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中川新社長が率いるシスコジャパンの重点戦略【3:シスコ自身のビジネスモデルの変革】

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戦略2:日本社会のデジタイゼーションに貢献

 シスコは世界各国でデジタル化を支援するプログラム“Cisco CDA(Country Digital Acceleration)”を展開しており、日本でもその取り組みが進んでいる。CDAはシスコの中期的な世界各地域への投資、コミットメントであり、政府、公的機関、教育機関、民間企業と協業しながら、各国が抱える重要な課題解決や経済成長に対し、デジタル化によって積極的に貢献していくものだ。すでに世界40カ国、900を超えるプロジェクトを実施しているという。
 中川氏は「日本ではネイションワイドに本格的なデジタル化を促進し、日本の持続的な安全・安心な社会を実現するため、公共サービス、教育、テレワーク、物流など、7つの分野に注力をしている。平井デジタル改革大臣とも、直接、意見交換をさせていただき、政府の政策とも連携を図りながら推進していくことで一致している」と話している。

シスコが注力する7つの分野。それを支える5Gインフラもシスコが得意とするものだ。

 日本における最近の具体的な取り組みは次の通り。

安全安心な公共インフラ:今年一月にアラクサラ、NECとの三社で日本の重要インフラに向けた情報セキュリティ対策に関する戦略的協業を発表している。

5Gインフラストラクチャ:昨年11月に5Gの価値創出を推進し、エンド・ツー・エンドの5Gネットワーク環境で実証実験が可能になる5Gショーケースを東京の本社に開設した。リファレンスアーキテクチャのデモンストレーション、通信事業者、企業、公共機関、エコパートナーとのコミュニティの活性化、アプリケーションの開発、そしてテスト、さらには企業のユースケース創出を支援していく。

テレワークの推進:総務省の実証実験の一環として、NTT東日本とローカル5Gを活用した高精細カメラやVRデバイスを用いた新しい働き方の実証実験を実施中。

戦略3:ユーザのライフサイクルすべてを支援

 ニューノーマルにおいてデジタル化が進展する中、技術進化と競争環境の変化が加速しており、企業は常に最新のテクノロジーをいち早く導入して活用しなくてはならない。そのため、市場ではクラウドシフトだけではなく、構築型から利用型へ、さらには導入後の定着、活用といった段階までの支援を要望するケースが非常に増えている。
 我々は製品やサービスの購入前から購入後まで、お客様にとっての価値を最大にするための手法を“カスタマーライフサイクル アプローチ”としている。

“カスタマーライフサイクル アプローチ”のイメージ。従来のシスコは需要喚起から購入、導入までという、主に左部分に注力してきたが、今後は右部分にある、導入後の活用、最適化、ビジネスへの貢献に軸足を置く。

 その具体的な施策としてシスコは、近年、製品のソフトウェア化、クラウドサービス化、リターディングビジネスモデルを加速している。さらには、システムのライフサイクル全般にわたって導入後の利用、定着、活用、最適化の支援をし、利用拡大に繋げるための選任部隊であるカスタマーサクセスを設立した。
 中川氏は「今期から新たなにソフトウェア&サービス営業部門を設立している。包括的なエンタープライズアグリーメントの提供によるネットワークインフラ管理の簡素化のご支援や、抜本的なコスト削減、あるいはビジネスケースに関するコンサルティングサービスをサービスデリバリーチームであるCXチームと共に提供していく。このカスタマーライフサイクルアプローチこそが、シスコの新たなビジネスモデル、新たな変革だ」と説明している。

戦略4:新たなパートナーモデルの実装

 市場がSaaSモデル、マネージドサービス、クラウドに大きく移行している中、シスコはソフトウェア、サービスにより、システムを進化させ、ユーザのライフサイクル全般を支援していくことになる。中川氏は「これはシスコ単独で推進していくことではない。パートナー様の協業なくして、ご支援なくして、この新しい時代に適応できるビジネスモデルを実演することはできない」との考えを示している。
 そこでシスコは、十数年ぶりにパートナープログラム制度を刷新した。従来のパートナー支援のプログラムは、シスコとの取引を基にGold、Premierと認定する制度だったが、今後は拡大するユーザとの関係におけるパートナーの役割を軸にしたプログラムとなっている。

新パートナープログラム。従来のプロダクト販売、構築、運用を担っていたINTEGRATORに加えて、マネージド型アズ・ア・サービスにおけるサービス提供を担うPROVIDER、プログラマビリティを活かして付加価値を創造するDEVELOPER、コンサルティングなど経営戦略にも踏み込むADVISORのカテゴリに再編されている。

 中川氏は「それぞれのパートナー様はご提供いただくスコープによってそのカテゴリの範囲を選択し、拡大していただくことができる。弊社としては、全てのカテゴリでご支援いただくことを期待している。シスコは今後、この新たな広範囲なパートナープログラムに基づき、パートナー様と共にお客様のライフサイクル全般への価値創造を推進していく」と話している。

中川氏が目指すシスコの将来のビジョン

 中川氏は「社長就任にあたり、ここまでご説明してきたビジネス環境の変化や新たな四つの戦略に基づく想いを込めた言葉を社員に伝えた。それは“お客様の成功こそが私たちの成功である”というものだ。私が目指す会社の将来のビジョンは、よりお客様、そしてパートナー様のビジネスの成功に直接貢献できる会社になりたいということ。デイヴを含めた歴代リーダー達が築いたシスコの日本社会における位置づけを更に一歩向上させるために、お客様のビジネスの成功がシスコの成功に繋がる、社員全員が本気でそう考える、そういう会社にしたい」と述べており、「正直、従来のシスコはインフラの会社というイメージが強かったと思う。しかし、これまで申し上げた通り、Cisco Webexに代表されるようなビジネスソリューション、リカーリング ソフトウェアビジネスの促進、CXサービスチームが取り組むサービスビジネスの拡大など、大きくビジネスのポートフォリオ、事業を変革してきている。5Gビジネスにおいても、5Gのインフラの展開に加え、企業のユースケースの開発にまで取り組もうとしている。これらのケーパビリティを最大化すると共に、より広いパートナー様との協業促進により、中長期にわたるお客様との戦略的な信頼関係を築いていく。私は“現状維持は退化”だと思っている。これはシスコも例外ではない。これまでの成功に胡坐をかくことなく、常に変革をしていかなくてはならない」との考えを示している。

シスコジャパンの変革をリードする新しいリーダーシップチーム。中川氏は「その部門から昇進・昇格したリーダーが多くいるので、お客様との関係性を継続し、安定した経営基盤を築きつつあると自負している。非常に手前味噌だが、日本のIT業界のOne of the best teamだと信じている」と語った。

レポート目次

1:コロナ禍における堅調なビジネス成長
2:コロナ前には戻らないユーザのビジネス環境を支える、シスコのデジタル変革
3:シスコ自身のビジネスモデルの変革