次回の「通信・放送Week」は、「Japan IT Week 秋」「AI ・人工知能EXPO 秋」と同時開催
INTERVIEW 有料 7月に開催された「通信・放送Week2019」は、「光通信技術展」「映像伝送EXPO」、「4K・8K映像技術展(旧:4K・8K機材展)」、「5G/IoT通信展(旧:次世代モバイル通信展)」の4つの専門展で構成された総合展示会。
光通信、無線通信、映像伝送、4K・8K機材という4分野の商材が一堂に会する同展には、346社が出展。来場者数は前年比で約9,000名増となる33,571名を記録した。単独開催である今回は純粋な集客力を示した形となり、その増員数からも大ブレイクしたと言って良い成果だろう。
今回のインタビューでは、今年の状況や来年に向けた取り組みについて、通信・放送Week事務局長の土屋勝利氏、同事務局の近藤直暉氏から話を聞いた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
OPTCOM:通信と放送の架け橋となるイベントとして定着してきましたね。
近藤氏:初日の開会式で実施したテープカットでは、通信と放送 両業界のトップの方々にご登壇いただきました。国内の通信キャリア、システム機器ベンダのご参加、またエリクソン、ノキア、シスコといった海外企業からのご参加、そして通信と放送の融合ということでNetflix、DAZN、NTTぷららといった動画配信事業者にもご参加いただいています。
展示会場やセミナーのキーワードとしても、IP伝送、ローカル5G、8K映像というものが大きくなっています。光通信、無線通信、映像伝送と、元々は畑の違う技術が融合していく流れの中で、通信・放送Weekの特長でもある商談展という性質が、それぞれの技術を橋渡しするような技術商談の場として機能しています。展示会場での商談金額は、三日間で229億円となりました。
セミナーは今回68本を実施し、合計で14,244名の方に聴講いただきました。総務省からは総合通信基盤局の谷脇局長や情報流通行政局の吉田局長といった通信業界、放送業界のトップの方々、そしてドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルと全てのキャリアにご講演いただきました。特に、楽天モバイルのアミン・タレック氏は、そのご講演だけで1,736名の聴講者数を記録しました。
――:来場者数が一気に増えましたね。
近藤氏:昨年からモバイル5G・IoTの専門展と4K8K映像の専門展が加わったことで、来場者層が一気に広がりました。そこで今年は招待券の発送件数を昨年比で3.5倍に増やしましたので、こうした認知を広める活動が来場者増加に繋がったと考えています。光、無線、映像伝送、映像技術という個々の展示会は他でも開催されていますが、通信分野と放送分野を網羅するというコンセプトは面白いというご意見も多く頂いています。
加えてもう一つはセミナーです。ローカル5G、IP伝送といった旬のキーワードを取り上げ、全モバイルキャリアにご講演いただくなど、テーマと講師に拘ったことで、セミナーの聴講者数も非常に大きな成果が出ました。市場の動向としても5Gの注目は高まっていますので、5GとIoTを扱う専門展の注目度が高かったのだと思います。
出展社からも来場者数の増加に対するご満足の声を頂いております。特に通信事業者や放送事業者、システムインテグレータの来場者も多かった点でもご満足いただけたようです。出展社のアンケート結果を見ると、例えば光計測器を展示した企業からは、通信事業者やモジュールメーカーを中心に500 名を集客し、商談がまとまれば数千万円の売り上げを見込んでいるというお声を頂いています。また、プライベートLTEソリューションを展示した企業からは、工場、建築、病院などのユーザ、SIerを中心に1.600名以上を集客し、150件以上の具体的な商談を実施したというコメントもありました。通信・放送Weekが、しっかりと売り上げに繋がる商談展としてご満足いただけたことが、こうしたアンケート結果からも分かります。
土屋事務局長:来場者数が8,000人増えた中でも二つの傾向があります。今お話ししたように通信や放送事業者の来場者数が増えた他、5GやIoT、LPWA、4K8K映像をどうやって使っていくかというユーザ層の増加もありました。こうした技術は通信分野、放送分野を問わず、セキュリティ、家庭、サイネージとあらゆる世界に広がっていきます。そのエンドユーザ層の来場が増えたというのは、光通信技術展を単体で開催していた頃には無かった傾向なので、通信・放送Weekという4つの専門展に拡大したことによる効果だと思います。
こうした来場者層の広がりは、光通信技術展に以前から出展されてきた企業にとって様々なビジネスに繋がっていくという予感が今回できましたし、NTTからはIOWNという次世代ネットワークの構想も出てきていますので、今後の光通信が楽しみだと感じています。
近藤氏:我々は海外からの来場者の誘致にも注力しています。例えば韓国からご来場いただいたLG U+の幹部の方からは、通信と放送の両方を見ることができる展示会は海外でもあまりないということで、3日間連続でご来場いただきました。また、映像関係の出展社からは海外から来場した通信事業者と放送事業者に会えたというご満足の声を頂きました。海外からの出展社、来場者に関しては、引き続き商談展にマッチした方々を数多く誘致していきます。
――:次回の取り組みについて教えてください。
土屋事務局長:2020年の通信・放送Weekは、10月に幕張メッセを全館使用して、ITの展示会である「Japan IT Week 秋」と、AIの展示会である「AI ・人工知能EXPO 秋」との3展同時開催となります。3展の合計で出展社数1,600社、来場者数14万人という非常に大規模なイベントとなる見込みです。「Japan IT Week 秋」はITをどのように使っていくかというソリューションの展示が特長であり、そうしたアプローチと、インフラ、部品、デバイス系が多い「通信・放送Week」からのアプローチがオーバーラップするイベントとなります。ですので、「通信・放送Week」を構成する専門展と「Japan IT Week秋」を構成する専門展の中で特に関係が深いものは、隣接する形になるよう配置します。こうしたコンセプトをご紹介したところ、通信インフラとITソリューションの懸け橋になるような企業からも新規の出展をご検討いただいている状況です。日本版のMobile World Congressが開催されるんだねという反響も頂いています。
また、「AI ・人工知能EXPO秋」は、毎年春に開催しているイベントのコンセプトのまま、秋にも開催します。AIを広く扱う専門展となりますが、同時開催の「通信・放送Week」や「Japan IT Week秋」とのシナジー効果を考えて出展する企業は多くなると思います。
通信、放送、IT、AIという、これから世の中を変えていく技術が一堂に会するということで、「通信・放送Week」に従来から出展されている企業も、展示のラインナップを増やすためにブースを拡大してのご出展が増えています。特に光通信技術展は来年の開催で20回目の節目となりますので、今回の反響が良かったということもあり、ブースを拡大する傾向にあります。我々は出展社にご満足いただけたかをアンケートで調査している中で、やはり分かりやすい指標として、出展して反響が大きかったから次回はブースを拡大するというお声を頂けることは喜ばしい限りです。次回の「通信・放送Week」も、ご期待いただければと思います。