光コネクタ最新動向~フジクラ~
期間限定無料公開 有料電線・ケーブルの研究・開発・製造を通じて情報通信インフラの発展を支えているフジクラ。世界で多心光コネクタの需要が増える中、同社は多心光コネクタを生み出した企業の一つとして高い技術力を活かした製品を市場に提供している。
多心光コネクタ需要の変化
フジクラは多心光コネクタ市場でシングルモード、マルチモード共に世界シェアトップだ。特にシングルモードでは圧倒的なシェアを誇っている。2016年の動向についてフジクラ エネルギー・情報通信カンパニー 光ケーブルシステム事業部 光機器開発部長は「MTコネクタの場合、マルチモードはサプライヤが増えて市場価格も下がっている。世界的な需要はマルチモードもシングルモードも増えているが、弊社ではシングルモードの割合が増えており、世界でもサプライヤの少ない低損失モデルのご要望が増えている」と話している。
同社はシングルの低損失モデルの製造に関して、フェルールは国内、アセンブリは東南アジアで行なっている。また、マルチモードも国内で製造しているという。「マルチモードの価格競争は厳しいが、特性面や管理面でご評価頂いている。また、製造工程の自動化も進んでいる」(同氏)。
汚れに強く着脱の安定性にも優れる多心レンズコネクタへの期待
フジクラは多心用の光コネクタクリーナも提供しており、その需要も増えてきているという。フジクラ エネルギー・情報通信カンパニー 光ケーブルシステム事業部 光機器製品部 グループ長は「次世代のデータセンタではフロントパネルだけではなく、バックパネルでもMPOコネクタの採用が進んでいる。こうした奥まった場所を綿棒等で清掃するのは難しく、逆に汚れを拡散させてしまう危険性も有るので、専用の光コネクタクリーナをお使い頂くケースが増えている」と話している。
このようにMPOコネクタの利用シーンが広がっていることから、汚れに強くクリーナが不要で、かつ着脱の安定性にも優れている多心レンズコネクタへの期待が高まっているという。こうした多心レンズコネクタの特長は小規模な光配線、例えば医療用途で光の装置を数台しか使わないネットワークで保守・運用をシンプルにしたい場合でも有効だ。「シングルモードの多心レンズコネクタは技術的に有用性が高く、学会でも注目されている技術だ。弊社でもプラスチックレンズで開発に取り組んでいる。ただ、多心レンズコネクタは標準化を前提にしたものではないことから現時点ではメーカー間の互換性が無く、大規模ネットワークではなく医療分野など閉じたネットワークで使われている段階だ」としており、「シングルモードの多心光コネクタによるネットワーク構築が進み、将来的に清掃ができないようなスペースでも多心光コネクタが必要となった段階で多心レンズコネクタの普及は進むのではないか」(同氏)。
レーザと接続するコネクタに注力
PRIZM®LightTurn®コネクタは、フジクラが米国の合弁会社であるUS CONEC社と共同開発したコネクタであり、VCSEL型光トランシーバの光路を高精度に配置した反射レンズアレイで高効率に一括変換することができる。光コネクタの中で同社が注力しているのが、こうしたレーザとの接続コネクタだという。同社はPRIZM®LightTurn®だけでなく他のレーザとの接続コネクタも提案しており、VCSELの他、シリコンフォトニクス用の接続コネクタも提供できるという。
FTTHやアンテナ基地局向けに多心防水コネクタを低価格化
フジクラは、電波産業会(ARIB)が100Gbpsを越える非圧縮8K伝送を実現するために策定した“超高精細度テレビジョン信号スタジオ機器間インターフェース規格(ARIB STD-B58 1.0版)”に準拠した多心光コネクタを世界で初めて開発している。このコネクタにより、例えば100本以上のBNCケーブルを必要とするような映像伝送も光ファイバ一本で伝送することができる。
同コネクタは一般的なMPOコネクタの10倍となる5,000回の着脱を実現。Oリングを用いることで、嵌合部は水・粉塵などの侵入を完全に防止する。同社は、この多心防水光コネクタをプラスチック化することで低価格を実現した製品も新たにラインナップに加えた。FTTHやアンテナ基地局向けを想定しており、既に海外でご採用頂く話が進んでいるという。
現場組立コネクタの海外需要
現場組立コネクタは日本のFTTHで数多く使われ、現在では中国、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、カナダと世界各国のFTTH施工に貢献している。現場組立コネクタでも12心のMPOを一括で接続できる融着タイプをラインナップしている。日本メーカーの現場組立コネクタは信頼性が評価されており、最近では中国のアンテナ配線の光化でも引き合いがあるという。