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IOWNの社会実装や、光ファイバセンシングの取り組み事例

IOWN社会実装に向けたNECの取り組み

 NECは、APNを中心としたIOWN構想の主要技術分野の技術開発に取り組み、IOWN-GFの活動や、APNの社会実装の研究開発、PoCを実施している。今回は、こうしたベンダとしての立場だけでなく、IOWNとNECのアセットを組み合わせて社会価値を創造するイネーブラーであることや、その価値創造のためにIOWNの理解を深めるスーパーユーザーとしても取り組んでいることが、各社との共創事例を交えて紹介される。

NECは、3つの視点でIOWNを社会実装し、社会価値を創造する。

 NECは、IOWNユースケースの検証のためにNEC CONNECT Labを我孫子事業所と玉川事業場に開設し、パートナー企業との共創を加速している。

 NTT東日本IOWN LabとNEC CONECT Labを接続した事例では、APNを経由した遠隔からのリアルタイム顔認証の実証を実施。NECは「映像内に登場する多数の顔データを同時にリアルタイムで行う場合、高速処理が求められるため、通常は解析用の認証サーバを撮影場所付近に設置する必要がある。この実証では、撮影した映像データをAPN経由で遠隔の認証サーバに伝送し、その顔認証の結果をAPN経由で戻したところ、リアルタイムに反映できることが確認できた。これにより、ローカルの環境にサーバを設置する必要が無くなるので、導入コストを削減できる」と説明している。

APNを経由した遠隔からのリアルタイム顔認証の実証のイメージ。NECは「将来的には、複数のカメラで撮影された大容量のデータをリアルタイムに遠隔地のコンピューティング基盤で処理することで、クラウドでのサービス提供による導入コスト削減を実現することが可能になる」と話している。

 IOWNを活用したNECのAPNと、分散クラウド環境下でのデータ管理を高速・低遅延で実現するオラクルのOracle Cloud Infrastructure(OCI)を組合せた事例では、インタラクティブなリモートライブ参加を想定した自由視点鑑賞デモ環境をNEC CONNECT Labに構築した。NECは「具体的には、ライブ現場のカメラをリモートで鑑賞者が操作するというものだ。ステージ上で動いている対象をカメラで追う場合、従来のインターネットではタイムラグが生じて上手く捉えることが難しいが、IOWNならば240kmの距離でもリアルタイム制御が可能であり、自由視点鑑賞の要件を満たすことが確認できた」と説明している。

ライブへのリモート参加を想定した自由視点鑑賞デモ構成図。NECはNEC CONNECT Labにおいて、Open APNアーキテクチャに対応した光伝送装置Spectral Wave WXシリーズを使用し、IOWNのAPNの大容量・低遅延なネットワーク環境を構築、提供する。オラクルは、分散クラウド環境下でのデータ管理を高速・低遅延、高い電力効率で実現可能なOCIをNECが構築したIOWNのAPNのネットワークと連携させ、回線遅延や通信品質をモニタリングし、サービス品質維持のためのデータ管理を行う。このOCI上で提供される運用監視サービスOracle Cloud Observability and Management Platformを用いてクラウドでのモニタリングとデータ管理を行うことで、実際に事象が発生する現場にデータ処理機能を実装する必要がなくなる。

 上記ラボ以外の事例では、NTTや複数の大学と共同で、データセンタエクスチェンジ(DCX)の実現に向けAPNを活用した光波長パス設定技術を実証している。これまで熟練作業者が2~3時間以上かけて行っていた光波長パスの設計・設定を、自動化により数分で実施することが可能となったという。

従来のDCIとDCXの比較。大都市圏に建設された多数のデータセンタを光ファイバで直接接続するDCXでは、リンク長や品質に適した様々な伝送モードを持つ多対多の場所間で、複数のベンダのデバイスを接続する必要がある。従来のDCIとは異なり、複数のベンダの機器をユーザ アクセス リンクやキャリア リンクで制御し、リンクの品質に適した伝送モードの異なる伝送機器で光波長経路をオンデマンドで設定するための新しい技術開発が必要となる。

 NECはIOWN関連で確定遅延コンピューティング基盤技術にも共同参加しており、ブースではその詳細も解説される。

 NECは「NTT関連やIOWN-GFの方々を中心にNEC CONNECT Labの利用や見学が増えている状況だ。今回、様々なユースケースをご紹介することで、共創の動きを加速させたい」と話している。

光ファイバセンシング技術を活用したNECの取り組み

 NECは、光ファイバセンシング技術に自社AI技術を組み合わせた振動検知ソリューションの実績を増やしている。その取り組みの方向性は「IOWN APNを支える基盤である光ファイバ網の運用・保守信頼性への貢献」と「IOWNネットワーク(超高速/低遅延伝送)を活用し広域モニタリングによる安心安全社会への貢献」であり、今回はそのユースケースが紹介される。

NECの光ファイバセンシング。AI技術の活用方法はユースケースにより異なり、例えば振動検知の場合、検知したい事象の振動の性質を学習していくことで、それ以外の振動を区別して精度を高めていくことができる。NECは「お客様が持つ振動の知見を基に、実証実験により機械学習の精度を上げていくので、当社のAI技術とお客様の知見を組み合わせる協創が重要となる」と話している。

 通信用光ファイバケーブルの保守、運用の効率化では、地図上に正確なケーブルルートを作成して、光ファイバケーブルの効率的な保守と損傷した光ファイバの復旧への迅速な対応を実現する「ケーブル位置確認」、埋設された光ファイバケーブル周辺環境の振動を計測し、予期せぬ工事などの異常振動を検知する「ファイバケーブル切断防止」、特定の光ファイバケーブルに振動を与え、光ファイバ毎に振動の有無を検知することで、光ファイバケーブル束の中から対象ケーブルを特定する「ケーブル特定」が紹介される。

光ファイバセンシングによるファイバの見える化により、保守、運用の効率化を図ることができる。

 次に、社会環境の広域モニタリングの共創事例を見ていきたい。
 NTT東日本、鹿島建設との工事振動の検知では、既に電柱に共架している通信用光ファイバを振動センサとして活用する実証に成功している。NECは「建設工事に伴って周辺の地域で発生する振動状況を広範囲かつリアルタイムに把握できるので、新たにセンサを設置することなく、周辺環境に配慮した施工が可能だ」と説明している。

工事振動モニタリングのイメージ。センシング装置を接続した通信用光ファイバの全長でかつ同時に、振動分布のモニタリングが可能だ。また、計測から可視化まで人手を介さないため、常時(24時間、365日)モニタリングし続けることもできる。NECは「実証では、工事による振動の影響範囲を常時かつ面的に可視化することに成功した」と話している。

 NTT、NTT東日本との共創事例では、既に地下に敷設してある通信用光ファイバに伝わる振動特性から路面状態を推定する機械学習モデルを構築し、豪雪地帯における道路除雪判断を行う実証実験に世界で初めて成功した。NECは「路面状況が積雪により変化すると、振動センサで収集する車速や振動周波数の特性も変化する。これを機械学習することによって除雪要否判定モデルを構築した。この判定モデルにより、調査員の経験則を必要とすることなく、適切な除雪判断をリモートで実現できる」と説明している。

除雪判断のモニタリングのイメージ。実証実験では、NTT東日本が通信用に敷設した未使用の地下光ファイバとNECが提供する光ファイバセンシング技術を用いて得られた青森市内における市道の交通振動データに対して、NTTが提案した除雪要否と交通振動特性の相関分析手法にNECの車速検出アルゴリズムを組み合わせることで、除雪実施判断が行われた。NECは「通信用光ファイバが除雪工区内の市道地下に張り巡らされている利点を活かし、光ファイバ振動センシング技術により得られた交通振動データの解析を通じ、複数の除雪工区内における除雪判断をすることに成功した」と説明している。

 こうした振動検知ソリューションは海外からの引き合いも増えていることから、ソリューション名を『NEC Fiber Optic Smart Sensing System』に変更し、積極的に展開しているという。

光ファイバセンシングが担う将来のビジョン。NECは「サイバー空間上に構築した都市で、実空間のセンシングでモニタリングした様々な情報を分析・シミュレーションし、実空間にフィードバックする。地球全体や都市、またピンポイントな環境保全や減災に向けた取り組み等を考えている」と話す。

特集目次

■NTT AS研 海老根所長インタビュー

・研究開発の方向性

・サービスの高度化・多様化を支える技術

・運用を抜本的にスマート化する技術

・新ビジネス領域を開拓する技術

■パネルディスカッションや技術講演

・技術交流サロン・ワークショップ

■出展社Preview

・NEC

・エクシオグループ

・住友電工グループ

・日本コムシス

・横河計測

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