ノキアが、KDDIの全国の携帯電話基地局における品質監視・改善にAIソリューションを導入
モバイル/無線 無料ノキアは12月8日、KDDIが携帯電話基地局における品質の監視・改善と運用コストの削減を目的として、ノキアのAVA PDDR(Performance Degradation Detection and Resolution)ソリューションを全国の携帯電話基地局の監視に展開したことを発表した。
このPDDRソリューションは、全国の4G、5G合わせて約20万局以上にのぼるKDDIの基地局を24時間自動監視し、品質が劣化した基地局を検出し、その劣化要因を特定する。また、改善すべき状態またはサイレント故障状態に陥った事象については、KDDI が独自に開発したシステムと連携し早期復旧を図る。
「サイレント故障」とは、アラーム発報されない品質異常であり、従来の閾値判定では検知することが非常に困難な事象だ。このサイレント故障は、直ちにサービス品質に影響を与えるものではないが、放置しておくとエンドユーザの体感品質に大きな影響を及ぼす可能性があるため、世界の通信事業者の課題の一つになっている。
本件のPDDRソリューションは、ノキア独自のAI 技術を用いて品質異常を検知し、その劣化要因を自動分類する。ノキアは、KDDIと協力してサイレント故障を含む数種類の根本要因を自動判定するモデルを作成し、それをAIに学習させることで、従来の専門家による判断と同等以上の精度を実現したという。
PDDRによってサイレント故障に分類された場合は、KDDIが独自に開発したシステムと連携し、自動的に要因を排除する。自動的に要因を排除し復旧した事象については、クローズドループにてAIの要因判定モデルに取り込み、要因分類とその復旧精度を自動的に向上させる。
KDDIは、この先進的なノキアAIソリューションを2019年に4Gネットワークに導入し、2021年には5G NSAネットワークへ導入し、世界的にも稀なAIによる高度な自動監視・要因分類システムの全国展開を完了した。今後、5G SAネットワークへの導入展開も計画されているという。
KDDI 執行役員常務の要海 敏和氏は「PDDRソリューションの導入により、基地局の品質劣化を自動検知出来るようになり、より高い品質でサービスをご提供出来るようになったと考えている。また、今回の導入を通じ、Nokia様とKDDIとの関係をより深められたことをうれしく思っている」とコメントを出している。
ノキアの日本法人である、ノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員社長のジョン・ランカ スターレノックス氏は「PDDRソリューションにより、KDDI様は基地局の異常やサイレント故障の検出と復旧を自動化し、運用コストの削減及びネットワーク品質の向上を実現することができる。この度、KDDI様が信頼して、弊社のPDDRソリューションを全国の基地局監視に展開し、最終的に運用していただけたことを光栄に思っている」とコメントを出している。
編集部備考
ネットワーク高度化のロードマップが見え、それを支えるインフラや提供サービスの運用が人の手だけでは処理しきれないことが認識されて以来、その運用にAIによる自動化を組み込んでいくことは、通信事業者の研究における必須の柱の一つとなっている。本件のNokia AVA AIは、そうしたAI活用の運用をサポートするために商用化されたソリューションの、2022年時点におけるベンチマークの一つと言ってよいだろう。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
世界各国の通信事業者をサポートしているNokiaの知見によるNokia AVA AIは、どのような評価を得ているのか。
例えば、ヨーロッパのTier-1サービスプロバイダであるPOST Luxembourgは、Nokia AVA AIのホームおよびアクセス分析を使用して、加入者に影響を与える前にネットワークの問題の97%をプロアクティブに特定して対処したという。
Nokiaの公式Webには、POST Luxembourg のシニア プロジェクト マネージャであるPatrick Rausch氏が「NokiaのAIドリブン アクセス解析ソリューションにより、問題に積極的に対処できるようになり、1回の介入で複数の問題を解決することで顧客からの問い合わせを減らし、トラブルシューティング プロセスの全体的な効率化を実現することができた」とのコメント(※当編集部による抄訳)を寄せている。
Nokiaは「AVA AIは、クラウド(プライベートまたはパブリック)を通じて提供可能な人工知能ソリューションを提供する」としている。このソリューションにより通信事業者は、ネットワーク運用とサービス保証の自動化、コスト削減、俊敏性の向上、加入者体験の向上を実現することができるだろう。