光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

つくばフォーラム2022開催記念「NTT AS研 青柳所長インタビュー」【2】

INTERVIEW 有料

期間限定無料公開中

サービスの高度化・多様化を支える技術

 NW性能の限界を実現する通信・インフラ技術の革新の取り組みとして、高速大容量化・低遅延化技術であるリアルタイム制御技術やA-RoF、分散MIMOシステム技術、低損失細径高密度光ケーブル技術などが紹介される。カバレッジの拡大の取り組みとして、無線空間再現技術や60GHz帯無線LANハンドオーバ技術などが紹介される。
 また、ユーザやサービスに合わせるNW柔軟化技術の革新の取り組みでは、多様なデバイスを収容可能なNWとして光給電ONU技術など、つながり続けるNWとして多段ループ型光アクセス網構成法や災害復旧支援技術などが紹介される。

遠隔操作を実現するリアルタイム制御技術

リアルタイム制御技術の利用イメージ。Ph-GW(フォトニックゲートウェイ)は、IOWNのベースの一つでもある。

 ドローンやロボットなど遠隔操作の必要性が増していることから、高度な作業も遠隔で行う需要が高まると想定されている。その実現の為には、エンド・ツー・エンドの低遅延、低ジッタ化だけでなく、ネットワークの輻輳時やエッジの過負荷状態でも即座に正常状態に戻すことが求められる。これを光アクセスの部分で実現する研究では、次の2つの技術がポイントになる。
 まず、リアルタイム制御技術は、タイムリーな情報収集と切替制御により、品質変動時にも即座に切り替える。青柳所長は「伝送制御・エッジ制御により、最適な光パスおよびエッジリソースへの切り替えを実現する。具体的には、エンド・ツー・エンドの遅延値がある閾値以上になったら、異なるパスおよびエッジリソースに切り替え、サービスの性能要件を満たしていく」と説明している。
 次に、光無線連携制御技術は、ラストワンホップの無線区間と、そこまでの光区間の連携による低遅延、低ジッタ化と、予測に基づくパス切替による輻輳回避を実現する。この連携制御は拡張連携IF(eCTI)を用いて取得した光区間に到達する前の無線トラフィックの情報やリソース情報など、幾つかの情報を用いることが検討されているという。
 青柳所長は「これらの技術により、ストレスなく遠隔操作可能なサービスの提供を実現する」と説明している。

6Gに向けた高周波数帯分散MIMOシステム

高周波数帯分散MIMOシステムの利用イメージ。

 6Gに向けた無線大容量化では100Gbps以上が想定され、デジタルツインに向けては多数センシング環境が想定されている。この、無線大容量とセンシングの両立が可能な広帯域信号を有するミリ波・サブテラヘルツ波帯を、移動環境で経済的に適用できるようにすることが、この研究の目的だ。青柳所長は「周波数が高くなるほど電波の直進性も高まるので、アンテナは遮蔽物を避けながら数を多く設置していくことになる。それを効率良く実現するための技術として、A-RoF(Analog Radio over Fiber)を活用した高周波数帯分散MIMOシステムの開発に取り組んでいる」と話す。技術のポイントは次の通り。
• A-RoFによる、経済的な分散アンテナの展開
• 分散アンテナにより、見通し電波中心でエリアカバー
• ユーザ端末移動に追従する、高速アンテナ切り替え
 青柳所長は「この技術により、高周波数帯で、移動・遮蔽環境下でも安定した大容量無線伝送が実現できるので、ユーザがアンテナ切り替えに気付かない、常に繋がっているようなサービスを提供できる。また、通信電波をレーダ波とすることで、多数のレーダ波による端末測位などの無線センシングも提供できる」としており、「このシステムは、6Gのコア技術として有望視されており、今回は現段階の研究ということで28GHz帯でのご紹介となるが、より高い周波数での研究も検討している」と説明する。

長距離大容量伝送を支える低損失細径高密度光ケーブル技術

低損失細径高密度光ケーブル技術のイメージ。

 トラフィック需要の拡大に応えるため、大容量伝送路の効率的な構築が重要となる。これには、CO2排出量削減など、環境負荷低減の推進も必要となる。今回は、それを実現するための取り組みの一つとして、低損失細径高密度光ケーブルの研究が紹介される。
 このケーブルでは、CO2削減のため、ケーブルの細径化やノンスロット化によるプラスチック(スロットロッド等を構成するポリエチレン)使用量の削減が図られる。これにより、CO2排出量をトータル35%削減するという。
 このケーブルの光ファイバ特性を最大化するため、ノンスロット構造を実現する間欠テープのケーブル内実装密度制御技術などの開発が進められている。青柳所長は「ケーブルを細径化すると、内部でどのようにファイバを束ねるかが損失に影響するので、損失を増やさない構造の研究も含めて取り組んでいる。これらの技術で低損失化を実現することで、光増幅装置や再生中継装置の設置数を減らし、長距離大容量伝送路のコストを削減する」と説明している。

インタビュー目次

1:ミッションや研究開発の方向性、今年の展示
2:『サービスの高度化・多様化を支える技術』(前編)
3:『サービスの高度化・多様化を支える技術』(後編)
4:『運用を抜本的にスマート化する技術』『新ビジネス領域を開拓する技術』
5:技術交流サロン、ワークショップ

■出展企業ピックアップ目次■

関連記事

テレコム

無料 Ribbonが、IOWNグローバルフォーラムに参加

利益と能力の向上に焦点を当てる  Ribbon Communicationsは9月3日、次世代光ネットワークの発展に貢献するため、IOWNグローバルフォーラムに参加したことを発表した。  Ribbonは「今日の光ネットワ…

更新

続きを見る

モバイル/無線

無料 6G時代の多様なサービスの効率的実現をめざし、コンピューティングとモバイルネットワークの融合に成功【NTT、ドコモ】

ネットワークで計算処理を支援することで端末側の負担を軽減可能に  NTTとドコモは2月21日、NTTが6G/IOWN時代のコアネットワークとして提案する「インクルーシブコア」構想をもとに3GPP標準準拠のモバイルコアを拡…

更新

続きを見る