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シスコの2020年度事業戦略【1:直近一年の総括と2020年度の事業方針】

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 シスコシステムズは10月8日、事業戦略発表会を開き、直近一年の総括と2020年度の事業方針を説明した。発表会で強調されたキーワードは、5G、デジタルトランスフォーメーション、サイバーセキュリティ、エコシステム、海外事業展開の支援強化、中小企業への販売戦略など。
 今回の記事では、シスコシステムズ 代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト(Dave West)氏による俯瞰と、各分野のキーパーソンによる解説をレポートする。

2019年度のシスコジャパン

シスコシステムズ
代表執行役員社長
デイヴ・ウェスト(Dave West)氏

 ウェスト氏はまず、2019年度のシスコジャパンの取り組みや実績を総括した。2019年度のシスコジャパンは、日本のユーザ、パートナー、社会とともにデジタルイノベーションを共創することを重点戦略とし、3つの柱を掲げて取り組んできた。ユーザ、パートナーに対してはDXやエクスペリエンスの提供。社会イノベーションではデジタル機能による未来の働き方の提案や、東京2020のネットワーキングパートナーとしての取り組み。そして最後の柱は次世代エコシステムのパートナーシップ構築だ。
 シスコジャパンはこの3つの柱に関して成果を出したこともあり、シスコシステムズ全体の中で一番の評価を得た法人に送られるシスコ カントリー オブ ザ イヤーを受賞している。ウェスト氏は「2019年度は非常に素晴らしい結果を出せた。お客様、パートナーに対して非常に密接に関わることができた。サービスプロバイダのお客様とも、非常に深く仕事をすることができた。中小企業のデジタル化にもフォーカスを当てた。次世代のカスタマーエクスペリエンスという組織も日本において立ち上げた」と話している。

2019年のハイライト。社会イノベーションに関しては、ツーリズム、トラベル&トランスポーテ―ションの拡大も挙げられている。エコパートナーに関しては、ソニーとの協業によるビデオカンファレンス変革、リコーとの協業によるオフィス機器のデジタルワークプレイス、日立製作所との協業ではSAP HANA向け統合プラットフォームの提供がある。

 サイバーセキュリティの分野では、シスコは日本政府と共に次世代のソリューションを提供する。これはシスコが提供する次世代のセキュアでインテリジェントなプラットフォームがベースになるという。また、シスコはサイバーセキュリティ スカラシップ プログラムも提供している。大学・大学院、専門学校、高等専門学校の学生を対象としており、受講はすべて無料だ。ウェスト氏は「サイバーセキュリティの脅威に対しては、内閣サイバーセキュリティセンターと連携するとともに、サイバーセキュリティのスキルを持った人間を提供していきたいと考えている」と話す。

2020年度の方向性

 2020年度に関してウェスト氏は「お客様はどのような課題に直面しているか。例えば、高齢化、人口減少の問題がある。また、世界で地政学的な緊張がある。ナショナリスティックな思惑が登場している。やはり国家間での情報共有というものが必要になってくる」と市場を取り巻く状況を指摘。そして「我々のお客様は今でもDXの途中にあるので、今後数年はDXが続くと考えている。どのようにワークロードを管理し、どのようにクラウドへ移管していくのか。どのように労働力の生産性を高めていくのか。我々はそういったお客様の取り組みの支援をしていく。お客様はITの複雑性に直面しており、デジタル化やテクノロジーが非常に急速に動いている。お客様は、どうやって働き方改革を推進するのか、ダイバーシティとインクルージョンを推進するのか、コラボレーションを推進するのかという課題に直面している。事業をデジタル化する場合、サイバーセキュリティの問題も出てくる。お客様は、ここに新しいテクノロジー、サービスを実装し、それによって競合性を高めたいと考えている。そこで我々は、市場の状況を分析しなくてはいけない。お客様は何と言っているか、どういった気持ちなのか。そして世界的にどういったことが起きているのかを考えなくてはならない。これを基に2020年度の戦略を打ち立てた」と説明している。

2020年度の重要戦略

2020年度におけるシスコジャパンの重要戦略

ユーザのセグメント毎に特化した事業モデル:シスコはGo To Marketの事業モデルを完全にセグメント化している。これは、情報通信産業、エンタープライズ、法人、政府官公庁向けに分かれている。また、中小企業のデジタル化にも注力するという。ウェスト氏は「こういったセグメントのニーズを真に理解し、シスコがデジタル化の支援を行っていく」と話す。

日本のデジタイゼーション:ウェスト氏は「日本のデジタル化」を重要戦略の一つとして掲げている。例えば、シスコは史上で最もデジタル化されたオリンピックとなる東京2020のネットワーキングパートナーであり、そこで次世代ネットワークのケイパビリティを提供する。
 東京2020の先として、ソサイエティ5.0のSDGsへの取り組みも掲げられた。その1つには引き続きツーリズム、トラベル、トランスポ-テーション(T&TT)があり、シスコはこれを基盤として東京2020以降も日本の成長に寄与するという。また、インダストリ4.0では製造業のデジタル化や工場の自動化、そしてユーザが新しいビジネスを敢行していく中で、予知保全やインサイトを得る為に我々がケイパビリティを提供していく。他、次世代のデジタル ケイパビリティをドライブしていくことも掲げており、特に中小企業の事業におけるデジタル化を進めるという。ウェスト氏は「これにより、お客様の国内・海外マーケットでの成功、そして安全性に繋げる」と話している。
デジタル化に関しては5Gアーキテクチャの提供も挙げられた。ウェスト氏は「シスコは5Gのリーダーだ。5Gがお客様にとってパートナーにとってプロバイダにとって、政府にとっても一番重要な問題になっている。そこで我々は次世代のケイパビリティを提供する役割を果たしていく」と話している。

ライフサイクル全体のエクスペリエンス:シスコはテクノロジーをイノベーションした様々なポートフォリオを持っており、これらにより、次世代のEnd to Endのカスタマーエクスペリエンスを提供するという。ウェスト氏は「ライフサイクル全体のエクスペリエンスをお客様に提供することによって、我々のケイパビリティを十分に活用していただけるようにする。お客様が、真にシスコの次世代のプラットフォームを活用できるようにする。これはつまり、統合されたマルチドメインアーキテクチャのケイパビリティであり、次世代のケイパビリティを活用できるということだ。サービスプロバイダのマーケットでも、エンタープライズ、コマーシャル、そしてまた中小企業のマーケットでもそうだ。その為に必要なことは、お客様との連携だ」と説明している。

シスコが求められている4つのこと

 ウェスト氏は、ユーザは4つのことをシスコに求めていると話す。1つ目は、デジタルトランスフォーメーションの際に、どのようにアプリケーションを再構築するかだ。大量のレガシーが有り、それをクラウドに移行しなければならない。また、ユーザが管理するもの、管理しないものを定義づけなくてはいけない。そして、アプリケーションの使い方についても再構築する必要がある。また、企業がオムニチャンネルでアプリケーションをどのように使うのかという問題もある。そこでのシスコの役割として、ウェスト氏は「オンプレミスでも、あるいはクラウドに移行するという点でも、様々なアプリケーション周りの仕事が有る」と話す。
 2つ目はデータの保護だ。シスコは様々な脅威からデータを保護できるよう、セキュリティサービスを幅広く提供していく考えだという。これは、製品の開発、サプライチェーン全体、そして展開しているサービスまでセキュリティが必要だからだ。ウェスト氏は「これにはシスコが提供するポートフォリオ全体、つまりEnd to Endのセキュリティが不可欠だ。それによって、お客様がデータを保護できるようにする」と話している。
 3つ目はインフラの変革。ウェスト氏は「ネットワークのインフラストラクチャネットワークは複雑なものであり、ユーザは生産性の向上を考えている。あるいは、自動化をどうやって推進するのか。それによってネットワーキングサービスを活用できるようにする。それをどうやってセキュアな形でやっていくのかということだ」と話す。
 4つ目は、リッチなコラボレーションサービスによって働き方改革ができるようにし、チームをエンパワーすることだ。これを、国内でも国外でもシームレスにできるようにするという。ウェスト氏は「シスコは、これら4つのことをお客様から求められている。既に非常に素晴らしい事例が有る。ネットワーキングのトランスフォーメーション、自動化、生産性向上では、東京海上日動様が非常に良い例だ。SD-WANを導入し、自動化、そして次世代の生産性向上を行っている。そしてサービスプロバイダでは、次世代のソリューションをフォーカスしているKDDI様が、今月からCisco Webex Callingの提供を始める。次世代のコラボレーション、サービスといったものを一緒に提供していくということだ。どの規模のお客様に対しても提供することができる」としており、今後について「様々なパートナーの方々、サービスプロバイダの方々、そしてお客様自身と一緒に、シスコはお客様のデジタル化をサポートしていく。世界でも競争力をつけられるようにしていく」と話している。

レポート目次

1:直近一年の総括と2020年度の事業方針

2:カントリーデジタイゼーション

3:サービスプロバイダ事業の戦略

4:中小企業市場に向けた事業戦略