シスコ5Gショーケース、および5G開発戦略のアップデート【2:開発戦略と環境への取り組み】
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続いて、シスコシステムズ 執行役員 サービスプロバイダーアーキテクチャ事業担当の高橋敦氏からは、5Gの製品開発を中心に、5G B5G時代のサステナビリティ、環境への取り組みが説明された。
シスコの5Gにおける重点開発領域は、次の4つ。
5Gコア
シスコは、モバイルコア製品の開発と展開を5Gでも進める。例えば、モバイルコアの設計を見直し、1つのコアで複数の世代を収容できるコンバーズド コアの開発に取り組んでおり、4Gから、5G NSA、5G SAへのスムーズな移行を支援するという。
5G IoTサービス
シスコは2016年にJasper Technologies社を買収。その基盤を拡張し、世界最大規模のIoTプラットフォームを、モバイルポートフォリオとして有している。現在、グローバルで3万社以上の企業が利用している1億9,000万以上のデバイスが、シスコのコントロールセンタに接続されている。また、50社以上のサービスプロバイダと共に、5G IoTの展開をグローバルで進めているという。
固定無線アクセス
5Gを中心としたアーキテクチャに移行する中で、アクセスサービスを統合したFWAをどのように実現するのかも、特にサービスプロバイダ、ラージ エンタープライズにおいては非常に重要なトピックとなる。高橋氏は「エンド・ツー・エンドでセキュリティを担保しながら、トップからボトムまでのソフトウェア、エンド・ツー・エンドのハードウェアをいかに効率的に展開できるのかが重要になってくる。また5Gの特長である高速大容量、低遅延、多数同時接続を実現する中で、いかに環境への影響を小さくしながらインフラを構築するのかという議論も活発に行われている」とコメントを出している。
5Gプライベートネットワーク
シスコは、プライベート5G、ローカル5G市場向けに、シンプル、セキュア、シームレスな5Gプライベートネットワークを展開するためのソリューション開発に注力している。
シスコはエンタープライズ市場で非常に多くの実績が有り、常に多くの顧客とミーティングしている。高橋氏は「お客様とお話をさせていただく中で、ローカル5Gの普及促進に向けては、ローカル5G、Wi-Fi6、有線含めたマルチアクセスの環境下で、共通のポリシーとアイデンティティを適用したシンプルでシームレスな5Gプライベートネットワークが必要だとの声を数多く頂戴している。また、どのようにして、マルチアクセスにおいてセキュリティを担保するのかという議論も活発に行われており、サービスプロバイダ アーキテクチャ、エンタープライズ ネットワーキング、セキュリティ ポートフォリオを統合したソリューションの検討を、今まさに進めている状況だ」と説明している。
シスコの2040年ネットゼロへのアプローチ
5G、B5Gの検討の中で、非常に重要なポイントがサステナビリティだ。高橋氏は「ある調査では、2025年にはInternetが世界の電力の20%を消費するかもしれないと言われている。これは、5Gショーケースを活用したお客様との議論の中でも、度々議題にあがる。シスコは2040年、温室効果ガス排出実質を目標に掲げており、実現に向けては‘再生可能エネルギーの利用の加速’‘循環型経済の推進’‘革新的な製品開発’など、幾つかのアプローチを表明している」と話し、その中の‘革新的な製品開発’について言及した。
シスコは、革新的な製品開発による環境へのアプローチにおいて、‘イノベーション’‘先端テクノロジー’‘アーキテクチャ変革’ の三点を掲げている。
イノベーションによる環境への取り組み
Ciscoは2019年12月にCisco Silicon Oneを発表してから、約2年間で11種類のシリコンを開発している。Silicon Oneでは、これまでのシリコン設計を一から見直して、性能、機能、効率の観点で技術革新を実現している。スイッチング性能の飛躍的な向上、超低消費電力化、ルーティング機能、バッファリングの工場、ルータ オン チップ、ラインカードNPU、ファブリックにおけるシリコンの共通化などを図りながら、最新のSilicon Oneではワンチップで25.6Tbpsを実現している。
Silicon Oneを搭載したCisco 8201では、5、6年前の従来のルータと比較して、1ラックあたりの帯域は77倍の向上、消費電力は1/38に削減しており、環境の負荷を大きく軽減している。また、筐体のサイズは1/48は省スペース化、重量は1/64の軽量化を実現し、運搬時のCO2排出抑制にも貢献している。
先端テクノロジーによる環境への取り組み
従来のネットワークモデルでは、伝送装置が垂直統合されており、サービスを展開するごとに重厚長大な伝送装置を配備する必要があった。コストの高さ、技術革新の遅さの観点から、ディスアグリゲーションが進み、トランスポンダがマーケットに進出してきて、マルチベンダ化が進んでいる。
高橋氏は「シスコは、Acacia社の買収と、コヒーレント技術の進化によって、トランスポンダをプラガブル・オプティクスのサイズまで小型化できるようになった。その結果、スペースや電力を消費するトランスポンダが不要になってきている。具体的には、旧来のシスコのトランスポンダは4RUあったが、今はプラガブルオプティクスのサイズになっている。その結果、ルータにプラガブル・オプティクスとしてトランスポンダを取り込むことができるようになるので、圧倒的な省スペース化と省電力化を実現することが可能になる」と説明している。
アーキテクチャ変革による環境への取り組み
シスコでは、IPレイヤと伝送レイヤを統合することで、現在の大規模ネットワークの複雑、高コストといった課題の解決をめざしている。その具体的な取り組みが、フラットでシンプルなネットワークを実現するRouted Optical Networkingへのアーキテクチャシフトだ。
フラットなアーキテクチャになるので、装置点数を大幅に削減することに加え、IP+オプティカルの技術と、エンド・ツー・エンドのIP化により自動化を適用しやすくなる。その結果、CapEx削減、OpEx削減の観点で大幅な効率化を実現できる。特にOpExの観点では消費電力、スペース、オペレーションの削減が効果として表れており、CO2削減にも貢献している。
高橋氏は「通信インフラにおける環境への負荷軽減は、5G、B5Gを検討する中で必ず議題に上がるテーマだ。本日ご案内した全ての製品、ソリューションは、5Gショーケースでご覧いただけるので、ぜひ、お客様、パートナー様に来て、見て、触っていただきたい」と述べた。
レポート目次
・日本の5Gにおけるシスコの主な実績
・開発戦略と環境への取り組み
・シスコ5Gショーケース アップデート
・シスコ5Gショーケースのソリューション例