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光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー【FOE-2】最先端 光材料技術の動向と今後の展望

INTERVIEW 有料

NTTアドバンステクノロジ(株)
取締役 グローバル事業本部 本部長
界 義久氏

コースリーダー:
NTTアドバンステクノロジ㈱ 界 義久
サブリーダー:
㈱フジクラ 和田 悟

 世界の光通信市場において、日本のプレイヤーは最先端の技術を牽引するトップグループに属していたが、最近では開発投資額も大きく多様なアプリケーションに対応可能な海外プレイヤーの方が研究開発面でもむしろ高い注目を集めているようだ。そのような現況で、本コースリーダーの界氏は「これまで二年連続でデータセンタのコースを担当していたが、今年は敢えて「材料」というベーシックな技術に着眼して、材料、デバイス、実装という流れで各セッションを配置した。新しい技術というものは、これまで注目されてこなかった分野から突然現れることも往々にしてある。今までの光通信の流れではなく今回の材料研究の分野から、新しい光通信分野に活かせる見方を聴講者の方々に発見してもらえればと思う」と述べている。今回の材料技術におけるコースは、世界でも注目を集める紛れもない最先端分野となる。今後、日本のプレイヤーが光通信分野において再び先導的な役割を果たす試金石を、もしかすると本コースで見出せるかもしれない。

●赤外光のエネルギー変換、信号変換が可能な無色透明材料の開発とデバイスへの応用
京都大学
化学研究所
准教授
坂本 雅典

 界氏は「坂本氏は、通信というよりガラス系の方で、赤外光を太陽電池やセンサ、デバイス等のエネルギーに変換する研究をされている。本セッションでは、不可視の赤外光による光誘起電子移動と透明性(可視域の透過率95%以上)を両立する材料を紹介して頂く。ガラスに色々な機能を付加する透明材料は、通信分野のみならず現在の世界的研究トレンドとなっている。ディスプレイやAR/VR等の映像処理系の研究と、ガラス材として建具にビルトインして太陽電池以外のエネルギー変換に用いる研究が二大潮流のようだ。坂本氏は後者の研究では日本でも有名な方で、デバイス寄りの研究内容ということでコースの口開けに用意させて頂いた」と語る。従来、太陽電池にはエネルギーの強い短波長(約1.1µm以下)の光が用いられているが、坂本氏が提唱するのは、これまであまり使われていない赤外光(0.7µmから1000µm)だ。赤外光自体のエネルギー変換効率は低くとも、「太陽光全体の約46%を占める赤外光からエネルギーを取り出せれば、トータルではそれなりのエネルギー量の確保が可能」というのが坂本氏の主張だ。近代建築の象徴である窓ガラスに応用できれば、まさしく世界のエネルギー事情を一変させる技術となるだろう。

●電気光学ポリマーを用いた超高速光変調器
九州大学
先導物質化学研究所
教授
横山 士吉

 「ポリマー変調器は昔から研究課題として存在していたが、ポリマー素材は温度変化に弱く、実産業面ではあまり脚光を浴びることはなかった。しかし、その弱点を克服してポリマーを用いた光インターコネクトの実現を目指すのが横山氏だ。横山氏は日産化学と共に自動車内で超高速伝送を実現するポリマー光変調器の開発に従事している。シリコン導波路とポリマーのハイブリッド変調器だ」と界氏は語る。横山氏の参加する研究プロジェクトでは、データセンタや8Kディスプレイ、自動車等に向けて材料開発やデバイス化に留まらず、製造法や導波路の接続技術、ディスプレイのコネクタまでトータルで開発しようとしている。従来、ポリマーは低電力消費かつ低コストという特長で以前より注目されてきた素材だ。しかも、大量生産に向いており、自動車向けの光インターコネクトは打ってつけの市場だろう。横山氏の研究では、車載利用で必須ともいえる105℃の熱安定性も確保しており、そのあたりの材料側のアプローチも聞けそうだ。

●シリコンフォトニクス向けポリマー光材料インターフェース
(国研)産業技術総合研究所
電子光基礎技術研究部門
光実装グループ
グループ長
天野 建

 「本セッションは、シリコンフォトニクス(SiP)周りの実装系で現在のトレンドのひとつとして取り上げた。現在、SiP向けのポリマー光導波路は米国の他シンガポールや中国等でも盛り上がっており、日本はやや先を越されている状況だ。ただ、要素技術の部分で、日本の研究開発は決して負けてはいない。ポリマーにしてもSiPにしても、過去から色々行ってきている。今回は、ポリマー材料を用いることで光の封じ込め構造から如何に効率的に光を取り出すかという点について紹介したい」と界氏は語っている。天野氏の研究グループでは、SiP技術を用いて集積した超小型光デバイスを接続する高精度の光実装技術と光パッケージング技術等の研究開発を行っている。特に、「NEDO 超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発事業」においては技術研究組合光電子電融合基盤技術研究所(PETRA)に参画し、光実装技術の中心を担っている。天野氏の講演は、日本におけるSiP最前線を堪能できるセッションとなるだろう。

(OPTCOM編集部 井上政基)

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光通信技術展 セミナー企画委員インタビュー
【FOE-K】光通信技術展 基調講演
【FOE-1】光トランシーバの最新技術動向
【FOE-2】最先端 光材料技術の動向と今後の展望
【FOE-3】Beyond 5G時代を目指し、光部品・集積技術を紐解く!
【FOE-4】次世代高速光通信技術
【FOE-5】巨大化するデータセンタを支える光技術
【FOE-6】【基礎講座】初日に学ぶ 光ファイバ・光デバイス、光測定の基礎
【FOE-7】5G/Beyond5Gに向けた光通信技術の最新動向と取組み
【FOE-8】自動運転を支える光応用技術
【FOE-9】 5G/Beyond5Gとそのエッジコンピューティングに関する最新市場動向
【FOE-10】 世界をつなぐ最先端ネットワーク 海底ケーブルの最新動向

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