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つくばフォーラム2022開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【3】

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無線空間再現技術

無線空間再現技術の利用イメージ。

 IOWNに向けて、無線方式の違いをユーザが意識することなくEnd-Endの快適品質を実現するエクストリームNaaSの研究が進められている。そうした中、無線システムに対する要求条件は複雑化しており、技術検証の増加が課題となっている。
 その解決のため、無線空間シミュレータの様々なシナリオを、1つのリアル検証設備でバーチャルに再現する技術が研究されている。この技術は、検証設備内の壁面に、メタサーフェス反射板(RIS:Reconfigurable Intelligent Surface)や分散アンテナ等の電波の方向制御できるデバイスを一面に設置し、様々なパターンの無線空間を再現する。例えば、障害物の影になり電波が届かなかった端末に電波を届かせることや、特定の地点にフォーカスさせて通信品質を向上することも可能だ。
 RISは、各素子を電子的にコントロールすることにより反射角や透過率といった反射特性を変化させることができるデバイスで、無線空間の再現は複数のRISの協調制御技術によって実現される。
 青柳所長は「これにより、市街地や宇宙などを想定したシミュレーションをリアルの検証設備で再現し、その環境情報をシミュレータに送るといった連携を想定している。1つの検証設備で多様な利用シナリオの検証が可能となるので、検証の加速化が期待できる」と説明している。

フォーミュラカーを活用した60GHz帯無線LANハンドオーバ実験

60GHz帯無線LANハンドオーバ実験のイメージ。

 60GHz帯無線LAN(WiGig)は、免許不要でギガビット級の超大容量伝送が可能な、使い勝手の良い無線方式だが、こうした高周波数帯は直進性が強くゾーンが小さくなるため、高精度な基地局の切り替え(ハンドオーバ)が必要となる。
 この60GHz帯無線LANハンドオーバの研究では、高周波数帯の特性(通信電波で端末位置測位が可能)に着目した基地局切り替え制御や、複数無線部の連携制御により通信断を回避する端末主導の動的サイトダイバーシティが進められている。これにより、通信電波を用いた高精度な基地局切替による高周波数帯超大容量無線の安定利用や、鉄道やMaaS等の超高速な移動環境にも大容量無線を提供(4K映像非圧縮伝送等)できるようになる。
 青柳所長は「この研究では、フォーミュラカーを活用した実験をしており、260km/hを超える移動速度で4基地局の60GHz帯無線LAN無瞬断ハンドオーバに成功した。260km/hという速度は日常的ではないが、この速度に成功したことで様々なシーンでの活用が見込める。今後は新幹線に応用することも視野に入れて実証していく」と説明する。

屋外・非電化エリアに展開可能な光給電ONU技術

光給電ONUの利用イメージ。

 光通信は長距離かつ高速通信を可能とするが、通信先であるONUの設置場所は電化エリアに限定される。
 この研究は、非電化エリアを中心としたあらゆる所での光通信の提供を目的として進められている。青柳所長は「光給電のみで中継器(ONU)を動作し、子機(センサノード群)との接続、親機との通信を実現する。これにより、あらゆる場所でのIoT利用、例えば電源を確保できない河川や屋外環境、更には海底、宇宙まで利用シーンを想定している」と説明する。技術のポイントは次の通り。

  • 光給電によるONUの無電源駆動化
  • 機能限定によるONUの省電力化および間欠動作(スリープ)化
  • 低温/高温等、極限環境対応

IOWN構想を支える多段ループ型光アクセス網構成法

多段ループ型光アクセス網の構成イメージ。

 2001年のBフレッツ提供開始以降、マスユーザを主な対象として経済性を最優先に設計したスター型光アクセス網により、FTTHサービスのエリア展開、早期提供を実現してきたが、IOWN構想におけるオールフォトニクス・ネットワークの足回りを担う次世代の光アクセス網は、モバイル事業者を含む多様なネットワークサービス事業者のビジネス系のニーズ、B2B2Xに応えていく必要がある。
 この研究がめざす効果は次の通り。

  • 冗長経路確保による、エリア全体の信頼性の向上
  • 光心線リソースの融通による、需要変動耐力の向上
  • 基地局構成等を直接つなぐ、光経路選択の自由度の向上

 これらを実現する技術のポイントは、収容局直収の上位ループとそれに帰属する下位ループから構成する「多段ループ型光アクセス網」であり、上位/下位ループの接続点に光ファイバ心線の切替機能点を設置するという。
 青柳所長は「多段ループ型の構成により、ある経路が切れてもそのループの片側の経路で通信ができるので、冗長経路が確保できる。また、複数の多段ループによる構成は光心線の分散や融通が可能なので、あるエリアで需要が増加した場合でも柔軟に対応できる。そして、ループ同士で経路を自由に選択できるので、基地局同士のP2P接続も実現できる」と説明している。

ネットワーク基盤情報を活用した災害復旧支援技術

災害復旧支援技術の利用イメージ。

 大規模災害時の設備復旧プランは、現場ごとの復旧ポリシーや刻々と変わる状況に応じて立案する必要があり、ヒトの高いスキルやノウハウが必要となる。
 この研究では、現場の事情や災害時の交通状況等を考慮した復旧プランの立案支援システムにより、災害によるサービス影響を最大限抑える復旧対応の実現をめざしているという。
 青柳所長は「これはオペレーション系技術の研究であり、ネットワークリソース管理技術であるNOIM(Network Operation Injected Model)を活用した、サービス影響予測とポリシーに基づく設備の復旧優先度算出を行う。具体的には、災害発生時に道路渋滞や土砂崩れなどの外部情報をインプットすることで、AIが効率的な復旧のプランを算出する。このようにヒトのオペレーションをサポートすることによって、早期復旧を実現する」としており、「例えば、交通状況等を反映可能な最適プラン生成アルゴリズム (東京大学との共同研究)などを使うので、高精度なプランを提案できる」と説明している。

インタビュー目次

1:ミッションや研究開発の方向性、今年の展示
2:『サービスの高度化・多様化を支える技術』(前編)
3:『サービスの高度化・多様化を支える技術』(後編)
4:『運用を抜本的にスマート化する技術』『新ビジネス領域を開拓する技術』
5:技術交流サロン、ワークショップ

■出展企業ピックアップ目次■

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