ドコモと NEC が、AWSを活用し Graviton2 利用による5Gコアネットワークの消費電力の7割削減とハイブリッドクラウド環境での5Gコアネットワークの動作に成功
モバイル/無線 無料 ドコモとNECは9月29日、高性能かつ低消費電力なプロセッサである AWS Graviton2(以下、Graviton2)上で動作する5G コアネットワーク(以下、5GC)が、現行のアーキテクチャCPUで動作する 5GC と比較し同等以上の性能を達成しつつ、電力消費量を約 7 割削減させることに世界で初めて(※1)成功したと発表した。
(※1:2022年9月現在、ドコモ・NEC 調べ)
加えて、Graviton2 上の 5GC とドコモの自社仮想化基盤上の5GCを接続するハイブリッドクラウド環境において、5GCの基本的な機能を問題なく動作させることに成功した。Graviton2を活用した環境において動作確認に成功したのは日本で初となる。
ドコモとNECは、AWSを活用してハイブリッドクラウド環境上で動作する5Gネットワーク装置の技術検証を2022年3月から実施している。
同実証の一環として、Graviton2 上の5GC省電力効果の検証と、Graviton2上の5GCとドコモの自社仮想化基盤上の5GC を接続したハイブリッドクラウド環境上での基本動作の検証を実施した。
ドコモとNECは、AWSを活用してハイブリッドクラウド環境上で動作する5Gネットワーク装置の技術検証を2022年3月から実施している。
同実証の一環として、Graviton2上の5GC省電力効果の検証と、Graviton2上の5GCとドコモの自社仮想化基盤上の5GC を接続したハイブリッドクラウド環境上での基本動作の検証を実施した。
Graviton2上で動作する5GCの消費電力の検証では、現行のアーキテクチャのCPUで動作する消費電力と比較し同等以上の性能を達成しつつ電力消費量が約 7 割削減されることを確認した。ドコモとNECは「同検証結果から、5GCをGraviton2上に配置することにより、お客さまへのサービス提供品質を維持しつつ環境負荷を低減することが期待できる。今後は、ユーザ通信を扱う装置(UPF)のGraviton2上での消費電力測定に加え、Graviton2搭載のAWS Outpostsでの消費電力についても検証を行い、ドコモのデータセンタなど自社環境での環境負荷低減に向けて検証を進める」と説明している。
大規模な携帯電話事業者でのハイブリッドクラウド環境の実現には、ネットワーク設計やセキュリティ設計も考慮した二つの基盤の接続に大きな課題があった。ドコモとNECは、同実証の中でこの課題を克服し、ハイブリッドクラウド環境で5GCの基本的な機能が問題なく動作することを確認した。また、ハイブリッドクラウド環境を実現する上で必要となるパブリッククラウドに最適化された5GCをGraviton2上に移植することに成功した。
同検証結果をもとにしたハイブリッドクラウド環境の実現により、通常時は自社仮想化基盤にてネットワークを運用しつつ、突発的なイベントの際にパブリッククラウド上にも 5GCを自動で構築しつながりやすさを向上させるといった運用が期待できる。また、5GCの一部をパブリッククラウドに配置してユーザがパブリッククラウド上に構築したシステムと連携させる運用により、多様化するネットワーク需要へ柔軟に対応できるネットワークの実現が期待できる。
今後は、自動構築の実現性について検証を進めるという。
ドコモとNECは「今後もAWS 上での本実証を継続し、商用化に向けた各種課題の解決に取り組んでいく。環境に配慮し持続可能な社会にふさわしい 5G 時代に求められるネットワークの提供に向けた技術検討を推進していく」としている。
各社のコメント
NTT ドコモの常務執行役員(CTO)・R&D イノベーション本部長である谷 直樹氏は 「NECの先進的でクラウドネイティブな 5GC ソフトウェアと AWS の革新的で高効率な Graviton2 プロセッサを 用いた本実証により、同等以上の性能を確保しつつ省電力で環境負荷の小さいネットワークを実現する可能性を見いだせたことは、大変大きな成果だと考えている。加えて、ハイブリッドクラウド環境の 5G ネットワークの基本動作が 確認できたことで、5G 時代に求められる、より信頼性や柔軟性の高いネットワークをお客さまに届ける道が開けたと確信している。これらの成果をお客さまに届けるべく、研究開発を継続していく」とコメントを出している。
日本電気の執行役員常務である河村 厚男氏は「今回の実証で得られた大幅な省電力の成果は、環境に配慮したサステナブルな次世代モバイルインフラの実用化に向けた大きなマイルストーンであると考えている。NECは今後 Graviton2 を始めとする省電力に寄与する最新の技術を、 UPF や vRAN 領域にも適用を広げることで次世代モバイルインフラの低消費電力化を実現し、引き続き、サステナブルな仮想化ネットワークの提供を通じた持続可能な社会の実現に貢献する」とコメントを出している。
Amazon Web Servicesの通信業界ビジネスユニット バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるアドルフォ・ヘルナンデス(Adolfo Hernandez)氏は「通信業界では、他の産業界と同様、持続可能な社会を実現する責任を担っており、同時に高性能で高品質な サービスをお客様に提供することが求められている。AWS は、環境にやさしい方法で事業を運営し、且つお客様の期待に応えるサービスを提供することにコミットしている。今回、弊社設計の AWS Graviton2 プロセッサを用いて ドコモとNECと共に高いエネルギー効率の実現を実証できたことを嬉しく思っている。今後も引き続き3社で協力しながら、弊社のクラウドテクノロジーがお客様の持続可能性とレジリエンシーの実現・発展に寄与することを期待している」とコメントを出している。
実証実験詳細
AWS上の5GCと自社仮想化基盤上の5GCを接続するハイブリッド環境での基本動作
自社仮想化基盤上に無線/端末疑似装置および UPF を配置し、AWS 上に 5GC C-Plane を配置し、位置登録(※2)および、通信確立(※3)が問題なく動作することを確認した。
※2:3GPP 標準 TS23.502 4.2.2 章に記載のInitial Registrationを指す
※3:3GPP 標準 TS23.502 4.2.3 章に記載のPDU Session Establishmentを指す
「Graviton2」を活用した5GCの性能および省電力性の検証
AWS上のGraviton2プロセッサでNECの5GCのC-Planeのソフトウェアを動作させ、動作時の電力特性を実測して環境負荷を定量化した。具体的には、AWS Graviton2プロセッサベースのEC2 インスタンス(以下、Graviton2 環境)と第5世代x86ベースのAmazon EC2インスタンス(以下、x86 環境)のそれぞれを活用したハードウェアリソースを、実験用の5GCで占有する環境を用意し、5GCに商用運用状態を模した負荷をかけた場合の電力および無負荷状態の電力を測定した。
その結果、Graviton2環境の5GCの消費電力がx86環境5GCの消費電力から約7割削減されることを確認した。