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ドコモの次世代ネットワークアーキテクチャの方向性や、コラボレーションパートナーとの取り組み・2

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ドコモの次世代ネットワークアーキテクチャの方向性

 ドコモは世界に先駆けてモバイルネットワークに仮想化の技術を導入してきた。5G時代では、さらなるネットワークの進化に向けて、アーキテクチャから技術検討と標準化を推進するという。担当者は「これまで提供してきた安心・安全なネットワークという価値に加え、新たな公共利益・顧客体験の創造を支えるビジネス基盤や社会基盤としてもモバイルネットワークを提供する」と話している。
 この次世代ネットワークアーキテクチャの方向性は次の4点。

迅速なサービス提供:必要なリソースを即座で生成し、即時の構築を可能にさせる。

高い保守性:ネットワークのオーケストレーション化による保守の自動化を促進させる。

経済性の向上:柔軟で効率的なリソース配備を実現する。

大災害に強い:全国のリソースをプールとして活用し、さらなる可用性・信頼性を求める。

 担当者は「ドコモでは、NEC、Ericsson、Nokiaといった世界の主要通信機器メーカーと協力して、通信キャリアにおける次世代ネットワークの更なる発展と革新を目指している」と話す。その主要な技術は、クラウドのコンテナ技術の導入、そして仮想化技術の進化だという。

ドコモが描く次世代ネットワーク アーキテクチャのイメージ。

コンテナ技術により、呼処理の柔軟性や迅速性、耐障害性を向上

 その実現のためにどのような技術が用いられるのか。まずは、クラウド化による呼処理の分離が有る。モバイルにおける呼処理には、加入者の位置を把握して通信経路を判断する部分と、実際に経路を提供する部分が有る。前者はCPUのサーバ的な動きが求められ、後者はパケット転送のルータ的な動きが求められるので、これを完全に分離するのがクラウド化の狙いだ。
 呼処理のクラウド化では、コンテナ技術を取り入れることで、配置の柔軟性や迅速性、耐障害性の向上を図る。これにより保守が繁忙にならないよう、仮想化制御・管理の部分の自動化も進めているという。担当者は「コンテナ技術を取り入れることで、例えば、加入者の通信が急に遅くなるといった性能的な懸念が出た時に、保守者が介在しなくても必要な機能を拡張できる。ハードウェアが落ちるなどの障害発生時にも、自動的に復旧させることができる」としており、「また、コンテナ技術を使うことでハードウェアのプールを共通化することもできる。そのプールを全国の離れたロケーションに配置することで、大規模災害により設備が建物ごと崩壊してしまった場合の復旧を迅速にすることを目指している」と説明している。

※本レポート内の関連記事。3:仮想・コンテナ環境の統合オーケストレーション

サーバ仮想化の拡大と、その次のステップ

 ドコモではネットワークの仮想化を進めており、2017年時点では4%だった仮想化比率が、2019年時点では40%にまで拡大している。仮想化基盤の規模(vCPU)では2017年時点では1万であり、2019年時点では18万に拡大している。

ドコモのネットワーク仮想化基盤の構成。標準化準拠のアーキテクチャでオープンソース、汎用ハードウェアを活用したマルチベンダ対応のネットワーク仮想化基盤を構築している。

 仮想化によりソフトウェアとハードウェアが分離できることで、ドコモのネットワークでは次の4つのメリットが特に注目されている。

通信混雑時のつながりやすさの向上:イベントや災害発生などで通信容量が逼迫した場合、仮想化管理システムが自動的に通信設備の容量追加(ソフトウェア)を指示し、混雑時でのつながりやすさを向上する。

ネットワーク設備の経済性向上:ソフトウェアとハードウェアが分離したことで、従来の高価な専用ハードウェアではなく、低コストな汎用ハードウェアを共用できるようになった。これにより専用ハード毎のメンテナンスからも解放され、統一的なメンテナンスというメリットも生んでいる。

サービスの早期提供:共用ハードウェアを使うことで、サービス開始の準備において専用ハードウェアでは必要とされていた準備の一部(専用ハードウェアの計画、調達、工事)が不要になる。

通信サービスの信頼性向上:ハードウェアの故障時、従来のネットワークでは予備に切替えた後に修理完了まで二重化されない状況になる。そこで仮想化により、例えば低コストな汎用ハードウェアを3つ用意して2つのソフトウェアで二重化することで、稼動中のハードウェアの1つが故障しても、仮想化管理システムが自動的に二重化に復帰させることができる。(下図)

仮想化により、ハード故障時における二重化運転への自動復帰が可能になった。

 担当者は「仮想化には様々なメリットが有るので、これから新しく構築する部分に関しては、ほぼ仮想化前提で進めていく。ただ、先の話では有るが、汎用のIAサーバと仮想化技術の組み合わせだけでは出せないスピードというのも5Gでは見えてきているので、更なる高速化においてハードウェアに任せてしまった方が簡単な処理については、専用のNICを使うという流れも考えられている」と説明している。

※本レポート内の関連記事。4:端末あたり最大20Gbpsのスループット提供を実現する、FPGAによるユーザデータ処理オフロード

レポート目次

1:TOP

2:ドコモの次世代ネットワークアーキテクチャの方向性

3:仮想・コンテナ環境の統合オーケストレーション

4:端末あたり最大20Gbpsのスループット提供を実現する、FPGAによるユーザデータ処理オフロード

5:28GHz帯5G電波の透過・反射を動的制御する透明メタサーフェス技術

6:5G×映像技術×AIによる、監視カメラシステムの高度化

7:5G回線の高速大容量をメッシュWi-Fiのバックホール回線に活用

8:基調講演「5G、より豊かな未来の到来」のハイライト