「Nokia Connected Future 2023」Review【4:ノキアのモバイルネットワーク製品戦略】
SpecialReport 有料 続いて登壇した、ノキア RAN 製品管理部門責任者であるブライアン・チョー氏からは、ノキアのグローバルな実績と今後の製品戦略、そして注目のRAN新製品や、Cloud RAN(vRAN)のパフォーマンスにとって重要な要素となるハードウェア アクセラレーション テクノロジーが解説された。
チョー氏は「ノキアは、Purpose BuiltのRAN製品を、日本を含む各国のお客様に提供してきた。これらは、先進のパフォーマンス、信頼性、セキュリティそしてTCOを担保している。そして私たちは、新しいイノベーションにも対応しており、Cloud RAN、Open RANにも対応する。ここに妥協はない。そしてIn-line L1アクセラレータによって最大限の柔軟性そしてオープン性を担保していく。お客様は、ベストなソリューションをコンピューティングの世界から選んでいただける」と話す。
本レポートでは、チョー氏がどのような点を重視しているのかも交えながら、ノキアの近況や今後の展望を纏める。
5Gやプライベートワイヤレス ネットワークの堅調な実績
ノキアは主要地域で303件の5G契約を締結している。その内の46社は2019年以降の新規顧客であり、業績は堅調な推移を見せている。
多くの新規顧客を獲得した中で特に注目を集めたのは、世界最大のRANフットプリントの1つを持つ事業者であるReliance Jioと5G SA契約を締結したことだ。チョー氏は「面白いデータとしては、Reliance Jioの加入者が一日に使うデータ量はヨーロッパ全体の一日のデータ量を上回るとも言われている。ここから、加入者数やネットワークの規模が見て取れるかと思う」と話している。
また、ノキアはプライベートワイヤレス ネットワークの市場で635社以上の顧客を獲得しており、その内の140社が5Gの契約をしているという。チョー氏は「主なお客様は、運輸業界、エネルギー、製造・サプライチェーン、政府・地方自治体だ。また、非常に小規模なエンタープライズのお客様に対しても、サブスクリプションベースのクラウドを提供している。世界中のお客様が、ミッションクリティカルなネットワークの構築に際し、ノキアの革新性とパフォーマンスに期待している」と話す。
モバイルネットワークの製品戦略
チョー氏は、ノキアの戦略的な優先事項を次のように纏めている。
将来の変化に備えたパフォーマンス
・優れたHWとSWのアーキテクチャとプラットファーム
・高性能ネットワーク(優れた使い勝手)
最も効率的なネットワーク
・サステナビリティとネットワーク効率
・自動化と最適化(KPIの向上、コストの削減)
将来の変化に備えたネットワーク
・既存RANと同じソフトウェア(同等の機能)で運用可能なクラウドネイティブRAN
・5G-Advancedおよび6Gへの進化
チョー氏はこれらの要点を踏まえ、「私たちはワイヤレス マーケットのリーダーと自負しており、このポジションを継続したいと考えている。そのために、ベストなハードウェアとベストなソフトウェアをコンビネーションとして使うことでベストな性能のソリューションを提供し、商用で最善のパフォーマンスを担保する。この最善のパフォーマンスでエネルギー効率を上げて、最も運用しやすいネットワークを作る。また、5G-Advancedの開発に加え、既に6Gのリサーチをスタートしている」と話し、期待の新製品を幾つかピックアップした。
クラス最高の容量とネットワーク性能を実現するMassive MIMO無線機
北欧神話の鳥にちなんで名付けられたという「Habrok」は、Nokiaの包括的なAirScale RANポートフォリオに加わったMassive MIMO無線機の最新製品。Nokiaの最先端新世代ReefSharkシステムオンチップ(SoC)を搭載し、32 TRX(Habrok 32)と64 TRX(Habrok 64)の2バージョンをラインアップしている。
完全なスペクトルの柔軟性とネットワーク パフォーマンスのために設計されており、シングルキャリアおよびマルチキャリア性能のためのスケーラブルな容量を提供する。バンドn78に加え、高い無線周波数帯域幅、200MHzの占有帯域幅 (OBW) および 400MHzの瞬時帯域幅 (IBW) をサポートし、フラグメント化されたスペクトル割り当てや、 ネットワーク共有ケースを使用できるようになっている。こうした機能により、あらゆるMassive MIMOの使用例と展開シナリオをカバーできる製品となっている。
消費電力は前世代と比べて30%の削減に成功しており、エネルギー効率の良さにより総所有コストの低減を実現。チョー氏は「現在直面している、電力の危機的な状況に対応する」と強調している。また、フォームファクタも改善されており、例えばHabrok 64では従来製品よりも約30%の軽量化となる24kgを実現しているので、設置が容易で展開が速く、5Gネットワークの展開を加速させることができる。
新世代のベースバンド カードにより、ノキアのベースバンド分野の優位性を強化
新世代のベースバンド カードとして紹介されたのは、5G-Advancedも想定したベースバンド容量カードとなる「Lodos(ABIQ)」と「Levante(ABIP)」。また、前例のないスループット容量を備えた新しい超高性能ベースバンド コントロール カード Ponente(ASIM)も紹介された。各モデルの特長は次の通り。
4G/5G容量カード「Lodos」:拡張性を強化し、エネルギー消費を最大30%削減する。
4G/5G容量カード「Levante」:サポートされる Massive MIMO セルの容量を最大で100%増加でき、かつエネルギー消費を60%削減する。また、拡張性も提供し、最大3倍の大規模なサイト構成を可能にする。
2G-5G制御カード「Ponente」:最大で100%高いスループット容量によりトラフィックの増大をサポートし、高速サイト接続を提供する。また、エネルギー消費を最大80%削減し、5G SAおよび5G-Advancedへの将来を見据えたサイトの進化と、スペクトル再ファーミングの効率を提供する。このカードには、ソフトウェア処理されたキーよりも安全なハードウェア処理されたセキュリティ キーを使用する Trusted Platform Module (TPM) テクノロジーが統合されている。
これらの新製品もReefShark SoCテクノロジーを搭載しており、業界をリードするベースバンド セル容量、接続性、および処理を可能にする。また、Cloud RAN対応により、5G-Advanced以降の長期的なネットワーク進化もサポートできるので、投資保護も含めたメリットが有る。
チョー氏は「これらのベストなハードウェアにベストなソフトウェア機能を載せることで、最高の商用ネットワークを実現することができる」と話している。
Report目次
1:低消費電力等でSociety 5.0に向けたデジタル化を推進
4:ノキアのモバイルネットワーク製品戦略