次世代スマートメーター/IoT向け国際無線通信規格Wi-SUN FANを用いた無線機1,000台の自律通信試験に成功
DX/IoT/AI 無料99.9%以上の通信成功率を達成し、高信頼なマルチホップネットワークを確立
京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下、京都大学)と、日新システムズは2月16日、Wi-SUN FANを用いた無線機の大規模高密度環境における通信試験として、次世代スマートメーターの実運用で想定される1ネットワークあたり最大1,000台によるマルチホップを利用した自律通信試験を行うことに成功したと発表した。(情報提供:共同通信PRワイヤー)
今回の成果により数台~1,000台までのあらゆるシステムにWi-SUN FANが適用可能となる。また、次世代スマートメーターのような大規模な環境だけではなく、移動体との通信や、より多種、大容量のデータ通信が必要とされるスマートシティのような用途への適用が見込まれる。
ポイントは次の三点。
- 京都大学と日新システムズが共同開発したWi-SUN FANプロトコルスタックを搭載した無線機を1,000台用いて自律的なネットワーク構築に成功
- 次世代スマートメーターのデータ到達率要件を満たすデータ通信の試験に成功
- 1,000台での通信を実現するために通信制御パラメータの最適化を実施
背景
スマートシティやスマートグリッドなど、屋外での通信ネットワークを実現するためには高品質でかつ建物等による遮蔽に対する耐障害性に優れた堅牢な無線通信ネットワークが必要となる。
Wi-SUN FANはこれらの要求を満たす国際無線通信規格「Wi-SUN」の規格の一つで、電気・ガス・水道のメータリングのほか、スマートシティ、スマートグリッド、高度道路交通システム等のセンサ、モニター等を用いた各種インフラ、アプリケーションにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されている。
京都大学と日新システムズは、2019年1月に世界で初めてWi-SUN FAN 搭載の認証済み無線機の開発を行った。さらに、2019年10月から総務省に採択された電波COE研究開発プログラムの一環として大規模高密度ネットワーク構築の研究を開始し、2021年11月にはマルチホップ接続を駆使し多数の無線機からの情報を一つの基幹無線機に集約し収集する試験機を用いて500台の機器を接続するための各種要素技術の研究開発を行い、スマートメーターの実運用を想定した通信量のデータを各無線機から送信し、500台環境においても高品質な通信を実現させることに成功した。
しかし、2023年度以降導入が検討されている次世代スマートメーターの運用を想定すると、最大1,000台の無線を1つの自律ネットワークで収容することが求められるため、1,000台のネットワーク構成でも高品質な通信が実現できるよう、Wi-SUN FANのさらなる研究・開発が必要だった。
今回の成果
無線機1,000台の環境で高品質な通信を実現するため、下記の2点について研究開発された。
- Wi-SUN FANの通信制御に関する各種パラメータの最適値に関する研究
- 1,000台の無線機を収容するシングルボードコンピュータ対応無線機へのWi-SUN FANプロトコルスタックの移植
京都大学と日新システムズは「この研究開発の成果を搭載したWi-SUN FAN無線機1,000台を用いたマルチホップ メッシュネットワークの構築および維持、さらに実運用で想定される通信量によるデータ通信を実現した。(図1,2,3,4)また、次世代スマートメーター要件を満たす、累積で99.9%以上のデータ通信成功率を得ることに成功した」と説明している。
今後の展開
京都大学と日新システムズは「Wi-SUN FAN搭載無線機1,000台を用いた大規模実証を行うことで、Wi-SUN FANによるマルチホップを利用した自律ネットワークが次世代スマートメーターやスマートシティで要求される規模のネットワーク構成で実用が可能な性能をもっていることが確認でた。この成果により、最大1,000台のネットワークが複数存在する数千万台規模のシステムを構成することが可能となり、様々な用途での活用が期待できる」と説明している。
今回の大規模実証で用いた京都大学と日新システムズが共同開発を行ったプロトコルスタックでは、Wi-SUN FANの通信制御を司る様々なパラメータの値を容易に変更することが出来るため、大規模な環境だけではなく、移動体との通信や、より大容量のデータ通信が必要とされるような用途に合わせて、異なるチューニングを行うことで、あらたな利用シーンに適した通信パラメータを指定することが可能だ。
京都大学と日新システムズは「さらに、今後は今回の成果で確立した実存する無線機による試験のデータとシミュレーション結果のデータとの整合を行うことで、より大規模な通信ネットワークの構築、維持、安定した通信を行うための条件などの調査を進めていく」との考えを示している。