログラムは南アフリカのデジタルトランスフォーメーションを支援する設計となっている。教育を重視するシスコは、このEDGE Centreを、まずは恵まれない子供たちがいる地域で展開したという。シスコは、EDGE Centreを通じてデジタルスキル教育を促進し、また地域の中小企業やスタートアップが世界クラスのテクノロジーにアクセスできるようにすることで成長を加速させている。
 サウジアラビアでは、シスコは同国政府からSaudi Vision 2030の達成に向けた重要なイネーブラーであると評価されており、重要な国家プロジェクトに取り組むとともに、人材育成に取り組んできた。シスコは同国の教育現場において、地方では都市と比べて教師が不足していると判断し、バーチャル教室を構築して優秀な教師によるリモート授業を実現している。
 ロシアの侵攻によりビルや学校が破壊されたウクライナでは、避難所での生活を余儀なくされている子供達がリモートで教育を受けることができるよう、避難所にCisco Meraki等を設置している。
 ディードリック氏は「我々はその国の状況に応じ、優先的に解決すべき課題に対してソリューションを提供する」と話している。

サステナビリティ
 太陽光発電を都市環境に統合するソリューションを専門とするMorgan Solarとの取り組みでは、オフィス空間におけるクリーンエネルギーの導入を試験的に実施。Morgan Solar のEnergy Blinds (アルゴリズムによって制御される太陽光発電のブラインド) と、室内でのエネルギーの分配に役立つシスコのPoEスイッチやWebexを統合して活用することで、窓から差し込む太陽光を積極的にクリーンエネルギーにすることや、各部屋の温度、照明などの監視と制御をネットワークベースで行うこと、また使っていない会議室などを把握することでクリーンエネルギーを蓄えるなど、屋上の太陽光発電のみよりもサステナブルなオフィスの実現に向けた取り組みを進めている。
 V2G分野では、商業的なE-Flexプロジェクトに取り組んでおり、双方向充電ステーションの設置とデータ収集、そして多くの台数のEVとの接続による総電力量の増加など、V2G技術の有用性を実証している。ディードリック氏は「例えば、以前のカリフォルニアはEVの環境に対応できるようなグリッドではなかったことから、電力ピークの時間帯に停電が発生していた。そこでE-Flexプロジェクトにより、EVの車体の電力を家庭の電力として供給する、家庭の電力ピークが過ぎたら車体に充電するなど、自由に対応できるようにし、この問題を解決した」と説明している。

 シスコが取り組んだデジタルプロジェクト事例は、他にも重要インフラ、スマートシティやサイバーセキュリティ、医療など多くの分野で成果を挙げている。
 ディードリック氏は「こうした様々な分野の事例の成果は、シスコの製品・サービスだけではなく、多くのパートナーと協力して、多くのあらゆる問題を解決することで実現できた。重要なのは、問題が解決できない場合には、誰か解決できる人を見出すことが可能なパートナーシップを構築しているということだ」と強調している。

レポート目次

1:シスコ グローバルにおけるCDAの最新状況と事例

2:デジタルスキルギャップなどの社会課題の解決に向けた取り組み

3:日本におけるCDAの取り組みや進捗状況