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つくばフォーラム2023開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【5】

INTERVIEW 有料

新ビジネス領域を開拓する技術

大型構造物の非接触破損点検技術

 拡大が予想される洋上風力発電は、陸上よりも大型となるため、運転停止による発電量低下と洋上作業のための船舶確保などによる保守運用コスト増加への対策がより重要となる。
 そこでAS研では、自律飛行ドローンに微弱送受信技術を搭載し、周波数と送受信距離により決まるフレネルゾーンを簡単に変更可能な技術や、フレネルゾーン内の受信レベル等の変化を検知する技術に取り組んでいる。これら微弱電波は無線局免許不要のため、どこでも使用可能だという。
 青柳所長は「例えば、風車にヒビが発生していないかを点検するためには、現在は風車を止めて作業員が登る必要がある。対して、我々の自律飛行ドローン技術のノウハウを活かした本技術ならば、風車を止める必要が無く、作業員の派遣も無いので、発電量増加と保守運用コスト削減を実現できる。カーボンニュートラルへの貢献という意味も含め、積極的に提案していきたい」と説明している。

非接触破損点検技術のイメージ。

光ファイバ環境モニタリング

 AS研では、様々な社会サービスを実現する高付加価値な情報を得るため、光ファイバ網をセンサ化する研究を進めている。既設の空き心線をセンサ媒体として活用し、通信設備に新たな価値を付与することや、異常通信設備の遠隔検知などの保守運用用途での利用が期待されている。
 技術のポイントは、高精度光計測技術による光ファイバの振動データの取得や、IOWNと組み合わせることだ。APNによるファイバ選択、データの高速転送、DCIでの高度な処理・解釈が可能になれば、様々な産業での活用や社会課題の解決に寄与できる。
 青柳所長は「昨年もご紹介した技術であり、この一年で精度を上げる研究が進んだ。例えば、自動車の振動を把握する用途では、複数の周波数を使うことで精度が向上することを確認できた」と説明している。APNという光が張り巡らされた世界で高精度な振動検知が実現できれば、スマートシティにおける交通量の把握や、地震の予兆検知など、人々の生活に役立つサービスが実現できるだろう。

光ファイバ環境モニタリングのイメージ。

多様な創意工夫を結集させる協働型オペレーション

 地域社会の基盤を支える事業者の創意工夫を活かすには、個々の業務やその改善策を結集させる仕組みが必要となる。そこでAS研では、働く人を多様な業務へ適応可能にするオペレータ能力拡張技術や、全体戦略と現場活動を調和する業務デザイン技術に取り組んでいる。
 青柳所長は「リモートが普及したこともあり、こうした協働型オペレーションによる連携は重要だと考えている。社内・社間の協働による化学反応がもたらす新たなビジネス領域の創出に繋がる技術だと期待している」と説明している。

協働型オペレーションのイメージ。自律的な活動によるEX(働く人の満足度)充実と、改善の結集による企業生産性向上に繋がる技術となる。

編集後記

 今回も伝送技術の高度化や、運用のスマート化を実現する魅力的な最先端技術が幾つも紹介された。青柳所長の解説の中で特に気になったのは『画像認識によるインフラ構造物の劣化自動判定技術』だ。NTT設備に対する運用・点検で培われてきた技術が、自治体といった外部で適用されたことは、NTTの保守・運用における技術力の高さを感じさせる。この技術は、AS研の研究方針の『運用を抜本的にスマート化する研究開発』ではあるが、『新ビジネス領域へのアセットを活用した研究開発』にもつながっているように見える。
 そうした観点で他の展示技術を振り返ると、『社会インフラの被災予測技術』もNTT技術の用途の広がりを感じる。この技術の機能の一つとして土壌水分のセンシングがあり、この環境データの取得・予測がAPNと連携され、一般社会にも適用されれば、台風による土砂崩れを予測して人命を救うことができるのではないかと感じた。
 従来からの通話やデータ伝送も、消防や警察のファーストレスポンダーの初動をサポートすることで人命救助に寄与している。APN時代には、被災予測技術や環境モニタリング技術による人命救助も普及するかもしれない。通信設備向けの技術を広く展開するには、異業種とのエコシステムも一つの手だろう。本展のような様々な先端技術が紹介されるイベントにより、技術の展開が広がる“つながり”が生まれることで、人々がこれまで以上に安心で安全な生活を送れる未来を期待したい。

インタビュー目次

1:研究開発の方向性

2:サービスの高度化・多様化を支える技術(NW性能の限界超えを実現する通信・インフラ技術の革新)

3:サービスの高度化・多様化を支える技術(ユーザやサービスに合わせるNW柔軟化技術の革新)

4:運用を抜本的にスマート化する技術

5:新ビジネス領域を開拓する技術

特集目次

・技術交流サロン・ワークショップ

■出展社Preview

・NEC

・エクシオグループ

・住友電気工業

・日本コムシス

・横河計測

以下、後日更新

■会場Review