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NICT、NEC、東北大学、トヨタ自動車東日本が、東北の実工場におけるSRF無線プラットフォームVer. 2の実証実験を開始

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東北地区で初めてキャリア網とローカル5Gのハイブリッドネットワークを活用した移動体との無線通信安定化を検証

 NICT、NEC、東北大学、トヨタ自動車東日本は6月17日、東北地区で初めてキャリア網とローカル5Gのハイブリッドネットワークを活用した移動体との無線通信安定化を検証する実験を開始したと発表した。

 NICT、NECおよび東北大学は、製造分野における5G高度化技術の研究開発を推進しており、その中でSmart Resource Flow(SRF)無線プラットフォーム技術仕様書Ver. 2に対応した無線通信システムを開発した。本システムにより、サービスエリアが異なるキャリア網とローカル5Gによるハイブリッドネットワークでの無線通信品質の安定化が可能となった。
 また、本システムの有効性を実際の製造現場で確認すべく、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場にて、図1のような環境で、東北地区で初めてキャリア網(LTE/5G)とローカル5Gの切り替えによる移動体との無線通信品質の安定化を検証するための実験を開始した。本実験に向けて、NECは6月17日に東北総合通信局よりローカル5Gの実験試験局の免許を取得した。

背景

 製造現場では、生産効率を向上するため無線通信を用いた製造向けアプリケーションの導入が年々進んでおり、今後もさらに増加するものと予想される。無線通信を用いた製造向けアプリケーションの例としては、自動搬送車による部品搬送の自動化やトルクレンチ等の工具の情報の収集・管理などがある。一方で、無線通信は干渉や遮蔽の影響により通信品質が不安定になり、遅延やスループットが悪化することがある。その結果、自動搬送車が安全のために停止したり、工具の情報が取れず製造ラインが停止したりと、却って生産効率が悪化してしまうことがある。
 このような事態を避けるため、NICTおよびNECは、2015年から、製造現場の無線化を推進するFlexible Factory Projectの活動を実施しており、本活動を通して得られた知見を活かし、異種無線通信の協調制御により無線通信を安定化させるSRF無線プラットフォームの技術開発を推進してきた。また、2017年7月に、SRF無線プラットフォームに高い関心を持つ企業とともにフレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)を設立し、技術仕様の標準化を推進してきた。そして、2023年1月に、SRF無線プラットフォームの技術仕様書Ver.2を策定し、公開した。

SRF無線プラットフォーム技術仕様書Ver.2に対応した無線通信システム

 SRF無線プラットフォーム技術仕様書Ver.2は、これまでのVer.1が対象としていた無線LANに加えて、LTEや5G回線も用いたハイブリッドネットワークの利用が可能になった。これにより、広いエリアに無線通信を提供できるLTEやキャリア5Gと、工場の建屋のように金属で囲われて外部からの電波が届きにくいところに局所的に無線通信を提供できるローカル5Gを組み合わせることで、無線通信品質をより安定化させることが可能となった。NICTおよびNECは、このSRF無線プラットフォーム技術仕様書Ver.2に対応した無線通信システムを開発した。

図1:開発されたSRF無線プラットフォームを用いた実験システム

今後の展望

 今後、NICT、NEC、東北大学およびトヨタ自動車東日本は、今回構築した実験環境を用いてキャリア網とローカル5Gの切り替えによる移動体との無線通信評価を行い、無線通信品質を安定化することでハイブリッドネットワークを用いて無線通信を安定供給できることの実証をめざす。また、本実証実験の結果を活かし、SRF無線プラットフォームを工場における安定した無線通信を利活用できるプラットフォームとして実用化をめざし、技術開発および標準仕様の策定と認証制度の整備を推進していく。

各機関の役割分担

NICT:実験計画立案、実験実施、データ分析
NEC:ローカル5Gの実験試験局の免許取得、実験システム構築、実験実施
東北大学:実験における無線通信関連の技術支援
トヨタ自動車東日本:実験環境整備および実験実施支援

 本研究開発の一部は、総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595の委託により実施しているという。