電線・ケーブルの研究・開発・製造を通じて情報通信インフラの発展を支えているフジクラは、多心光コネクタを生み出した企業の一つでもある。同社独自開発の精密成型技術による低損失な多心光コネクタは国内外のユーザから高い評価を得ており、コネクタ単品からパッチパネルも含めた配線ソリューションまで提供している。フジラ エネルギー・情報通信カンパニー 光ケーブルシステム事業部 光機器製品部 部長の半谷延之氏は「2018年の光コネクタ全体の売上は、前年比で30％程度増えた。特に多心光コネクタが好調で、low lossタイプの12心の多心光コネクタを中心にDC向けで増加傾向だった。DC以外では伝送機器内で使われる配線で光コネクタの需要も増えている」と話す。

信頼性の高さを追及したMPOコネクタによる安定した運用

　高密度実装に最適な多心光コネクタだが、複数ある心の中で一心でも挿入損失が高いと実際の運用に影響が出てしまうことを懸念するユーザは少なくない。フジクラではそうした課題に対する取り組みとして、光学特性に優れたフェルールの開発や、コネクタの製造工程における入念な品質管理を行っている。半谷氏は「弊社のMPOでは、自社とグループ会社で共同開発した非常に精度の高いフェルールを使用している。例えば、異なるメーカー同士のMPOを接続する場合は挿入損失が高まってしまうのだが、精度の高いフェルールを用いることはそうした損失を抑えることに繋がる。また、コネクタの製造工程において損失バラツキはどうしても生じてしまうので、製造の様々なデータを常に把握することで損失バラツキの発生を早期に発見し、損失を抑えている」と話す。

清掃が不要な多心レンズコネクタの需要増加

　DCで使われるMPOの数量が増えるとともに、コネクタ端面の清掃が不要な多心レンズ光コネクタの要求も高まっている。例えば、MPOを数千個規模で使うシーンで清掃の手間を省くことができることを考えると、そのメリットの大きさが分かり易い。また、DCではフロントパネルだけではなくバックパネルでもMPOの採用が進んでいるので、そうした清掃自体が難しいシーンでも多心レンズ光コネクタの活用が期待されている。
　多心レンズ光コネクタはレンズでビーム径を拡大する構造となっているので、ホコリの影響が少ない。この構造が清掃不要のメリットを生んでいるが、挿入損失や反射減衰量といった光学特性が一般的なMPOより落ちてしまうというデメリットも併せ持っている。半谷氏は「市場からは一般的なMPOに近い光学特性を要求されているので、開発側で様々な議論しなくてはならない状況だ。弊社では、お客様から様々なご要求をいただき、応えられる部分はサンプルでご提供する。弊社が持つ多心光コネクタの精密成型技術は多心レンズコネクタでも役立つので、こうした技術を使って市場に早く製品をリリースしたいと考えている」と話す。

パッチパネルのカスタマイズによる使いやすさを提案

　光コネクタが高密度に接続されるパッチパネルでの作業は、現用回線に影響を与える重要なものだ。そのためパッチパネルには、パッチコードが密集した状態での作業のし易さや、少ないスペースでも配線コードを効率良く収容できるような設計が求められる。半谷氏は「DC内の限られたスペースを有効に活用できるよう、我々はお客様のご要望に合わせたカスタマイズにも対応している。特に多心では光ファイバの取り廻しが難しくなるので、お客様が使いやすい、作業効率の良くなるものをご提案している」と話す。

今後の展望

　半谷氏は今年の市場動向について「DC市場は北米が中心だが、北米のDC事業者が世界各国にDCを建設するので、そこからの引き合いも期待している。また、国内のDCでは小規模な案件や、メタル配線から光配線への置き換えの需要が増えているので、弊社では多心光コネクタ配線のソリューションを提案している。DC以外の市場では海外FTTHの需要が増えているので、現場付けコネクタをご提案していく」とし、製品の展望について「昨年ほどの増加率ではないが、今年も12心、24心といった多心光コネクタの売上は前年比で伸びていくことを期待している。また、現行品よりも低損失な16心、32心の要求がDC市場で増えてきているので、それをいち早く製品化する」と話している。

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