ノキアの実績に見るPrivate LTEの活用【米国全土に渡るパブリック・セーフティ・ネットワーク】
期間限定無料公開 有料アメリカ商務省国家電気通信情報庁が設立した庁内の独立機関であるFirstNet(First Responder Network Authority)は、全米50州と5つの領土及びコロンビア特別区における公共安全ネットワーク、いわゆるパブリック・セーフティ・ネットワークの構築を担っている。ネットワーク運用の主体はAT&Tとなる。このパブリック・セーフティ・ネットワークの使われ方の1つにとして、有事における警察と消防の通信網の相互接続があり、ノキアのPrivate LTEが導入されてたという。
警察と消防による情報共有の必要性が浮き彫りになったのは、2001年9月11日の同時多発テロだ。事件直後の現場では警察と消防が人々の救助にあたっていたが、ビルの崩落により多数の消防隊員が犠牲になった。この際に警察側はビル崩壊のリスクをキャッチしていたものの、それを消防へ迅速に伝える手段が無く、間に合わなかったという。これを重く見た連邦政府は、情報の共有を実現する次世代ネットワークの仕様策定と標準化の支援をベル研究所に要請。そのソリューションが、周波数を共有しながら独立性と相互接続性を担保できるPrivate LTEだ。
このPrivate LTEソリューションでは、新しい周波数を警察と消防で共有し、平時はそれぞれの独立したネットワークとして使用、そして必要に応じてお互いに通信ができる。奥田氏は「このソリューションはアメリカの全ての州に順次導入される予定で、AT&Tが所有するアメリカ全土の基地局網に、新しい周波数をカバーする弊社の無線装置を付けることになる。既にデトロイド等で導入が始まっている。こうした動きは、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアでも進んでいる」と話す。
従来の公共無線よりも高速、大容量、低遅延なLTEを使うことで、音声だけでなく、動画の共有や、人や車両の位置を把握することもできるようになる。また、北米では多数の監視カメラにより街中の死角を無くす防犯環境設計が進んでいるので、そうした映像データを見る手段としてもLTEは最適だ。奥田氏は「将来的には、人が災害現場に駆け付ける前にドローンやロボットが現地の状況を確認することで安全性を高めることも、LTEによる通信で実現できる」と話している。
一方で、日本国内における公共の事例としては、2017年10月に結ばれた仙台市とノキアの連携協定がある。これは仙台市における住民の安全・セキュリティ向上と地元経済の発展に寄与するもので、この協定によりノキアは、仙台市に複雑な緊急事態や脅威に対応する高信頼・安全・ミッションクリティカルなネットワークやドローンを提供する。奥田氏は「日本でも様々な方からPrivate LTEに関するお問い合わせを頂いている。例えば、ノキアのドローンは80km/hの移動速度や60分の飛行時間を実現しており、これをLTEでカバーするので操作担当者の技量の影響がない。例えば、ドローンにカメラやセンサを取り付けることで、被災者の捜索に役立てることや、ガスの発生を把握することができる。こうしたことで災害時における初動の課題を飛躍的に解決できるのではないかと考えている」と話す。
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公共業界事例
・米国全土に渡るパブリック・セーフティ・ネットワークや、日本における仙台市との協定