NECと富士通、ポスト5Gに向けた基地局装置間の相互接続性検証技術の開発を、英国と米国のラボで開始
モバイル/無線 無料NEDOの委託事業を通じ、オープンな5G市場の活性化に貢献
NECと富士通は8月19日、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、ポスト5Gに対応した基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性を検証する技術の研究開発を、NECの英国ラボと富士通の米国ラボで開始することを決定しました。
8月から段階的に同技術を用いた検証環境を両社のラボに構築し、検証を開始する予定だ。同検証環境を活用することで、異なるベンダの装置間における相互接続性検証を大幅に効率化することができる。
NEC、富士通、NEDOは「本事業を通してO-RAN仕様に準拠した機器のグローバルでの普及と発展を後押しし、オープンな5G市場の活性化に貢献する」との考えを示している。
概要
5Gの商用サービスが各国で始まる中、さらに超低遅延や多数同時接続といった機能が強化された5G(ポスト5G)は工場や自動車など多様な産業での活用が見込まれており、日本の競争力の核となり得る技術と期待されている。
その一環で近年は基地局装置のオープン化の動きが活発化しており、O-RAN Alliance(Open Radio Access Network Alliance)で策定されているO-RANフロントホールインタフェース仕様により、様々な装置ベンダの基地局無線機(RU:Radio Unit)と制御部(CU/DU:Central Unit/Distributed Unit)を接続することが可能になりつつある。しかし、異なるベンダの装置間で相互接続性を迅速に検証するには、検証プロセスの確立、共通で使用できるツールの開発、検証環境の整備などが必要だ。
こうした中、NEDOは「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、NECと富士通に2020年度から2023年度までの予定で「基地局装置間の相互接続性等の評価・検証技術の研究開発」を委託している。これを受けNECと富士通は、異なるベンダの装置間での相互接続性、および当該接続が情報通信ネットワーク全体に与える影響を評価・検証するための環境構築と技術開発を進めている。
今回、NECは英国ロンドンNEC Europe内の、富士通は米国にあるグループ会社Fujitsu Network Communications内のO-RAN検証ラボで、基地局装置間の相互接続性を検証する技術の研究開発を開始することを決定した。
相互接続性検証技術の特徴と検証環境の構築
相互接続性検証の大幅な効率化
NECと富士通は同事業において、両社の長年にわたる基地局開発やO-RANフロントホールインタフェース仕様に対応した機器開発の経験、ノウハウを集結し、O-RANフロントホールでの様々なベンダの装置間相互接続性検証を行う技術を開発する。同技術には、FHA(FrontHaul Analyzer)、P-DU(Pseudo-DU)、テストシナリオ抽出ツール、テストパラメータ変更ツール、検証結果判定ツールなどの独自技術が含まれる。これらの技術を両社のラボの検証環境に導入することにより、両社以外を含む異なるベンダの装置間における相互接続性検証の大幅な効率化が可能となる。
商用環境に近い条件で検証可能
英国と米国のラボでは、O-RAN仕様に準拠して標準テストができる適合性試験系(Conformance Test System)やコアネットワークから端末までの接続検証が可能なエンドツーエンド試験系(E2E Test System)を実施可能だ。さらに今回開発する各技術を相互接続性検証に組み込むことで、システム全体の正常性検証や性能検証などを、各国地域・事業者の商用環境に近い条件で効率的に実施可能となる(図1、図2)。
今後の予定
NECと富士通は本年8月から段階的に本技術を用いた検証環境を両社のラボに構築し、検証を開始する予定だ。両社は「同ラボにおいて、各国・地域のキャリア、装置ベンダ、政府などと連携し、基地局装置間の相互接続性検証を大幅に効率化することで、装置導入までのリードタイム短縮をめざす。またNEDOと協力し、同事業を通してO-RAN仕様に準拠した機器のグローバルでの普及と発展を後押しし、オープンな5G市場の活性化に貢献する」との方針を示している。