ノキアが提案する、ローカル5GとPOLを組み合わせた低コスト化【1】
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ローカル5Gの様々なPoCが進み、有効性と課題が見えてきた。日本政府による共同利用区域の制度化により普及促進の期待が高まる他、海外においては、スマートシティにおけるプライベートネットワークでの5G活用のトライアルや、IoT向け5Gデバイスの製造および運用コストを削減することが期待されている5G RedCapのトライアルの成功例が報告されるなど、5G活用の将来性や拡張性を感じさせる話題が増えている。だがその一方で、ローカル5Gは構築コストが課題として挙げられている。
そうした中、ノキアが構築コストの削減として提案しているのは、ローカル5Gと光配線POL(Passive Optical LAN)を組み合わせたネットワークだ。POLは、光アクセス技術PONを構内ネットワーク向けに転用した伝送方式であり、使用する機器や配線はPONと同じであることから、信頼性とコストパフォーマンスに優れている。ノキアソリューションズ&ネットワークスのカスタマーエクスペリエンス エンタープライズ営業本部 執行役員 エンタープライズビジネス統轄 営業本部長である岡崎 真大氏は「日本のお客様のご要望を伺うと、ローカル5Gへの期待が大きすぎて、ローカル5Gのみでネットワーク網を構築しようとなさるのでコストが課題となっているように見受けられる」と指摘し、「海外におけるプライベートワイヤレスは、無線と有線をミックスした適材適所がスタンダードであり、日本でもそうした導入が出始めている。そこで我々は、ローカル5GとPOLを組み合わせてコストを抑えるソリューションをご提案している」と話す。
POLは、従来の有線LANと比較しても多くのメリットが有る。例えば、有線LANではコアスイッチとアグリゲーションスイッチを多段接続していた部分が、POLではOLTを各スプリッターと直接接続するだけで済むので、消費電力の削減や、機器設置のための床面積の削減、そして機器メンテナンスもOLTのみで済む。また、銅線ケーブルに対して省スペースなファイバを用いるので、建物内での敷設に必要な空間も確保しやすい上、伝送速度を上げるためにケーブルを敷設し直す必要も無い。特にノキアのG-PON技術は2.5Gbps、10Gbpsの実績が豊富であり、25Gbpsへの将来拡張も可能なので、一度構築すれば長期間にわたり必要な帯域を高い信頼性で使い続けることができる。岡崎氏は「PONというキャリアグレードの技術をLANへ転用するにあたり課題が有ったものの、それが解消されたことから積極的にご提案を始めている。PONの特長の一つである長距離伝送もPOLは有しているので、製造業や流通、空港など広いエリアを扱うケースもあるローカル5Gとの相性は、他の有線LANと比較しても良い」と話している。
今回の記事では、ノキアから見た世界のプライベートワイヤレスの動向と、POLの詳細について纏めた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
ITではないエリアに対するIoTプロジェクトが増加
ノキアはIndustry 4.0をキーワードとし、日本を含む世界の各エリアでクラウドのハイパースケーラーや、ロボットやスマートグラスを含めたIoTシステムのベンダと連携しながら、プライベートワイヤレスを提案している。
岡崎氏は「プライベートワイヤレスは、データセンタやオフィスといった従来からのITのエリアだけではなく、いわゆるOTと言われる現場に近いエリアでのビジネス規模がどんどん広がっている。我々の感覚として、投資の動向は、OTとIT、IoTのプロジェクトが連動してるケースが半分ぐらいになってきている。ITではないエリアに対する働き方改革として、ウェアラブルやロボット自動化といったところに非常に興味が集まっていると当社は見ている」と話す。
自動化や半自動化による業務の効率化がローカル5G普及の鍵
ノキアはIndustry 4.0に関して、効率性、安全性、生産性という三つのキーワードを挙げている。そこに対して自動化、予測、フィードバックのサイクルの実現や、その高速化が、ネットワークに投資をする動機となるという。
岡崎氏は「5G構築のコストを考えると、B2Cの公衆網のみでは投資の回収が難しい部分が有る。やはり自動化や半自動化による企業の活性化に対して、どこまでビジネスに直結するような話が動き始めるかによって、普及のスピード感が決まるのではないか」と話している。
次に、海外におけるプライベートワイヤレスによる業務効率化の事例を見ていきたい。
レポート目次
1:ITではないエリアに対するIoTプロジェクトが増加