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ローデ・シュワルツとノキアが語る、ローカル5G NRビジネスの現状と最新ソリューション・6

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5G時代の到来とノキアの先進取組事例・1

 キーノートスピーチ「5G時代の到来とノキアの先進取組事例」では、ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 エネルギー・運輸・公共事業部長の奥田浩一郎氏が登壇。世界で豊富な導入実績を持つノキアのプライベートLTE事例や、ローカル5Gの取り組みの最新動向について語られた。
 世界最大規模の固定・無線通信インフラのベンダであるノキアは、日本のモバイルキャリア4社の全てに実績があり、日本法人には各キャリアの事業本部がある。そして奥田氏のチームは、これまで世界のキャリアに提供してきたノキアの通信技術を日本の公共やエンタープライズ向けに提案するために2年前に立ち上げられた新たな事業本部であり、世界でも先進的なノキアの通信技術を日本の産業界や公共事業にもたらすことが期待されている。
 奥田氏の講演では、通信インフラベンダの視点からプライベートLTEとローカル5Gを解説。技術面での特長や導入事例、そしてノキアの製品ポートフォリオが紹介された。前述のEichler氏の講演で触れられていた、5Gがノンスタンドアロンで始まる理由や、Wi-Fiに対するLTEの優位性も、技術的な詳細が示された。

プライベートLTE、ローカル5Gの有効性

講演後のインタビューに答える奥田氏。本記事では、講演内容にインタビューで得た情報を加えてお伝えする。

 奥田氏は「プライベートLTEというのは、シンプルに言えば、キャリアさんで10年以上使われているLTE技術を、自らの閉域な通信環境として使うことできるというもの。完全に自分だけの通信網が、大容量で信頼性も高く、低遅延、距離的にも届いて、移動にも強いという、夢のような革新的技術がプライベートLTEだ。また、ローカル5Gでは、プライベートLTEよりも更に超低遅延、超高速、超多数同時接続という通信環境を構築できる。10年以上使われてきた通信技術LTE、そして新たに登場した5G。なぜ今これがプライベートという形で注目されているのか。なぜ今まで使われていなかったのか。それは、シンプルにすごい技術だが、コストが高くて自分の工場で使うにはコストがまったく合わなかったからだ。そして日本は自営のLTEで使って良い周波数が無かったからだ。それが今、次々と解決していっている状況だ」と話す。

 とは言え、日本はモバイルキャリアのカバレッジも高く、エンタープライズでは既にWi-Fiが普及している。Wi-Fi6へのマイグレーションというシンプルな進化も商用化されている今、なぜ市場ではプライベートLTEやローカル5Gという新たな選択肢が比較検討され、注目が高まっているのか。奥田氏は「これだけIoTと言われる時代になっているが、実際には通信網がネックというのが非常に多い。キャリアさんのLTE技術を使う、もしくはナローバンド帯LTEといった技術を使うというのが今までの主な選択肢だと思う。それで十分に役割を果たせている場合もある。一方で、Wi-Fiは混雑すると止まってしまったり遅くなったりするので、信頼性において問題になる。また、距離が届かないと電波を拾えないので基地局を増やす必要があり、その配線コストは、実は非常に高い。Wi-Fiは広く普及しているが、ミッションクリティカルなことに使おうとすると非常に難がある」と指摘し、キャリアの通信網に関しては「日本の携帯キャリアさんのカバレッジは広いが、あくまでもコンシューマビジネスを想定している。そのため、エンタープライズとして使おうとすると、例えば飛行場の滑走路など不感エリアは存在する。そして、コンシューマビジネスのチューニングはダウンポートに比重を置くので、IoT用途ということではアップロードのパフォーマンスが少し最適化されていないという実情がある」と話す。

 プライベートLTEという新たな選択肢と、従来から用いられているWi-Fiの比較に関して、「全く違う」というのが奥田氏の見解だ。「Wi-Fiは常にベストエフォートだが、プライベートLTEは全て用途ごとにクオリティオブサービスができる。カバレッジエリアもWi-Fiに比べて広くなる。必要な基地局数も激減する。通信容量も大きくなる。ユーザ数が増えてきて混雑してきても、安定した通信パフォーマンスが保たれる。電波強度も強い。電波透過性も高い。セキュリティも圧倒的に上だ。移動体にも強い。プライベートLTEならば、Wi-Fiが弱点としてきたことのほとんどが解決する」と説明している。

奥田氏は、プライベートLTEはイーサネットとWi-Fiの良い部分を併せ持ったものだと説明。「有線接続により高信頼性と高セキュリティ、大容量通信を確保するイーサネットを、Wi-Fiのように無線接続で簡単に構築できるのがプライベートLTEだ。更にはハンドオーバー機能が備わっているので移動通信性能も強いというのも特長だ」という。

導入しやすくなったプライベートLTEやローカル5G

LTEや5Gが民間向けに実用化できた背景と、それにより生じる新たなトレンド。

 プライベートLTEやローカル5Gが日本で実用化された背景は、まず周波数の法整備がある。海外ではプライベートLTEを使った民間企業の生産性向上が取りざたされていることから、日本でも法整備が進められたという流れだ。
 次に、LTEインフラの世界でソフトウェア化が進んだことで、コスト低減や運用性の向上が進んでいる背景がある。LTEと一言で言っても、中身の技術は日進月歩で発展している。その中でも大きなメリットをもたらした技術の一つが、ネットワークインフラの仮想化だ。例えばNTTドコモでは、2017年時点では4%だった仮想化比率が、2019年時点では40%にまで拡大している(関連記事:ドコモの次世代ネットワークアーキテクチャの方向性)。プライベートLTEにおいては、特に指令機能のコアが非常に高額なために民間で運用するにはハードルが高かったが、ソフトウェア化、自動化、クラウド利用によるコスト低減や運用性向上が実現。従来のキャリアのように膨大な数の専門技術者を抱えて運用する必要も無くなった。

 奥田氏は、プライベートLTEやローカル5Gが実用化されたことにより、新たな通信トレンドが生まれていると指摘する。「無線がどんどん使えるようになっても、バックボーンの光ファイバ網がしっかりしていないと捌ききれないので、我々のベル研究所ではこのバックボーンの強化を大きなテーマとして取り組みを始めている。また、従来は区別されていたOT(運用技術)とIT(情報技術)のネットワークを統合することで、低コスト化と高信頼性を両立する取り組みが進んでいる。そして、これまで様々な業界で有線にこだわっていた部分を無線化することで、設備のレイアウトチェンジを容易にできるといったメリットがある。これにより産業設備における有線部分の無線化というトレンドが起こり始めている」という。

ローカル5GとプライベートLTEを組み合わせた運用

日本における自営無線環境の周波数帯。

 ローカル5Gがノンスタンドアロン(NSA)、つまりLTE設備と組み合わせた使い方から始まる理由は、周波数帯だ。現在、日本で制度化されたローカル5Gの周波数は28GHz帯のみだが、これは基地局と端末間を通信する際に対象を探し合うのが難しい周波数となる。そこで、対象を引っ掛けるための周波数となるアンカーバンドとして、プライベートLTEの2.5GHz帯が必要になる。

アンカーバンド利用のイメージ。プライベートLTEの2.5GHz帯で端末を把握し、それがローカル5G基地局に届くエリアであれば5G通信が可能となる。奥田氏は「プライベートLTEだけで運用できればそれで良いが、例えば4Kや8Kカメラの映像伝送など大容量が必要な場合はローカル5Gも重ねて使うというのが今の状況だ。ノキアはこういった環境に対していち早くエンタープライズ向けのソリューションを出しており、ローカル5G NSA構成サポート (2.5GHz BWA + 28GHz ローカル5G)を日本でも実現している」と話す。

本特集目次

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ローカル5G NR ビジネスの現状とR&Sの最新ソリューション・1

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ローデシュワルツ ドイツ工場でのローカル5G NR トライアル計画・1

ローデシュワルツ ドイツ工場でのローカル5G NR トライアル計画・2

5G時代の到来とノキアの先進取組事例・1

5G時代の到来とノキアの先進取組事例・2

5G時代の到来とノキアの先進取組事例・3

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