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IBMが、400量子ビット超えの量子プロセッサと次世代IBM Quantum System Twoを発表

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 IBMは11月9日(ニューヨーク)、IBM Quantum Summit 2022を開催し、量子ハードウェアおよびソフトウェアにおける新しい画期的進歩を発表し、量子コンピュータを中心としたスーパーコンピューティングに対するIBMの先駆的なビジョンについて概説。400量子ビット超えの量子プロセッサと次世代IBM Quantum System Twoを発表した。(本抄訳は11月10日に日本法人が発表)

 毎年開催されるIBM Quantum Summitは、ユーザ、パートナー、開発者らにIBMの幅広い量子エコシステムと、有用な量子コンピューティングを世界に提供するための継続的な進歩を紹介するイベントだ。

 IBMシニア・バイス・プレジデントでIBM Researchディレクターのダリオ・ギル(Darío Gil)氏は「新しい 433 量子ビットのIBM Quantum Ospreyシステムを利用することで、これまで解けなかった問題の解決のために量子コンピュータが使われるようになる未来に一歩近づく。IBMは世界中のパートナーや顧客と協力し、現代における最大の課題に取り組むため、ハードウェア、ソフトウェア、古典的なコンピュータとの統合といった技術を駆使して、量子技術のスケールアップと進化を継続的に行っている。この研究は、来るべき量子コンピュータを中心としたスーパーコンピューティングの時代の基礎となることを証明するものだ」とコメントを出している。

開発ロードマップ

IBM Quantum Summit 2022で発表された、新たな研究開発の成果

IBM Ospreyプロセッサ- IBMの新しい433量子ビットプロセッサ
 IBM Ospreyは、IBMの量子プロセッサの中で最大の量子ビット数を持ち、2021年に発表されたIBM Quantum Eagleプロセッサの127量子ビットの3倍以上となる。このプロセッサは、古典的なコンピュータの計算能力をはるかに超える複雑な量子計算を実行できる可能性を持つ。同社は「参考までに、IBM Ospreyで状態を表現するために必要となる古典的なビットの数は、既知の宇宙に存在する原子の総数をはるかに上回る」と説明している。

エラー訂正と軽減に対応した新しい量子ソフトウェア
 量子コンピュータを導入するうえで、ノイズへの対処は重要な要因であり続けている。これを簡略化するため、IBMはQiskit Runtimeのベータ・アップデートをリリースし、APIの簡単なオプションで、ユーザが速度とエラー数の削減をトレードオフできるようにした。これらの機能の複雑さをソフトウェア層に抽象化することで、ユーザが量子コンピューティングをワークフローに組み込むことを容易にし、量子アプリケーションの開発を加速させることができるようになる。

IBMの新技術「Quantum Safe」
 量子コンピュータがより強力になるにつれ、技術プロバイダは、現在のセキュリティ標準を解読することができる潜在的な将来の量子コンピュータから、システムやデータを保護するための措置を講じることが極めて重要となっている。量子安全技術を搭載したz16システムの提供から、2024年までに標準化を目指す米国国立標準技術研究所(NIST)に関連したアルゴリズムの貢献まで、IBMはこれらのセキュリティ機能を備えたテクノロジーとサービスを提供している。同社は「今回のサミットでは、IBMとボーダフォンが、ボーダフォンの技術インフラにIBMの量子安全暗号を適用する方法を検討するための協業を発表した」と説明している。

ユーザとエコシステムの拡大、IBM Quantum Networkの成長
 IBM は、IBM Quantum Network に、ドイツの複合企業(コングロマリット)であるBoschが参画し、量子コンピュータにおける様々なユーザ ケースを探求することを発表した。また、量子コンピューティングと量子安全暗号を研究するボーダフォン、金融サービスでの使用を検討しているフランスの銀行Crédit Mutuel Alliance Fédérale 、量子および高性能コンピューティング技術に関するスキル開発を促進し、主要イノベーションプロジェクトを推進するスイスのイノベーション・キャンパスであるuptownBasel を追加することも表明した。
 IBM は「IBM Quantum Network参加組織は、200以上の組織、45万人以上のユーザから成り、クラウド上でアクセス可能な20台以上の世界最大の量子コンピュータ群を利用することができる」と説明している。

433 量子ビットのIBM Quantum Osprey

 IBMフェロー 兼IBM Quantumのバイス・プレジデントであるジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)氏は「IBM Quantum Summit 2022は、量子ロードマップに沿って進展する中で、世界の量子コンピューティング分野の進化における極めて重要な瞬間となる。私たちが量子システムの規模を拡大し、よりシンプルに使用できるようにすることで、量子産業の実用化と成長が続くだろう。私たちの飛躍的な進歩は、量子における次の波を定義するもので、私たちが量子コンピュータを中心としたスーパーコンピューティングと呼ぶ、モジュール化、通信、ミドルウェア、計算能力の拡張、量子と古典的なワークフローの統合に貢献する」とコメントを出している。