シエナの事業戦略。特長技術により広帯域化や自動化、迅速な災害復旧に貢献(1)
SpecialReport 有料 Cienaの日本法人である日本シエナコミュニケーションズ(以下、シエナ)は9月27日、同社の新オフィスで事業戦略説明会を開催した。
Cienaのフラグシップモデル「Ciena 6500」は2004年の製品化以来、世界で累計10万台、530社以上に採用されている。日本国内では約4000台の導入実績があるという。また、データセンタ間接続プラットフォーム「Waveserver」シリーズは、独自技術による容量/電力の高効率化に加え、サーバのようなシンプルな運用モデル、そして距離に関係なく単一のプラットフォームで導入できる使い勝手の良さから、グローバルシェアNo.1となる34%を獲得している(Source:Dell’Oro Group 1Q 2018 Market Share)。日本シエナコミュニケーションズ 代表取締役社長の久米博之氏は「Cienaの2018年度Q3(2018年5月~7月)におけるグローバルでの売上高は前年比12.3%増なる8億1880万ドルだ」としており、「今後の事業戦略としてAdaptive Networkによる光ネットワークのインテリジェント化を提案していく」と話す。
Adaptive Networkのポイントは3点。「プログラマブルな400Gコヒーレント技術」「コントロールプレーンによる、大規模ネットワークの自動障害回復機能」「ソフトウェアによる光ネットワークの自動化や障害予測」であり、これらを相互に機能させて光ネットワークのインテリジェント化を実現する。
Adaptive Networkの特長はどれも大規模通信に必要な技術であり、特に災害時の復旧や故障予測というのは日本の事業者から注目度が高まっているキーワードだ(11月7日にQTnetのCiena製品採用が発表)。
今回のレポートでは、Adaptive Networkの詳細を中心に、日本オフィスでのラボ機能強化など、同社の事業戦略説明会の内容をまとめた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
Adaptive Networkによる光ネットワークのインテリジェント化
伝送路性能に合わせてビットレートをチューニングする、プログラマブルな400Gコヒーレント
Adaptive Networkを実現するインフラ要件として、仮想/物理のネットワークリソースの動的プール、組み込み型、オープンAPI、スケーラブル、セキュリティ確保がある。そのキーデバイスとして紹介されたのが、同社独自の400Gコヒーレントチップ「WaveLogic Ai」だ。
「WaveLogic Ai」は、業界初の完全プログラマブル・コヒーレント・モデムの実現によりトランスポートネットワークの経済性と柔軟性を支えている。具体的には、ネットワークのあらゆるパスにおける最適な容量をリアルタイムで示す機能が備わっている。これは、内蔵リアルタイムリンク計測など、重要なネットワーキングデータをモニタ・収集することで、インテリジェントな容量判断を実現している。100Gから400Gまでを50G単位で調整可能であり、久米氏は「例えば、メトロ・DC間接続(~300km)では400G、次世代海底伝送(~12,000km)では200Gといったように、最適な伝送速度を選べるようになっている。この400Gチップが最初の5000枚を出荷するのに半年かかっていないのに対し、以前の40Gや100Gチップでは数年かかって5000枚を出荷したので、400Gはマーケットが早いと言える。これの需要を特に牽引しているのはOTTだ」と話している。
「WaveLogic Ai」は56Gbaud、そして32Gbaud-50GHz固定グリッド対応。従来比で2分の1以下の消費電力、チャネルあたりの容量は2倍、同じ容量での伝送距離は3倍、サービス密度は4~6倍を実現している。このチップは、Cienaの「6500Sシリーズ」や「Waveserver Ai」といった伝送装置に搭載されている。
コントロールプレーンによる、大規模ネットワークの自動障害回復機能
Adaptive Networkでは、このプログラマブルなインフラに高度な冗長性も実現する。Cienaは、大規模ネットワークの自動障害回復に関して実績のある「コントロールプレーン技術」を提供している。そのキーとなる光レストレーション機能は、光パスに障害が発生した際に自動で代替ルートを探索し、波長単位で復旧するというもの。この機能と、1+1プロテクション切替(通常50msec)を併用することで、広域・多重障害への対策が万全となる。
例えば、Verizonの太平洋海底メッシュネットワークではCiena製品が採用されており、「コントロールプレーン技術」も導入されている。久米氏は「東日本大震災でVerizonの太平洋海底メッシュネットワークに5カ所のケーブル障害が発生した際には、我々のコントロールプレーン技術によるレストレーションによりサービスが自動復旧し、激甚災害時におけるコントロールプレーンの有用性が証明された。我々はこの機能の進化に取り組んでおり、マニュアルではとても追いつかないルート探索を自動的に実行できるということで、日本そして諸外国のユーザに受け入れられている」と話す。
ソフトウェアによる光ネットワークの自動化や障害予測
Adaptive Networkには、Cienaの「Blue Planet」ソフトウェアによる、ネットワークのインテリジェンスと自動化の実現も含まれている。これは、ネットワーク監視、制御、最適化、リアルタイム性能測定、データ分析を活用してクローズド・ループの自動化を実現するという。久米氏は「このインテリジェンスと自動化の機能を一つのソフトウェア・プラットフォームに統合する。また、ネットワークの監視制御やデータ分析を活かすために、Layer0~3のマルチレイヤ・マルチベンダのベースステーションになるよう取り組んでいる」としており、「これはモバイル4Gのバックホール、そして将来のモバイル5Gのバックホールも対象としている。弊社のメンバーはIEEEやITU-Tといったワーキンググループに入っており、様々な意見交換をしている。我々はモバイル5Gをキーテクノロジーとして捉えている」と説明している。
このソフトウェアの取組みでは、協業による機能拡張に向けた動きも将来に向けて進めており、DevOps(自主開発支援)ツールをパートナーに提供しているという。
ネットワーク内の障害予測については、「Blue Planet」の分析アプリケーションの1つである「Network Health Predictor(NHP)」で実現する。これはビックデータ解析を用いることで、人的リソースによる監視・異常検知の限界を超越するという。データセントリックなアノマリティ検知による故障予測により、マルチベンダに対応する。久米氏は「ネットワークから得られた情報のフィードバックによる予測精度向上や、ネットワークの障害を予測して対応策の提言を実現する。また、ネットワーク性能の予測も可能にする。これにより、人員を現地に派遣するコストや、予備部品の配備などのコストを低減できる」と説明している。
Cienaはファイバ網監視機能「PinPoint Portal」も提供している。これはインサービスOTDRによる自動ファイバ経路測定機能であり、開通前の線路確認や、開通後の線路障害の位置特定が可能だ。ネットワーク全体のファイバ経路、局位置情報を詳細な地図上に表示し、ネットワーク・ライフサイクルの監視とプロアクティブな事前障害対応を可能にしている。久米氏は「GoogleMapとアライアンスしているので、専用PCや専用クライアントソフトは不要だ」と話している。