AEyeが提案する、ソフトウェア定義型LiDAR【4:産業用ソリューションにおける強み】
SpecialReport 有料 AEyeのGMインダストリアルであるブレント・ブランチャード氏からは、LiDARを使った車載以外の産業用ソリューションについて解説された。
同氏は「今日、世界中の政府は、未来のスマートシティの基盤となるスマート インフラストラクチャに投資している。スマート インフラストラクチャは、データを収集・通信し、正しい決定を促すことによって、自治体がより効率よく、そして市民が安心に暮らせることを実現できる。こうした新しいレベルの安全性、効率性を提供するスマート インフラストラクチャの実現には、スマートセンサが必要だ。そして、AEyeのLiDARセンサならば、街中に様々な種類のセンサ アプリケーションを提供できる」と説明している。
AEyeのLiDARセンサは、検知対象を正確な3D画像として捉えることが可能だ。毎秒送信される数百万のレーザパルスのToF(飛行時間)を測定することにより、3次元空間内の物体を正確に識別し、位置を特定できる。これらの非常に正確な測定値を使用して、物体を分類し、道路利用者すべての正確な位置、速度、および軌道を提供することが可能だ。この高精度な把握を広範なエリアで展開することで、交通インフラのスマート化にも貢献できる。
ブランチャード氏は「従来のカメラやレーダでの検出方法では、高精度の深度情報を絶え間なく得ることは不可能だ。AEyeのLiDARは、そのギャップを埋めることができる」としており、「スマートセンサによるスマートシティでは、例えば車両のアイドリング時間を短縮することによるガス排出量の削減、緊急支援車両の迅速な配備、交差点での歩行者と自転車の安全確保、通行料徴収の自動化が実現できるので、市民の暮らしやすさに繋がる」と説明している。
街中の歩行者を護るLiDARセンサ
ブランチャード氏がスマートシティの中で特に強調したのは、歩行者の安全だ。同氏は「2022年の夏にWHOが出した報告書によると、130万人の方が交通事故関係で亡くなっている。その半分は、歩行者だった」と指摘し、AEyeのLiDARセンサによる安全性の確保を提案している。
従来のセンサで街中の歩行者の安全を確保する場合、カメラは暗い場所や逆光、悪天候、遠距離での利用は不向きであり、レーダは自転車とスクーターを見分けるのが難しい。ブランチャード氏は「インテリジェンス オペレーティング システムを搭載した次世代LiDARであれば、歩行者の安全を確保するのに必要な、フォーカス機能、分解能、精度をクリアし、交差点の管理、歩行者の横断の把握などが実現できる」としており、「AIを使ったソフトウェア定義のプラットフォームなので、様々なアプリケーションが実現できる。自動事故検知、V2Xのような情報通信をはじめ町全体での様々な通信方法が可能となる。AEyeのLiDARセンサならば、これまでのマーケットの常識を覆すことができる」と説明している。
複数レーンの自動料金徴収システムを低コスト化
ブランチャード氏は、AEyeのLiDARによる自動料金徴収システムの低コスト化にも言及した。
同LiDARは、ソフトウェア定義の調整により、1台で5レーンの車線の交通状況を常に把握できるので、例えば5台のカメラで5レーンを監視しているシステムを1台のLiDARに置き換えることができる。また、カメラよりも長距離の検知が可能である同LiDARは、数100mごとの設置で要件を満たせるので、距離の面でも設置台数を減らすことができる。
ブランチャード氏は「設置台数を減らすことは、ケーブル敷設など含めてコスト削減に直結する。また、従来の監視ソリューションの検知の精度は95%に届かないが、AEyeのLiDARであれば100%近い検知が可能になるので、徴収の漏れを防ぐことができる。例えばトルコの例では、イスタンブールに入ってくる全ての交通トラフィックを監視することで徴収漏れを防ぎ、街が収益を上げている」と説明している。
また、AEyeはVUERONとパートナーシップを組み、12レーンを常時監視し500m先までのトラフィックを把握できる、革新的なソリューションを実現しているという。
このソリューションでは、LiDARと他のシステムを通信で連携しており、ブランチャード氏は「事故等が発生したら、当局に対して直ちに情報を送信できる。我々のLiDARであれば、自動インシデント検知システムとも連携ができる」と説明している。
鉄道、航空、防衛でのLiDAR活用
今回の説明会では車載や道路のアプリケーションを中心に紹介されたが、AEyeのLiDARはプログラミングにより様々な機能を調整できるので、鉄道、航空、防衛に適したアプリケーションも実現できる。これを単一のプラットフォームで実現できることは、商品展開として大きなアドバンテージだろう。
例えば、同LiDARは1km以上先の検知ができるよう調整が可能なので、鉄道の踏切で危険な横断をしようとする車や歩行者に向けて早期にアラートを発することや、線路上の障害物を早期に検知することもできる。鉄道という高速で移動する交通機関では、列車のスローダウンなど初動が重要なので、LiDARによる早期の状況把握が役立つ。
また、AEyeは航空・宇宙・防衛の部門を新たに立ち上げ、LiDARを提案している。ブランチャード氏は「これらの業界には、非常にユニークな要件がある。そのマーケットでソリューションをどう出していくかを理解するために、専門の部門を新設した」と話している。
航空分野で同社は、LiDARを使ったヘリコプター向けのアプリケーションで、ドイツ企業とパートナーシップを結んでいるという。ブランチャード氏は「100m先の細いワイヤーも検知できるセンサを展開しようとしている。ヘリコプターの操縦士にとって、初めての場所を飛行する際に、ワイヤーの検知が非常に重要だからだ。また、LiDARは視認性の低い環境でも状況を把握できるので、例えば砂が舞って前が見えない状況でヘリコプターを着陸させる際に操縦士をサポートできる」と説明している。
防衛の分野では、AEyeは各国のSIerと協力してソリューションを展開しているという。ブランチャード氏は「我々のLiDARの性能ならば、銃弾さえもトラッキングできる。戦場でのロケット弾をトラッキングすることで、早期に警戒を出すことができる」と説明している。
ブランチャード氏は最後に「我々のLiDARは、自動車やスマートシティの課題解決のためだけではなく、様々な産業に応用できる。日本にもパートナー企業が複数あり、自動車やスマートシティ、鉄道に向けて取り組んでいる」とし、日本のマーケットや企業に注目していることを強調した。
レポート目次
4:産業用ソリューションでの強み