光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

TOTOベトナムの工場における製造現場をIoTで革新

DX/IoT/AI 無料

衛生陶器の普及を加速させ、ベトナムの衛生事情の改善を目指す

 富士通、富士通システムズ・イーストは7月20日、TOTOのベトナムの拠点であるTOTOベトナムの工場で生産する衛生陶器の生産効率を向上させるため、原料と紐づけて全工程の生産状況や品質情報を可視化するシステムを開発し、TOTOベトナムの第一工場において7月1日に稼働したと発表した。
 このシステムは、素材調合や収縮率の調整など繊細な作業が必要とされる衛生陶器の製造現場を革新するもので、ICタグなどを活用して仕掛品の進捗・品質情報だけでなく、作業手順など熟練工のノウハウを含むあらゆる情報を収集し、デジタル化する。また、作業員が検査情報を入力するタブレットは、わかりやすい図面表示やタッチ入力機能など操作性を重視した独自開発のアプリケーションを搭載している。モノや人が生み出した情報を効果的に活用するIoT(Internet of Things)を導入したことで、データ化が難しかった熟練工のノウハウの可視化や統計的なデータの活用による分析が可能になり、高品質な製品の安定的な生産につなげていくことができる。

背景

 ベトナムなどの新興国ではトイレ自体の不足や、衛生上の問題など多くの課題を抱えている。急速な経済成長を遂げているベトナムでは、国民の生活が集中する都市部からインフラも順次整備されつつあるものの、下水道やトイレ事情は、約4割の家庭が簡易便器で、水洗便器の全国普及率は2割にも至っていない現実がある。雨期には簡易便器などから流れ出した汚水が感染症や下痢を蔓延させ、免疫力の弱い子供や高齢者を危機にさらしている。
 2017年に創立100周年を迎えるTOTOは、最先端の節水技術、清潔を保つ技術を駆使した同社の製品供給により各地域での健康で文化的な生活の向上を目指しており、水洗便器をはじめとする衛生陶器の製造を強化、水まわり文化の発展に貢献したいと考えているという。その一環として、アジア・オセアニア地域をグローバルサプライチェーンの中心に据え、グローバルでの安定的な供給体制を確立しています。日本、米州、中国、アジア・オセアニア地域にある29の生産関連会社に加え、2018年3月にベトナムにおいて3つ目となる工場を稼働する予定だとしている。
 大型で複雑な形状の衛生陶器の製造をより安定的に行うためには、後工程での変形や収縮を考慮した成形作業、高温かつ繊細な管理が必要なトンネル窯の温度管理、知識と経験をもつ認定検査員による全数検査など、熟練の技と高度な技術が求められるため、これらのノウハウの可視化および統計的な分析が不可欠となる。

概要と特長

 今回、ハノイのタンロン工業団地にあるTOTOベトナムの工場で稼働したシステムは、高品質な衛生陶器の安定した生産を実現するために、全製造工程の生産状況と品質情報の収集および活用が行える。これは、富士通システムズ・イーストがこれまで様々なユーザの現場課題の解決を支援する中で培ってきたノウハウによって、構築・運用することが可能になったものだ。
 主な特徴は次の通り。

ICタグやバーコードによる仕掛品の情報収集とデータ活用による現場作業の効率化

 仕掛品や各種設備に貼られたICタグやバーコードを通じて、原材料の調合から検査に至るまでの全工程の品質や進捗情報だけでなく、原料調合時の湿度や温度、衛生陶器に吹き付ける釉薬の種類など、あらゆる実績情報を収集することで、製品一つ一つのトレーサビリティをリアルタイムに把握することが可能となった。これにより、製品出荷後も製造時の品質情報を把握できることで、問い合わせにも迅速に対応できる。

製造工程におけるトレーサビリティイメージ

製造工程におけるトレーサビリティイメージ

衛生陶器特有の形状を考慮した品質検査データの管理

 TOTOでは、水まわりに設置される衛生陶器は、ミリ単位の歪みや傷も許容されないため、乾燥・焼成の工程で陶器が縮むことを考慮して緻密に設計され、多面的に細部に渡り厳しい検査を行っている。この検査結果を漏れなく詳細まで記録できるように、水洗便器の前後左右上下の6方向の図面をタブレット上に表示させ、不具合の位置や状態を瞬時に登録、確認できるようにした。これらのタブレットを通じてサーバに蓄積されたデータの活用により、不具合が発生しやすい部位の傾向や起因する設備、環境の要素をデジタルに把握することができ、さらなる「製造プロセスの改善」につなげることが可能となる。

データの利活用によるノウハウの伝承と人材育成

 TOTOベトナムではこのシステムの導入により、熟練工の作業手順や検査結果、指摘内容などのこれまで可視化されていなかった情報を共有でき、作業者同士の意見交換やコミュニケーションが活性化されている。ベトナム現地社員自らが現場改善を行う積極的な活動を促し、人材育成につなげていくことを目指している。

現場環境にあったユーザーエクスペリエンスの実現

タブレットで検査情報を入力する様子

タブレットで検査情報を入力する様子

 これまで作業員が紙に記録していた生産実績や製品の検査結果を、タブレットやハンディターミナルで簡単に入力できるシステムを構築した。タブレットの入力画面は実際に現場の作業員に操作してもらい、見やすさや操作性を確認し、文字の大きさから入力項目の配置、キーボードのサイズに至るまでTOTOと共同で作り上げたという。

今後の取り組み

 富士通と富士通システムズ・イーストは「TOTOベトナムのさらなる現場改善と生産性向上の取り組みによる水洗便器の普及促進を支援し、ベトナムの人々の豊かで健康な暮らしの実現に貢献していく。また、今回のシステム導入で得たノウハウを生かし、製造業のお客様向けに新しいソリューションを提供することで、お客様ビジネスの革新を支援していく」としている。