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ローデ・シュワルツとノキアが語る、ローカル5G NRビジネスの現状と最新ソリューション・7

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5G時代の到来とノキアの先進取組事例・2

 海外で先行しているエンタープライズ用途のプライベートLTE。用途としては、監視カメラ網の高度化、センサ情報の収集、業務無線の置き換え、アナログ防災無線の置き換え、PHSの置き換え、Wi-Fiの配線レス化、機器の遠隔操作、AIによる作業者のサポートなど多岐にわたる。奥田氏は「完全に自社内だけにクローズドした通信に使えるので、ミッションクリティカルと言われている分野での採用が進んでいる。例えば鉄道、電力、プラント、警察・消防などだ。最近では工場での実績も出始めてきた」と話している。
 ここでは、ノキアの事例についてハイライトをお伝えする。

ノキアはエンタープライズの無線構築において豊富な実績がある。奥田氏は「プライベートLTEは便利なだけでなくコストメリットもある。機器のコストだけを見たらWi-Fiの方が安いものの、基地局の設置数や運用の手間、カバーを広げる際の構成変更なども含めたトータルコストを試算すると、プライベートLTEの方が3~5割ほど安いというケースが実際に出てきている」と説明している。

自動運搬システム

ノキアは建機メーカーのコマツと共に、米アリゾナ州で採掘現場における大型トラックの無人運転や建機のリモート運転を実現している。現場では24時間体制での採掘が行われており、大型トラックの運転手は予備員も含めて8人~10人の体制で運用されていた。その運転を完全に無人化することで、事故による人的被害の防止、そして採掘現場の過酷な労働環境に伴う作業員コストのカットに成功している。奥田氏は「過去にWi-Fiで4年ほどトライしたが上手くいかず、プライベートLTEで実現した。運転が非常にスムーズなので、列をなした編隊運転にも適している。タイヤの摩耗の抑制という効果もあり、メンテナンスコストの削減にも寄与している。こうした自動運搬システムは、この事例だけでなく複数の建機メーカさんと進めている取り組みであり、そこではノキアの製品だけで動かしている。ノキアの往来べーとLTEだけが認証されている状況だ」と話す。

洋上プラントのプライベートLTE

総合エネルギー企業であるエクソンモービルとの事例では、洋上プラントが紹介された。洋上プラントという過酷な環境において、音声や画像の伝送、機器の遠隔操作や監視という通信ニーズがあるという。奥田氏は「こうしたところでもプライベートLTE、今後はローカル5Gというものの採用が始まっている。センサデータを収集したり、危険性のある現場での作業をAIでサポートするといったような用途だ」と話している。

列車運行のプライベートLTE

韓国では、世界で初めて列車運行無線にLTEを導入している。ここでもノキアのネットワークが導入されているという。

空港業務のプライベートLTE

ノキアのお膝元であるフィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港では、2018年に世界初となる空港におけるプライベートLTEが採用された。空港ではミッションクリティカルかつ通信ニーズが非常に多いことから、他の空港でもプライベートLTEの採用が始まっているという。奥田氏は「プライベートLTEを使った音声の伝送、車誘導、監視カメラの映像伝送、あるいはエンジンデータ、インターテイメントシステムのアップロード等を実現している。これは日本の航空関係者さんからも非常にご注目いただいている」と話している。


空港関係者にとって最も重要となる滑走路でプライベートLTEが活躍している。滑走路のカメラ監視や誘導車、管制塔とパイロット間の会話などの重要業務が高品質な無線通信により行うことができる。従来、こうした場所での伝送は有線接続や業務無線で行われているという。

仙台市との連携協定、防災ドローンをプライベートLTEで実現

ノキアは仙台市との連携協定の一環として、防災でも活用できるドローンを提供している。その制御にはプライベートLTEが使われているという。震災による津波を経験している仙台市は「市民の命、人々の命を守るというのが一番重要だ。そのために、いかに早く逃げていただくか。ドローンならば、津波の避難誘導を広く長く広報できる。しかも自動運転なので広報する側の命も守られる。大変重要な、キーとなるシステムと考えている。今回のドローンの活用に関しては、我々の課題に対してしっかりとしたソリューションを提案していただいたと考えている。世界でリードするノキアさんと、こういう問題に取り組めることは大変心強いものと考えている」とコメントを出している。
 奥田氏は「この事例は日本の自治体さんから非常に大きな反響が有る」と話している。

パブリック・セーフティ・ネットワーク

従来の警察無線と消防無線は別々のシステムだが、警察と消防の連携が必要な場合も存在する。そこでアメリカ連邦政府では、双方の独立性と相互接続性を担保したノキアのプライベートLTEを採用した。奥田氏は「通信のニーズとしては、単に音声だけではなく、現場のカメラ映像、誘導、更には実際に警察が駆けつける前にドローンが先行して現場を見に行くというようなものもある。そこでベル研が連邦政府に対して、使用策定と標準化の支援をさせていただき、ノキアのプライベートLTEがパブリックセーフティとして全米の各州ごとに広がっている。こういった用途がアジアでも進むので、それもご支援している」と説明している。

5G/LTEによるスマート・ファクトリー

ノキア自身も自社の工場でプライベートLTEとローカル5Gを導入している。奥田氏は「以前はWi-Fiベースで運用していたオムロン製の自動搬送ロボットにプライベートLTEを導入したところ、トラブルが98%も減った。ここにWi-Fiを使っていた頃は移動によりハンドオーバーで止まるなどオペレーションに支障が出ていたが、プライベートLTEはほぼ止まることが無い」と話している。また、同工場ではローカル5Gも導入しており、組み立てラインの作業者の動作を把握してリアルタイム解析によりサポートする仕組みを構築しているという。

5G技術によるインテリジェント街灯が実現するスマートシティ

フィンランドのEspoo市では、街中にある街灯を5Gのハブとして設置するというアプローチでスマートシティ化を図っている。この街灯の中に、5G基地局と電源を用意しており、ソリューションとして、街中の安全用途のドローン、防災スピーカー、監視カメラ、気象センサ、デジタルサイネージ、Wi-Fiのホットスポットが展開できる。バスストップでは、自動運転バスが入るとカメラで状況を把握するので、万が一のトラブルがあれば迅速に対応することができる。

本特集目次

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