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NECとNTTが、世界初、12コア光ファイバによる7,000km以上の長距離伝送実験に成功

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大洋横断級光海底ケーブルの大容量化に向けて前進

 NECとNTTは3月21日、世界で初めて、標準的な外径(0.125mm)の光ファイバに光信号の伝送路を12本設けた12コア結合型マルチコアファイバを用いて、大洋横断級7,280kmの伝送実験に成功したと発表した。
 両社は「本成果は、将来の光海底ケーブルをはじめとする大容量光ネットワークの実現に貢献する、次世代の伝送基盤技術として期待される」としている。

図1:シングルコアファイバ(左)と12コア結合型マルチコアファイバ(右)の断面

背景

 グローバルにおける5Gの普及や分散するデータセンタ間の通信増などにともない、2018年から2022年における国際インターネット通信量は年平均成長率30%で増加し、この傾向は今後も続くと予想されている。旺盛な通信需要に対応するため、光海底ケーブルの増設に加え、光海底ケーブルシステム当たりの伝送容量を増加するニーズが高まっている。
 既存の光海底ケーブルには、1本のファイバ内にコア(伝送路)を1本設けたシングルコアファイバが用いられている(図1左)。これに対し、ファイバを標準的な外径から変えずに複数のコアを設けて通信容量を増やすマルチコアファイバ(図1右)を用いることで、ケーブルの大容量化をめざす研究開発が世界中で進められており、NECは現在、光伝送路を2本設けた2コアのマルチコアファイバを用いた長距離光海底ケーブルシステムの敷設プロジェクトを手掛けている。

研究の成果

 標準的な外径の光ファイバにコアを増やしていくと、コアから漏れた光信号が隣接するコアの光信号に干渉し混信することで、お互いの通信品質が劣化するクロストークが発生する。特に長距離の伝送では、クロストークの深刻化に加え、光信号間の遅延や損失の不均一性などが原因で、送信した信号を正確に受信することが困難になる。
 これらの課題に対して、NECとNTTが開発した技術は以下のとおり。

図2:今回の成果の構成図と開発した技術

MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術により受信信号の復調を実現したアルゴリズムの開発(NEC)
 混信した多数の無線信号をMIMO技術により分離する処理は一般的に用いられているが、既存の光通信で実用化されているMIMO信号処理の規模は、2つの多重光信号(2偏波多重信号)までだ。
 5G無線通信と比べて2桁以上高速な光通信にMIMOを導入し信号を分離する場合、処理の高速化が求められる。また、多数のコアを有するマルチコアファイバでは、光信号がさらに多重化されるため、より大規模な信号処理が必要となる。さらに、長距離伝送ではクロストークがランダムに発生するという課題もあり、対応が必要だ。
 今回、NECは長距離伝送に対応したアルゴリズムを開発し、24×24 MIMO(12コア×2偏波)に適用して、高速な受信信号を正確に分離・復調することが可能になった。

12コア結合型マルチコアファイバ光伝送路の開発(NTT)
 マルチコアファイバを用いた長距離の光通信において、多重光信号間の伝搬に遅延が発生し不均一性が生じると、受信時のMIMO信号処理に必要な回路リソースが増え、実装や実現が困難になる。また、伝搬損失の不均一性が生じると、伝送可能な距離が大きく制限される。今回、NTTは信号の遅延と損失の不均一性の影響を低減可能な結合型マルチコアファイバと入出力デバイス(接続ファンイン ファンアウト)の設計技術、および長距離用光伝送路設計評価技術を開発した。
 両社はこれらの技術を組み合わせ、大洋横断級の光海底ケーブルを想定した7,280kmの長距離伝送実験を行い、12空間多重光信号のオフラインでの正確な復調に世界で初めて成功した(図3)。

図3:標準外径の空間多重ファイバを用いた長距離光伝送の動向と、本成果の位置づけ

今後の展開

 今回の成果の一部は、NICTの委託研究により得られたものだという。
 NECとNTTは、今回の成果をOFC 2024のTechnical Conference(3月24日~28日:サンディエゴ)で高スコア論文として発表する。

 NECとNTTは「今後、本技術の研究開発をさらに進め、2030年代のIOWN構想・Beyond 5G/6G時代の大容量光伝送基盤の実現に貢献する、長距離大容量光海底ケーブルシステムならびに陸上コアネットワークシステムとしての実用化をめざす」との考えを示している。

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