つくばフォーラム2023開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【3】
INTERVIEW 有料サービスの高度化・多様化を支える技術(ユーザやサービスに合わせるNW柔軟化技術の革新)
多段ループ型光アクセス網(設計アシスト技術)
IOWN時代の光アクセス網として、多段ループ型光アクセス網構成法が提案されている。その導入に向け、既存設備を踏まえた基本設計が不可欠だが、スキルや時間を要することが課題となっている。
そこでAS研では、必要情報を入力するだけで、容易に、GIS上に最適なルート案を提示する技術や、既設ケーブルの空き活用、新設、部分的導入等の導入シナリオを選択可能にする技術に取り組んでいる。
青柳所長は「この設計アシスト技術を使うことで、有スキル者と同等の設計結果が出せる。また、これまで有スキル者が数日から数週間を費やした設計業務が、コンピュータ処理により1~2日程度に削減できる。他にも、ビルエリア毎に適した導入シナリオ検討が可能になるというメリットもある」と説明している。
NWコンピュート高速クローズドループ制御技術
遠隔操作で有用な視覚情報等をエッジ処理して伝達するサービスにおいて、NW+アプリでの往復処理遅延を担保する必要がある。
そこでAS研では、NWとサーバの各状態をリアルタイムに監視し、品質劣化時に即時に切替えることで、常時低遅延性を持続(NW+コンピュートでの高速クローズドループ制御)する技術に取り組んでいる。
青柳所長は「超低遅延をめざすAPNのエッジの部分の技術の一つであり、エッジアプリを用いた遠隔ロボット制御向けに、安定した低遅延サービスの提供をめざしている。例えば、負荷が発生した際に瞬時に切り替えて超低遅延を常にキープする」と説明している。
この技術の進捗として、NTTは三菱電機と共同で、エッジでの力触覚→視覚情報変換(Visual Haptics)を用いた遠隔ロボット操作を実証している。
IoTの適用領域を広げる光給電ONU技術
IoTセンサの設置場所、利用範囲は無線等のデータ伝送手段、太陽光発電等の電源供給手段によって制限される。そこでAS研では、光給電ONUによりIoTの適用領域を広げる研究を進めている。
青柳所長は「通信時のみ通電させる省電力光トランシーバや、スリープ時に光給電で二次電池に充電する技術、光給電&間欠動作での無電源駆動を実現するための研究に取り組んでいる。これらの技術により、屋外・地下等あらゆる所でIoTセンサを利用可能とする光通信を提供できる。また、省電力・スリープ技術を通常ONUに適用することで、脱炭素化にも貢献できる」と説明している。
ブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術
トラヒック増に対応する無線設備の増強が必要とされている。その一環として、無線LANやローカル5Gなど、個人や企業の有する自営無線アクセスまでを含めた無線リソースの共用が有効な手段とされている。
そこでAS研では、ブロックチェーンを用いてセキュアかつ低コストに個人を含む様々な所有者の無線アクセスを共用する技術や、ブロックチェーン上の情報を用いて自律分散的に端末収容を最適化し通信品質を向上する技術に取り組んでいる。
青柳所長は「様々な所有者の無線アクセス共用を促進し、無線設備のコスト低減や省エネ化を達成する。また、通信契約を通した無線アクセス提供者への契約収入によるインセンティブの確保により、従来の経済原理では実現が難しかった課題解決にも繋がると期待している」と説明している。
マルチ無線プロアクティブ制御技術 Cradio®
多様な利用ケースと新無線規格が登場する変革期を迎え、差別化要素が必要となる。
そこでAS研では、マルチ無線プロアクティブ制御技術Cradio®の新機能として、新無線規格や屋内外に対応した自動設計、安定品質に寄する障害推定、自走ロボット等の利用に資する品質予測の各技術と様々な社会システムを連携する研究を進めている。
青柳所長は「スマートシティなど先進的な取組み実現を、複数無線アクセスの高度な組み合わせで支える。また、ローカル5Gや、将来の6G含む新無線の運用・保守のスキルレス対応を実現し、競争力を高める」と説明している。
インタビュー目次
2:サービスの高度化・多様化を支える技術(NW性能の限界超えを実現する通信・インフラ技術の革新)
3:サービスの高度化・多様化を支える技術(ユーザやサービスに合わせるNW柔軟化技術の革新)
特集目次
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以下、後日更新
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