光通信技術セミナー企画委員インタビュー:中村 二朗氏【NTTアドバンステクノロジ】
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■コースリーダー
NTTアドバンス テクノロジ(株)中村 二朗
■講演タイトル
FOE-4
マルチコア光ファイバ技術の動向と標準化展望
■講演者
日本電信電話(株)
上席特別研究員
中島 和秀
大容量光伝送基盤における伝送容量の持続的な拡大を実現するため、空間分割多重伝送の研究が世界的に進められている。本講演では、マルチコア光ファイバ技術の研究動向について概説し、マルチコア光ファイバの国際標準化に向けた展望について述べる。
中村氏は「マルチコア光ファイバは、例年の光通信技術セミナーでも関心の高い分野だ。データセンタにおけるトラフィックの増加、そしてIOWN4.0の実現におけるキーの一つであり、講演ではその実用化、標準化に関する最新の情報をお伝えする。今回は、チップ間といった将来的な話よりも、既に光ファイバが使われている用途でのマルチコア光ファイバ適用の話が中心になる予定だ」と話す。
登壇する中島氏は、NTTにて各種光ファイバの設計、評価に関する研究、並びに国際標準化活動に従事。2009年よりITU-Tにおける光ファイバ標準検討グループのラポータを務める人物だ。
NTTは、マルチコア光ファイバ研究で世界をリードする成果を上げている。その主な流れを纏めると、2017年には直径250µm以下の光ファイバ断面に6モード伝搬可能なコアを19コア配置することでファイバ1本当り114の空間チャネルを配置し、既存光ファイバと同等の機械的信頼性を実現する世界トップクラスの超大容量伝送光ファイバを実現することに成功。そして、2018年には10モード・12コアの光ファイバを設計、試作し、空間多重数と空間利用効率の双方で既存光ファイバの100倍以上のポテンシャルを有する世界最高の高密度空間分割多重光ファイバを実現した。NTTはこうしたトップデータを示した後、コアの数を多くすると光ファイバの直径が250µmと既存の光ファイバのほぼ倍の太さとなり製造等の効率が低くなることから、既存の光ファイバと同じ125µmで容量を増やすことを追究。短距離から1万km級の長距離伝送にも適用可能なマルチコア光ファイバの研究成果も報告して、2019年にはOECCの論文賞等を受賞した。そして現在は、クロストークやコネクティングなど様々な課題を考慮して4コアにフォーカスした研究を進めており、他の技術との組み合わせでIOWN4.0の目標である既存光ファイバの125倍の大容量をめざしている。
中島氏はマルチコア光ファイバに関して、先端技術の研究というトップデータを追求した経験、そして国際標準化という汎用性と生産性を追求した経験の双方を持ち合わせているので、4コアや19コアについて今現在どういった見解を持っているのかという点でも興味深い。