光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー:界 義久氏【NTTアドバンステクノロジ】
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■講演タイトル
FOE-5「近赤外光重合による光部品自動接続の現状と将来展望」
FOE-18「電気光学ポリマーを用いた光制御デバイス・テラヘルツデバイス」
■コースリーダー
NTTアドバンステクノロジ(株)界 義久
「近赤外光重合による光部品自動接続の現状と将来展望」と「電気光学ポリマーを用いた光制御デバイス・テラヘルツデバイス」は、どちらも素材からのアプローチで光通信のイノベーションを試みる内容だ。
光通信インフラの歴史は大容量化の歴史であり、それはモバイル、DC、DXと裾野が広がった先でも切り離すことはできない。大容量化と利用シーンの多様化という扇のような広がりで進む光通信の未来で懸念されるのは、素材だ。ガラス系をはじめ既存の主力素材は技術的に成熟しており、多種多様な大容量化への対応には別の素材による新しいアプローチでのイノベーションも期待されている。コースリーダーを務める界氏は「技術の革新というのは、今まで本流ではなかった研究成果がキッカケでゲームチェンジするようなケースが有る。それは光通信も同様なので、今回は素材の観点からそれを探るというコンセプトでセッションを組んだ」と話している。
両講演のテーマである光通信におけるポリマーの研究は、世界的に見てもM&Aを含めて投資が活発だ。界氏は「ポリマー系は高速化だけでなく低コスト化という流れでも将来性が期待されている。NTTグループもこの材料は非通信含めて長年にわたり研究をしており、現在、通信用途で改めて力を入れている状況だ。こうした素材の研究の面白さの一つとして、他分野の技術を応用しやすい点が有る。例えば、通信用途におけるポリマーはガラスと比べて微細加工に課題が有ったが、最近はARやVRのスマートグラスで加工技術が発達しているので、そうした技術が応用されることで完成度は上がる。今回ご講演いただくお二人は、通信用のポリマー研究において様々な角度からアプローチをしているので、既定路線ではないことに取り組み新しい目標をめざしているという点でも、興味深い講演になるのではないか」と話している。
FOE-5
近赤外光重合による光部品自動接続の現状と将来展望
宇都宮大学工学部 (兼担)オプティクス教育研究センター
教授
杉原 興浩
光通信や光インターコネクションの分野においては、光部品間を簡便かつ低損失に接続する実装技術が必要となっている。今回のテーマである近赤外光重合は、自己形成光導波路(LISW:Light-Induced Self-Written)をシリコンフォトニクスに適用する用途で注目されている技術だ。
LISWは光硬化性樹脂中に光ファイバなどから光を射出させ、ビームの伝搬方向に自動的に光導波路を作成する三次元光配線技術であり、対向して配置した軸ずれのある光素子間も自動的に接続することが可能だ。LISW光導波路は、光配線・受光素子の実装のパッシブアライメント化・低コスト化技術として注目されており、応用例が報告されている。
このLISWをシリコンフォトニクスに適用するためには、シリコン導波路内を伝搬可能な波長1,100nm以上の近赤外光で導波路を作成する必要が有るが、そのための光重合開始剤は存在しなかった。そうした状況に対し、今回登壇する杉原氏は、二光子吸収色素を用いた波長1,550nmで感光可能な樹脂組成物と、一光子吸収を用いた波長1,070nmのマイクロワット出力の連続波光源で感光可能な樹脂組成物を開発し、近赤外光でのLISW光導波路の作成を実現している。
杉原氏は宇都宮大学で有機非線形光学、ポリマー光導波路、高速車載光通信の研究に従事。また、2020年12月JST研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP) 代表として光部品自動接続の研究開発に従事している人物だ。講演では、研究の最前線に携わる杉原氏の視点から、近赤外光硬化性樹脂を用いた光通信デバイスやシリコンフォトニクスデバイスなどの自己形成接続の詳細、そして将来展望について紹介される。
FOE-18
電気光学ポリマーを用いた光制御デバイス・テラヘルツデバイス
(国研)情報通信研究機構未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター ナノ機能集積ICT研究室
室長
大友 明
次世代の超高速光通信実現のためには、高速動作可能で、かつ、シリコンフォトニクスとハイブリッド可能な材料が必要とされている。例えば、Beyond 5Gで不可欠となる100Gbaud超級の光変調器やテラヘルツ波は、5Gの10倍以上の超高速通信となる。講演のテーマである電気光学ポリマーは、従来の無機強誘電体材料に比べて大きな電気光学効果を示し、高速動作が可能であることと、シリコンフォトニクスとのハイブリッドにより小型化・集積化が可能であることから、次世代の超高速光通信を担う材料として期待されている。
登壇する大友氏は、NICTで有機分子フォトニクスやナノフォトニクスを光制御技術に応用する研究に携わっており、その以前はCREOL/UCF(米国)で有機電気光学ポリマーデバイスの研究に参加した実績もある人物だ。これまでの電気光学ポリマーの研究は長距離での応用を目的としたC-bandでの開発が行われてきたが、大友氏の最新の研究は光通信波長帯全域(1260nm〜1625nm)における性能に優れることから、光変調器、光スイッチ、光トランシーバ、光フェーズドアレイ、LiDAR、電界センサ、テラヘルツ発生・検出装置等の様々なデバイスでの利用拡大が期待されている。
講演では、こうした電気光学ポリマーを用いた超高速光制御デバイスや高効率テラヘルツデバイスについて紹介されるとともに、耐久性や可視光応用についても解説される。
(OPTCOM編集部)
特集目次
■「通信・放送Week 2021」開催直前 主催者インタビュー
■光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー
佐藤 良明氏【NTTエレクトロニクス】
FOE-K「そろそろ見えてきた!? DX時代におけるデータセンター戦略と光技術への期待」
FOE-K「半導体のイノベーションにより 潜在的なデジタルトランスフォーメーションを実現」
FOE-22「レーザ網膜投影技術:医療ヘルスケアからXR応用まで」
土井 健嗣氏【日本電気】
FOE-1「光トランシーバの最新市場動向」
FOE-10「次世代ハイパースケールデータセンタにおける400Gbps 超級光トランシーバの最新動向」
岡安 雅信氏【華為技術日本】
FOE-2「光トランシーバの最新標準化動向」
FOE-14「InP/Siヘテロ集積シリコンフォトニクスの最新技術動向」
和田 悟氏【フジクラ】
FOE-3「AIを活用した光ネットワークの運用高度化の最新技術動向」
FOE-17「マルチコア光ファイバの最新技術動向」
太田 寿彦氏【古河電気工業】
FOE-4「IOWN/Beyond 5Gに向けた光ケーブルへの期待と将来展望」
FOE-6「光電融合・IOWN時代を担う、光半導体デバイス技術を紐解く」
界 義久氏【NTTアドバンステクノロジ】
FOE-5「近赤外光重合による光部品自動接続の現状と将来展望」
FOE-18「電気光学ポリマーを用いた光制御デバイス・テラヘルツデバイス」
石部 和彦氏【アンリツ】
FOE-7「Beyond 5Gアクセスネットワークに向けた最新光デバイス技術」
FOE-16「シリコンフォトニクスによる光トランシーバの集積化・高密度化の進展」
谷口 和彦氏【富士通オプティカルコンポーネンツ】
FOE-8「次世代光ファイバの接続技術動向」
FOE-9「デジタルコヒーレント光トランシーバの最新技術動向」
FOE-15「光コパッケージと次世代シリコンフォトニクスの応用」
清水 克宏氏【三菱電機】
FOE-11「Beyond 5G/6Gを支える光・無線融合技術」
FOE-20「光伝送領域におけるネットワークオープン化動向」
笹岡 英資氏【住友電気工業】
FOE-12「通信用光ファイバとファイバ型デバイスの基礎」
FOE-21「フォトニック結晶スローライトによる小型・非機械式 LiDAR」
鈴木 貴智氏【キーサイト・テクノロジー】
FOE-13「光トランシーバ測定の基礎」
FOE-19「デジタルコヒーレント光伝送の最新技術動向」