つくばフォーラム2020 ONLINE開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【3】
INTERVIEW 有料事業へ貢献する先端技術
こちらでは、保守運用自動化・効率化技術などの事業や現場業務に変革をもたらし、社会課題解決へ貢献する先端技術が紹介される。
構造劣化判定システム
NTTでは、電柱など通信基盤設備の点検作業の効率化に向けてMMS(Mobile Mapping System)車両を利用して研究開発をしている。MMS車両で取得した3D点群画像データとNTTの設備データベースを用いて電柱・ケーブルをモデル化し、自動診断するという。青柳所長は「電柱の現状がデジタル化されるので、たわみや傾きをデータで正確に把握できる。現地で人が計測しなくても自動車の走行だけで設備のデータをセンターに集めることができるので、非常に効率的だ。そのデータを自動でスクリーニングし、更に人の目で判断し、対処が必要な設備にのみ人を派遣することになる」と説明している。
この技術は適応範囲が広がっており、今年はケーブル、支線といった細い構造物までモデル抽出が可能になったという。青柳所長は「例えば、既設ケーブルの張力も把握でき、新規のケーブルを追加する場合に電柱を建て替える必要があるのかといった荷重の計算をデジタルで設計することも可能になると考えられる」と話している。
被災箇所推定技術
災害時のネットワークの被災箇所を推定することで、迅速な災害復旧および業務効率化を実現する技術が紹介される。これは前述のネットワークリソース管理技術 NOIMと社会情報(気象/雨量/障害情報等)を組み合わせ、過去に被災した設備と社会情報の関係性を記録することで、新たな災害発生時に被災する可能性が高い設備を推定するという。展示では、ネットワークリソース情報と社会情報を活用した災害対応業務の実現イメージが紹介される。
青柳所長は「被災する可能性が高い設備をAIで予測することで、修理の準備や迂回ルートの設定を事前に行える」と説明している。
絶対座標取得技術
スマートオペレーションへの変革を目指した研究が、NTTインフラネットと共同展示される。NTTインフラネットが開発中のスマートインフラプラットフォームを用いた設備管理システムとAS研技術による設備位置情報の高精度化について紹介。また、地下埋設設備の絶対座標をARで可視化する技術についても紹介される。
青柳所長は「電力、水道、ガスなどの様々な地下埋設の設備をデジタルの3Dマップで確認することで、お互いに工事をする際に傷つけないようコントロールできる。その実現の第一歩として地下埋設設備の絶対座標取得がある。現在、作業時間が短く測位精度の高いGNSS(Global Navigation Satellite System)測定を用いる装置はあるものの高価である。また、座標測量として世の中で広く使われているトータルステーションは、測量スキルを要しかつ作業時間が長い。そこで我々は、1周波方式の安価なGNSSを独自の技術でコントロールすることにより、短時間に高精度な座標取得を安価にスキルレスで取得できる技術を確立した。現在、次のステップとして、地下埋設設備が露出していなくても測位できる技術の開発に取り組んでいる。最終的には、取得した絶対座標をベースに3Dオブジェクト化を行い、地下設備のデジタル3Dマップに反映させていく。また、これを通信インフラだけではなく、様々な社会インフラと連携して行うことでスマートな都市を創ろうと取り組んでいる」と説明している。
編集後記
今回、青柳所長の解説から、IOWN時代における人々の生活の変化を感じた。「Cradio™」が実用化され、無線通信の種類や品質といった外的要因を気にせずに情報を扱うことが可能になれば、情報端末は自分の体の一部のような快適なツールになるだろう。テレワークの普及によりオフィス以外で働く機会が増え、プライベートでもオンライン交流が増えた今、ナチュラルに接続できるという将来ビジョンが人々の暮らしを豊かにするものだと実感できる。また、「NOIM」が実用化され、災害対策に役立てられるようになれば、命を守る行動を支えるインフラとして更に前進するだろう。
本記事では今年のAS研展示の一部を紹介するにとどまったが、IOWN構想は様々な通信技術が組み合わさって実現されていく。また、IOWNを支える革新技術だけではなく、今の事業を支える技術もバランスよく展示される。今年はオンラインということで、会期後も展示を見ることができる。例年は訪れるブースを厳選していた方も、今年は様々な技術展示を見ることで、例年とは違った発見ができるかもしれない。
インタビュー目次
つくばフォーラム2020 ONLINE開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【1】
つくばフォーラム2020 ONLINE開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【2】
つくばフォーラム2020 ONLINE開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【3】