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つくばフォーラム2024開催記念「NTT AS研 海老根所長インタビュー」【3】

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運用を抜本的にスマート化する技術

無派遣で心線切替可能な遠隔光路切替ノード

 日本の労働人口は減少の一途を辿っており、将来の人手不足は深刻であることから、AS研では、無派遣で心線切替と正常性確認が可能な遠隔光路切替ノードによる、オンサイト作業の削減をめざしている。
 この技術は、光ファイバ給電によるリモート操作を実現する遠隔制御、微小電力駆動かつ小型化を実現する光クロスコネクト、光パワー測定を全心線一括で実現するポート監視がポイントとなる。
 海老根所長は「光給電のみでのリモート操作を可能とすることで、商用電源が無い環境においても利用できるようにする。現状、こうしたマンホール内での作業は、道路管理者に申請し、蓋を開けてガスや水を抜くといった前段階の業務もあるが、この技術であればそれらも省いて数分のリモート操作で完了できるので明らかに稼働削減につながる」と説明している。

無派遣で心線切替可能な遠隔光路切替ノード。現在、所外ノード筐体の設置環境に考慮したPoCを作って取り組みを進めているという。

画像認識を用いたインフラ設備の点検技術

 インフラ事業者は保全業務のDXに向け、車載カメラ等を用いた設備撮影と画像認識による設備点検の導入を推進している。そこでAS研では、車載カメラやドローンで街中を撮影した様々な画像から設備の状態を高精度に点検できる画像認識手法を研究しており、車載カメラ等での一括撮影と画像認識を用いた点検により稼働の削減と品質の均一化をめざしている。
 海老根所長は「自動車やドローンで街中を撮影するということで、画像認識の際に外乱光やノイズなどがあっても検出できるようなAI学習も進めている。適用範囲の広い技術であり、例えば道路付属物、ガードレール・標識、電柱、とう道・マンホール、トンネル、橋梁、道路標示線などで、微小な錆の検出や、塗装の劣化を検出する。NTTの設備だけでなく、電力など街中の様々なインフラにも応用できると考えている」と話す。
 画像認識技術の特長は次の通り。
検出:撮影画像の構図・照度によらず高精度に劣化を検出
判定:物体の実空間における配置場所を特定
計測:コンクリート表面の特徴解析により、撮影画像のみから劣化の実寸値を計測
診断:部分的に欠損・損耗した設備を健全な状態へ復元することで劣化の進行度合いを正確に判定

画像認識を用いたインフラ設備の点検技術。

埋設管路の高精度位置情報取得技術

 社会インフラ維持管理のDXを推進するためには、設備の正確な3次元位置情報の整備が必要となる。そのための地下設備の位置情報を取得する手法には地中レーダがあるが、高深度の管路や輻輳箇所には適用が困難という課題がある。そこでAS研では、複数センサを搭載した計測装置で管路内を走査し、各取得データを統合させることにより高精度な線形算出を実現する研究に取り組んでいる。
 海老根所長は「これはNTTの4Dデジタル基盤の一環であり、TOFカメラによる点群データや、IMUによる姿勢データ、エンコーダによる移動距離データを用いて、高深度の管路全長を3Dモデル化する。また、衛星測位を用いたマンホール鉄蓋の高精度な測量による管路端部(ダクト)の絶対座標の算出も研究している。これらの技術により、埋設管路の高精度な位置情報を網羅的に取得可能となるので、地下設備の維持管理(工事計画、保全、災害復旧等)の効率化に貢献できる」と話している。

埋設管路の高精度位置情報取得技術。

ユーザ要望をかなえるサービスを的確に提供するIntent抽出技術

 6G/IOWN時代の通信サービスは、ユーザが利用したいサービスを最適な品質やタイミングで提供することが重要となる。そのため、技術的知見を持たないユーザの要望を的確に把握し、それを指標として自律的に制御することが必要とされている。
 そこでAS研では、自然言語を用いた非定型の対話により、システム主導でユーザから要望を収集することで、必要な情報を取得する技術を研究している。この取得情報を基に利用するサービスにあった要件を特定し、自律制御のための定量的な要求値(Intent)を算出するという。
 海老根所長は「例えば、遠隔操作でネットワークのリソースが適切に使われていないと、遅延が大きくなったりする。そうしたことを防ぐために、ネットワークに詳しくないユーザでも、ChatBotとの会話という簡易なオンデマンド手法でネットワークの容量等をコントロールできるようにするというコンセプトの技術だ。この技術のポイントは、ユーザからの要件を適切に整理して、ネットワーク側で容量制御や遅延制御を実現する点であり、これを我々のノウハウで取り組みを進めている」と話す。
 この技術により、エンゲージメント向上実現のためのオペレータ稼働の削減や、高度化するサービスに適応した自律制御の実現が見込まれている。

ユーザ要望をかなえるサービスを的確に提供するIntent抽出技術。

特集目次

■NTT AS研 海老根所長インタビュー

・研究開発の方向性

・サービスの高度化・多様化を支える技術

・運用を抜本的にスマート化する技術

・新ビジネス領域を開拓する技術

■パネルディスカッションや技術講演

・技術交流サロン・ワークショップ

■出展社Preview

・NEC

・エクシオグループ

・住友電工グループ

・日本コムシス

・横河計測