InterBEE 2016に見る映像伝送と通信の最新製品【住友電気工業】
期間限定無料公開 有料住友電気工業は2014年に100%子会社であった住友電工ネットワークスおよびブロードネットマックスから事業を譲り受け、組織を再編。これにより同社は、放送と通信の融合に対する製品開発力やソリューションの提案力が強化された。
ブースでは自主放送システムや防災、4Kをテーマとしたソリューションを紹介。新製品では、省スペース化や低コスト化を実現した地デジ自主放送センター装置、4K及びAndroid TVに対応したIP-STBが展示されていた。
ケーブルテレビ向けAPC・マスター自主放送システム
同社はマスターシステムを中心に製作編集からヘッドエンドまでトータルで提供している。OSに依存せず信頼性を重視したAPCプレイアウト装置や、イニシャルやランニングコストに合わせて導入可能な送出ビデオサーバ、アーカイブやOTTなど二次利用可能なメタ連携ファイルフロー、そして編集機等と連携することでヒューマンエラーを未然に防ぐ運用管理フローなど、様々な特長を持つシステムだ。ブースでは同システムで使われる機器の新製品として、来年2月に発売を予定している地デジ自主放送センター装置「DME-3703」も展示していた。
「DME-3703」はHD2波に絞ることでコストとスペースの低減を実現した製品。住友電気工業 通信キャリア営業部 西日本営業部 西日本グループ 主席の廣瀬良治氏は「従来製品ではセンター装置、変調器、電源の冗長で3Hのスペースが必要となるが、この製品はそれらを1Hの筐体に一体化している。弊社では別途DME-3701(HD/SD兼用2波、SD専用4波)もご提供しているので、HDのみで十分な場合や予備機としてお使いになるお客様に対してはDME-3703をリーズナブルな価格で提案していく」と説明している。
地上デジタル自主放送データ放送連携防災無線放送サービス
「DME-3703」はデータ放送システムと連携することで、加入者が視聴している地上デジタル自主放送(コミュニティチャンネル)に防災無線の音声や告知テロップを流すこともできる。市販のデジタルテレビで受信可能であり、システムの構築はCATV局側だけで済むので、自治体や地域住民は設備や端末を新たに追加する必要はない。これにより地域住民は屋外スピーカーよりも確実に防災情報を把握できるようになるので、速やかに避難することが可能となる。
このシステムは、音声検知装置で防災無線の開始を検知すると、データ放送で視聴者宅のテレビに送信し、コミュニティチャンネルの画面に防災無線をテレビで聞くかどうか選択するテロップを表示する。視聴者がリモコンの色ボタンを押すと音声が防災無線放送に切り替わり、同時にデータ放送画面に切り替わるので行政の防災関連情報を画面上で確認することもできる。他のチャンネルを視聴している場合でも、屋外からの防災情報が聞き取りにくいと感じたら、コミュニティチャンネルを選択するだけで防災情報を把握できる。廣瀬氏は「今回のデモにご協力頂いている美作市や東京の事業者に導入して頂いているサービスだ。こうした事例をご紹介すると、防災と連携していきたいというお声を頂くので、今後も採用頂ける事業者が増えると期待している」と話す。
屋外用IPカメラ連携OTTサービス
防災に関連して同社が昨年より取り組んでいるのが、Wi-Fiアクセスポイントの活用だ。平時には観光用ライブ/VOD映像のマルチデバイス配信のシステムとして利用し、災害時には防災情報を配信する。同社は屋外用IPカメラや各種サーバも扱っているので、サービスに必要な機器を全て提供可能である。
このシステムは山口県岩国市のケーブルテレビ局アイ・キャンが採用しており、廣瀬氏は「観光用途として錦帯橋にWi-Fiスポットを設置して頂いた。普段は日本語、英語、韓国語、中国語の観光情報をスマートフォンやタブレットに流し、災害時は避難場所を表示する。また、局様はこのWi-Fi網を利活用して自主放送の生中継で利用できる」と説明している。
ブースでは、各映像の再生履歴を調べることで利用頻度を把握できる等の運用方法も解説していた。
ケーブルテレビ向け4K対応IPリニア放送システム
4K対応IPリニア放送では、今年7月にリリースされた4K対応IP-STB「ST-4173」を使ったシステムが紹介されていた。DRM(Marin IPTV-ES)連携が可能で、編集、符号化した番組(MPEG2-TS)のプレイアウト送出やCSVファイル編集によるEPG生成、送出も可能である。愛媛CATVに導入実績があるシステムだという。
同社はキャリア市場向けにIP-STBを10年以上に亘り提供してきた実績があり、同社の4K対応IP-STBはひかりTVサービスでも採用されている。廣瀬氏は「新製品のST-4173はCATV市場向けに開発したモデルで、Android TVにも対応しており、事業者が希望する機能を乗せることができる。テレビとスマートフォンで同じ映像を見ることができる環境で、今後もIP-STBの使い方は発展する。ST-4173を検証用途としてお使いいただき、ケーブルテレビネットワークにおけるIP放送の課題の洗い出しやご要望を承り、今後の製品へ展開できるよう検討させて頂く」と説明しており、テレビから離れスマートフォンを使っている層に対しても訴求力のあるシステムとなりそうだ。
IP放送のFTTH伝送路では10G-EPONを紹介していた。廣瀬氏は「今後は4K映像などが普及し、更なる広帯域化が必要となるため、10G-EPONを提案している。1チャンネルであれば1~2GbpsのPONシステムでも問題は無いが、複数チャンネルでは3G~6Gが要求されるため、中長期的に考えると10G-EPONが良いだろう。先行してセンター部分を10Gにしておけば、加入者の要求に合わせて端末を交換し、サービスを提供することができる」と話している。
RF双方向STB用視聴率システム
ブースでは、視聴データの収集機能と集計機能が一体化したシステムも展示。J.Labs SPEC-011-01 1.0準拠のRF双方向STBに対応している。1分毎の視聴データの収集が可能で、集計機能は時間別集計、平均集計、こだわり集計の3種類から選択できる。STBの状態(正常/異常、電源ON/OFF)の把握も可能だ。ベイ・コミュニケーションズに導入実績があるという。