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世界のコネクティビティを支えるアダマンド並木精密宝石【2】

INTERVIEW 有料

新社名に込められた想いと、今後の展望

――:来年度の取り組みを教えてください。
並木氏:
まず、2023年1月1日に社名変更、組織変更を予定しています。弊社はこれまで、祖父や父がカリスマ性のある社長として経営をしてきましたが、私は新しい経営スタイルとして、社員全員を頼り、社員の結束を高めて会社の力を発揮していきたいという想いがありました。
 弊社は2018年に2社を統合し、それぞれの社名を残したアダマンド並木精密宝石となりました。私が入社した際に気になったのが、「アダマンドさん」「並木さん」、と旧社名で話しかけられることが多かったことです。2021年に私が社長に就任した際に、未来の製品づくりに向けて、一旦足を止め、まずは会社の中での結束力を高める必要があると考え、きちんとブランディングをしたいと思うようになりました。これが社名変更の背景となりました。
 とは言え、社名変更は私の想いだけでは実行できませんので、一年半の時間をかけて社内の説明を行いました。従来の社名はそれぞれ業界にも浸透していましたので、お客様の信頼を得ることは非常に重要なポイントだと思い、まずは社員の皆さんになぜこのタイミングで社名変更が必要なのか、その意味と未来に向けたブランド力を納得してもらうことに取り組みました。
 そして今年の四月に、新社名「Orbray(オーブレー)株式会社」への変更を予定していることを公表しました。6月の展示会で多数のお客様とお会いした時には、既にホームページやメールマガジンで社名変更の件をご存じいただいており、多くの反響を頂きました。

――:新社名Orbrayには、どのような想いが込められているのでしょう。
並木氏:
Orbrayは、天体・球体を示すorbと、光を示すrayという言葉を組み合わせたものです。天体・球体については、弊社は地球上にある素材を使って「モノづくり」をしていますので、私たちの基となるところと近しいということでorbを選びました。そして光については、素材をしっかり磨いて活かして、職人技で造っていくことで、光、未来に向かって進んでいくというような意味合いからrayを選びました。海外にある弊社の営業拠点を含めて、同じブランドイメージで推進していきます。
 このOrbrayは外国のお客様、特にアメリカの方々から反響が有り「社名を見ただけで光り輝く生命体のようなイメージが図としてパッと想像できる」「とても未来的で良い」といった感想を頂きました。また、字体も職人のカット技術をイメージできるようデザインしており、外国の方から「日本人は名前に意味を込めるよね」との感想を頂き、これも日本人らしいのだと思いました。

――:光通信市場における今後の開発戦略および営業戦略について教えてください。
並木氏:
当社のコーポレートビジョンには「磨く」「繋ぐ」「紡ぐ」の三つがあり、光通信市場での弊社の強みであるコネクティビティは、そのうちの「繋ぐ」「紡ぐ」が当てはまります。そうしたこともあり、会社全体としてシリコンフォトニクス、SDM(Space Division Multiplexing)、DCI(Data Center Interconnect)、そして車載光通信の四つを注力分野、注目市場と捉えています。
 6月に開催された展示会では、これらの分野に関わってくる注力製品として、開発中の自己形成光導波路、MCF(マルチコアファイバ)コネクタおよびFIFO(Fan-in & Fan-out)、エクスパンドビーム光コネクタ、レンズドファイバ加工、ファイバアレイ、そして光スイッチといった製品群をご紹介しました。中でも、エクスパンドビーム光コネクタの反響を十分に頂き、シングルモードレベルの接続が期待されているという課題が明確になったことが大きな収穫でした。弊社の研究段階ではシングルモードの性能まで達しておりませんので、その性能とコストとの折り合いをどのようするかを、研究開発の課題としてフィードバックしたところです。また、MCFコネクタの反響が想像以上だったことから、いち早く製品をリリースできるよう、開発リソースの投入を決めたところです。今回出展して得られた情報で、開発のフィードバックという良いループができたと思っています。
 フォトニクス事業部では、デジタルコヒーレントとシリコンフォトニクスの関連製品における部材メーカーとしても、リーダー的地位を確保することが命題、重要課題と考えています。例えば、弊社は国産のMEMS光スイッチを出している唯一の企業です。これは、海外メーカーとの協力関係により、良いチップを得られているという強みが発揮されています。次世代のコネクティビティであるオンボードにも、我々の強みである調心接続を活かして取り組みます。
 また、セラミックMTフェルールを中期的な視点で研究開発しています。現段階では、市場から求められているシングルモードレベルの接続を実現しての量産という点に課題がありますが、シリコンフォトニクスを含めたリフロータイムの要求は十分に理解していますし、市場では各社各様の接続形態が必要になってくると思いますので、一つ一つの案件を個別に当たっていく中で、セラミックMTフェルールも活用できればと期待しています。

MCFコネクタは、フェルール外径基準のバンドル中心同心度が1µm以下という高精度。同じく高精度なエッチングファイバと合わせて、様々な高精度配列のバンドルファイバのアセンブリを可能とする。

アダマンド並木精密宝石ではMEMS技術を用いた、光スイッチや 可変光減衰器、波長可変光フィルタといった光デバイス製品を提案している。全てのMEMSチップは光学的・電気的・機械的に優れた性能を提供するために、それぞれのデバイス特有の要件や用途を満たすように設計されている。精密パッケージング技術、封止技術、溶接技術、光製品組立技術を駆使した一貫製造により、同社独自のMEMS光デバイス製品を実現している。また、自社製品を通して得た豊富な知見と蓄積された技術を裏付けに、MEMSファウンダリーサポートも提供。ユーザが希望するMEMS製品の開発から試作、量産OEM製造に至るまでサポートするという。

――:最後に、企業として更に成長していくために取り組んでいることを教えてください。
並木氏:
私の前職が教育関係だったこともあり、会社に入っても学びを止めないということで研修に力を入れています。その背景には、弊社工場が複数ある東北地方での人材獲得、また県外からも人が呼び込めるような働きやすい職場づくり、住みやすい街づくりへの取り組みも有ります。世の中の労働者不足は見えていますので、30年先、50年先を見据えて積極的に仕掛けていく必要があると考えています。
 また、私は社員の皆さんの声を聴くことを最重要視しており、個々の課題を聞いて改革を進めているところです。そうした面談の中で「女性は働きやすい職場を見つけるとやめないんですよ」という声がありました。弊社の工場には女性の比率が少なくないこともあり、外部講師をお招きして女性社員向けにモチベーション向上のためのセミナーを開催してみました。今までにない取り組みでしたが、女性社員の皆さんから喜びの声を直接聴くことができたので、私も非常に嬉しく思っています。メディアの方からは「中小企業の工場で女性向けのセミナーというのは珍しいので驚いた」という感想も頂いており、新たな取り組みとして積極的に実施していこうと考えています。
 新社名Orbrayには、会社を一つの生命体と考え、社員一人一人の個性を磨くことで会社が全体としてより強くなり、輝きを増す、という意味も込められています。全社員一丸となって同じ目標に向かって取り組んでいくためには、弊社の「磨く」「繋ぐ」「紡ぐ」といったコーポレートビジョンのように、社員一人一人が弊社で磨かれ個性を発揮していただけるよう、トライしていきます。

インタビュー目次

1:世界の光通信を支えているコネクティビティ
2:新社名に込められた想いと、今後の展望