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NTT が、1本の光ファイバで4倍の大容量化を実現する、マルチコア光ファイバ技術の建設・運用・保守技術をラインナップ化

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世界初の自動回転調心接続や既存光ファイバとの分岐/接続技術を確立

 NTTは11月15日、1本の通信用光ファイバで現在の光ファイバの4倍の大容量化を可能とする、4コアのマルチコア光ファイバ(MCF)光伝送路の商用導入に不可欠な、オンサイトでの建設・保守・運用技術をラインナップ化したと発表した。

 同社は「本成果により、光ファイバ心線数の需要が指数関数的に増大し続けているデータセンタ間光通信や、光ケーブル内の光ファイバ実装空間に制約を有する海底光伝送区間において、4コアMCF光伝送路の実用化が加速すると期待できる」としている。

 本研究成果の一部は、11月25日~29日に開催されるNTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRALにて展示予定だという。

背景
 NTTは、Well-beingな世界の実現をめざすIOWN構想の大容量光伝送基盤を実現する要素技術の1つであるMCFの研究開発を進めており、これまでに現在の光ファイバと同じ細さのガラスの中に、4個の光の通り道を多重した4コアMCFの研究開発を推進している(図1)。これまで、実際に4コアMCF光伝送路を商用導入する段階の課題として、オンサイトで利用できる建設・保守・運用技術の確立があった。例えば、MCFは光ファイバ断面内の中心以外の場所にコアが存在するため、MCF同士を接続するためには回転方向の調心を行い対応する4個のコアの位置を揃えることが必須となる。また、MCF光伝送路の陸上光伝送システムへの導入初期では、既存の1個のコアを有する光ファイバとの相互接続技術が不可欠だ。
 さらに、不慮の事故や故障に迅速に対応するためには、これらの相互接続技術がオンサイトで利用可能なレベルで確立されていることが求められる。

図1:IOWNがめざす大容量化の実現に向けた光ファイバ技術のロードマップ

4コア光伝送路の建設・保守・運用を実現する要素技術
 今回、4コアMCFの設計、光ケーブルへの実装に加え、オンサイトでの建設・保守・運用を可能とする接続・分岐技術、並びにそれらを用いたケーブル接続・分岐技術、局内のMCF収容・配線技術をラインナップ化した(図2)。

図2:4コア光伝送路の建設・保守・運用に必要な要素技術

 4コア光伝送路の中核技術である、現在の光ファイバと同じ細さのまま4個のコアを多重したMCF技術、並びに直径約20mmの中に最大8,000コア(4コアMCF2,000心)までを実装可能とする細径高密度光ケーブル技術に加え、MCFの接続・分岐に関する2つの要素技術を確立した。
 側面画像調心技術:対向する2本の4コアMCFの側面画像を観測・解析することで4つのコアの位置を特定し、自動で対向するコアの位置を回転調心する。本技術を汎用的な光ファイバ融着接続器に組み込むことにより、実験環境や工場だけでなく、オンサイトでMCF同士の恒久接続を実現することができる。

 FIFO(Fan-in-Fan-out)デバイス技術:NTTイノベーティブデバイス社との連携により、石英系PLC導波路を積層した独自の2層構造を用い、1本の4コアMCFと1個のコアを有する既存光ファイバ4本との合分岐を実現した。石英系PLC導波路は既存の光伝送システムにおける光パワー分岐などにも広く利用されており、高信頼で量産性にも優れる特長を有している。
 さらに、上述の接続・合分岐技術を活用し、地下管路内および局内における光伝送路の要素技術を確立した。

1.MCFケーブル接続・分岐技術(地下クロージャ):MCFを実装した細径高密度光ケーブル同士、もしくは既存の光ファイバ(SMF: Single Mode Fiber)ケーブルとの、地下設備内における接続・分岐を実現する。4コアMCFは既存光ファイバと同じ細さのため、MCFケーブルの外径も既存光ファイバケーブルと統一でき、地下クロージャのMCF化においても既存の地下クロージャの基本構造を効率的に流用することができる。

2.局内MCF収容・配線技術(局内接続架):
MCFケーブルを局内設備で終端し、上述のFIFOデバイスを介して既存光ファイバとの相互接続を実現する。また、接続架の収容単位をMCFとしFIFOデバイスをブラックボックス化することで、収容面積を4分の1以下に集積化することもできる。

成果の適用領域
 本成果は使用光ファイバ心線数が指数関数的に増大し続けているデータセンタネットワーク、さらには実装可能な光ファイバ心線数に空間制限を有する海底光ケーブルへの適用が期待される(図3)。データセンタネットワークでは数千本の光ファイバを実装した光ケーブルに対する需要が顕在化していますが、実装光ファイバ数の増大とともに光ケーブルの直径も拡大傾向にあり、例えば、地下管路では敷設可能なケーブル直径の上限に迫りつつある。また、海底光ケーブルに実装可能な光ファイバの本数は数十本が限界で、最新の光海底システムでは既に収容可能な光ファイバ心線数の上限に達している。このような領域に4コアMCFを適用することで、陸上システムの心線需要、並びに海底システムの大容量化需要に柔軟に対応することが可能になる。

図3:4コア光伝送路の実用展開が期待される領域の例

今後の展開
 今回の研究成果は4コア光伝送路のオンサイトでの建設・保守・運用を可能とするものであり、4コア光伝送路の実用展開を大きく加速すると期待される。NTTは「今後、2027年頃を目途とした4コア光伝送路技術の実用展開および国際標準化の推進をめざす」としている。