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アクセルスペースが、低軌道衛星間光通信ネットワークシステムの技術開発・実証プロジェクトに参画

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 アクセルスペースは3月28日、NEDOが公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム」における「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」に採択されたと発表した。(情報提供:PR TIMES)

 同開発・実証プロジェクトは、Space Compass(NTTとスカパーJSATの合弁会社)、NICT、NECとともに取り組むものだという。

研究開発の全体概要図: ※提案資料より抜粋。アクセルスペース担当箇所は緑点線囲みの部分(他社との分担項目も含む)。

研究の社会的背景
 2030年頃に実装が見込まれている次世代の情報通信インフラ「Beyond 5G(6G)」では、地上の通信インフラだけでなく、非地上での通信ネットワークシステム(NTN:Non-Terrestrial Network)を利用することで、さらなる通信エリア拡大が検討されている。また、地球低軌道(LEO)で衛星間光通信を行うことによるネットワーク構築は次世代のキーテクノロジーとして注目されている。
 NTNは、単に地上の通信インフラ未整備エリアを補完するだけでなく、従来通信サービスが十分に提供されていなかった空間(山間部、船舶・航空機、無電化地域)や、自然災害発生時といった地上通信インフラが一時的に使えない場合に役立つものとしても注目されており、アクセルスペースは「非地上の通信インフラが、より広域かつ堅牢な通信ネットワークを提供し、より安心、安全な社会の実現につなげることができると考えられている」と説明している。

 今回の「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」プロジェクトでは、大容量・低遅延でのデータ通信・データ処理のサービスの提供を可能にする技術の研究開発に取り組み、2029年までに日本近傍で衛星光通信ネットワークシステムとしての機能・性能実証を行う。このうち、アクセルスペースはLEO光通信衛星コンステレーションを構築する小型の光通信衛星およびネットワーク統合制御システム(ネットワーク運用制御システム、衛星自動・自律運用システム)の開発をおこなうと共に、システム実証のための光通信ターミナル搭載の地球観測衛星や電波(RF)地上局の構築を担当する。同社は「本プロジェクトの技術開発により、衛星間光通信を利用した軌道上ネットワーク網が構築され、海上・僻地・宇宙空間などどこでも通信可能な社会の実現に寄与する」との考えを示している。

アクセルスペースにとってのプロジェクト参画の意義
 アクセルスペースは2008年の創業以来9機の小型人工衛星の開発・製造・運用に取り組み、2015年より日本初の小型地球観測衛星コンステレーションによる地球観測プラットフォーム事業「AxelGlobe」を、2022年に日本初の小型衛星量産体制を活用し、顧客が宇宙空間で行いたいミッションを搭載する衛星システムをワンストップで提供する事業「AxelLiner」を立ち上げた。
 同社は「光中継コンステレーションを利用した衛星に対するデータ送受信のリアルタイム化はゲームチェンジを引き起こす次世代キー技術として注目されており、弊社事業の提供価値にも大きな意味を持つ」としている。

 アクセルスペースは、これらを実現させる光通信端末が小型人工衛星の搭載必須コンポーネントになると見越し、2021年よりNICTが実施している「Beyond 5G 次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」に採択され、小型衛星による電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発活動を進めてきた。
同社は「AxelGlobe事業において自社地球観測衛星コンステレーションを運用し、すでにサービス提供を開始しているが、リアルタイムのデータ送受信が可能となることにより、顧客に新しい価値を届けることができるようになる。本プロジェクトの成果を通じ、AxelGlobe事業の成長および競争力の向上をめざす」としている。

 Space Compassの代表取締役 Co-CEOである松藤 浩一郎氏と堀 茂弘氏は「安全性と経済性を兼ね備え、テクノロジーにおいても世界に引けを取らない光衛星通信ネットワークの構築は当社のビジョンでもあり、わが国における喫緊の課題でもある。このような重要プロジェクトに代表企業として参画できることを光栄に思っている」とコメントを出している。

 アクセルスペースの代表取締役CEOである中村 友哉氏は「弊社は小型衛星技術のパイオニアとして、創業以来9機の衛星の設計開発・軌道上運用という成果を残してきた。衛星間光通信は次世代のキー技術であり、これを活用した今回の軌道上通信ネットワーク構築プロジェクトにおいて重要な役割を果たせることを誇りに思っている。本プロジェクトを通じ、世界をリードする小型衛星プレイヤーとして事業成長および社会貢献をめざす」とコメントを出している。

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