「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る令和3年度新規委託研究の公募(第1回)における基幹課題についての結果【NICT】
テレコム 無料NICTは7月5日、Beyond 5G研究開発促進事業のうち、令和3年度新規委託研究の公募(第1回)における基幹課題の4課題について、下記のとおり採択したことを発表した。
(1)Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発(課題番号 002)
研究開発項目1 SDM光ネットワーク・ノード設計技術
研究開発項目2 SDM光ネットワークシステム技術
研究開発項目3 SDM全方向光増幅技術
研究開発項目4 SDM空間光スイッチ技術
研究開発項目5 SDM高密度配線・接続技術
(上記、研究開発項目1から研究開発項目5への提案1 件を採択)
提案課題:経済性と転送性能に優れた空間多重光ネットワーク基盤技術の研究開発
提案者:香川大学(代表提案者)
KDDI総合研究所
日本電気
サンテック
古河電気工業
概要:階層化光ネットワーク・光ノード設計技術、保守性に優れたFIFO(ファンイン・ファンアウト)レス中継システム構築技術、MCF(マルチコアファイバ)のコア毎に伝搬方向が異なる光信号の一括増幅技術、MCFのコア毎に切り替え可能な光空間スイッチ技術、装置内接続用MCF配線・接続技術を開発し、Beyond 5G無線通信を支える、経済性と転送性能に優れた空間多重光ネットワーク基盤技術を確立する。1Pbps級リンクに対応可能でビット当たり転送コストを50%以上低減可能な光ノードを用いたモバイルバックホールとメトロ・コアネットワークを構築し、コア単位光ルーティングと転送距離50%以上延伸を実証し、本基盤技術が無線周波数資源の有効利用に資することを示す。
(2)テラヘルツ帯を用いたBeyond 5G超高速大容量通信を実現する無線通信技術の研究開発(課題番号 003)
研究開発項目1 テラヘルツ帯増幅器一体型アレイアンテナ技術の研究開発
研究開発項目2 テラヘルツ帯を用いた限定エリア内無線システムの研究開発
研究開発項目3 テラヘルツ帯を用いた地上~NTNプラットホーム間フィーダーリンクシステムの研究開発
(上記、研究開発項目1への提案1 件と、研究開発項目2及び研究開発項目3への提案1件をそれぞれ採択)
(研究開発項目1への提案)
提案課題:テラヘルツ波を用いたビーム制御通信システムの研究開発
提案者:富士通(代表提案者)
五島育英会 東京都市大学
概要:室内空間において、ユーザが必要とする大容量データを無線伝送する需要に向けて、従来のマイクロ波やミリ波では不可能な広い帯域を確保できる“テラヘルツ波”を用いたビーム制御通信システムの研究開発を実施する。テラヘルツ帯無線通信における電波の指向性を高めるため、化合物半導体を用いた高出力増幅器とアンテナを3次元異種集積によりアレイ化することで、300GHz帯で動作する増幅器一体型アレイアンテナを開発し、ビーム制御を実現する。
(研究開発項目2及び研究開発項目3への提案)
提案課題:テラヘルツ帯通信の高密度化・長距離化に関する研究開発
提案者:早稲田大学(代表提案者)
日本電信電話宇宙航空研究開発機構
三菱電機
概要:本研究開発では、「テラヘルツ帯を用いたBeyond 5G 超高速大容量通信を実現する無線通信技術の研究開発」でかかげられた研究開発項目のうち「テラヘルツ帯を用いた限定エリア内無線システムの研究開発」と「テラヘルツ帯を用いた地上~NTN プラットホーム間フィーダーリンクシステムの研究開発」を統合的に実施し、これまでのテラヘルツ帯通信システムで課題であった「周波数利用効率の向上」と「伝送距離の延伸」を実現する。成層圏や航空機内を想定した環境での実証実験を行い、100GHz帯による長距離通信、300GHz帯による高密度大容量通信を実現する。信号処理部は極力共通化することで、国際標準化と実用化の加速を図る。これによりBeyond 5Gの2つの役割「5Gの特徴的機能のさらなる高度化」と「持続可能で新たな価値の創造に資する機能の付加」に貢献する。
(3)Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発(課題番号 004)
研究開発項目1 端末拡張のためのテラヘルツ帯RF構成技術
研究開発項目2 テラヘルツ帯を適用した端末拡張のための信号処理技術
研究開発項目3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術
(上記、研究開発項目1から研究開発項目3への提案1 件を採択)
提案課題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発
提案者:KDDI総合研究所(代表提案者)
早稲田大学
千葉工業大学
名古屋工業大学
日立国際電気
パナソニック
概要:本提案では、ユーザ個別の通信要件に応じて通信エリアを構築し、ユーザがあらゆる場所で高い通信性能を提供するユーザセントリックアーキテクチャ実現に向けた研究開発に取り組む。5Gの有するセル境界問題や上り回線容量不足に対して、ユーザとその周辺にあるデバイス群のアンテナをテラヘルツ帯で接続し、上り回線の空間多重数を拡大する「端末仮想化技術」および「Radio over Terahertz 技術」、Cell Free Massive MIMO によりセル境界を無くし、柔軟かつ大規模なRAN を実現する「ユーザセントリックRAN 技術」により、サイバー空間とフィジカル空間の一体化を促進し、新たな社会価値創造に寄与する。
(4)Beyond 5G超大容量無線ネットワークのための電波・光融合無線通信システムの研究開発(課題番号 005)
研究開発項目1 光⇔テラヘルツ帯の相互信号変換技術及びトランシーバ技術
研究開発項目2 高速光無線接続技術及び光無線トランシーバ技術
研究開発項目3 無線信号配信のための光信号処理技術
(上記、研究開発項目1から研究開発項目3への提案1 件を採択)
提案課題:超大容量超低遅延無線のための電波/光変換・制御技術
提案者:三重大学(代表提案者)日立国際電気京都セミコンダクター
KDDI総合研究所
東洋電機
概要:研究提案者らが強みを持つ電波/光通信・制御技術、ネットワーク技術をフル活用して、Beyond 5G超大容量超低遅延無線ネットワークのための「50Gbps/ch級THzトランシーバ」、「光無線技術」、「THz・光無線シームレス伝送システム」、「DSP遅延低減伝送・信号処理技術」を開発する。特に、基幹光ファイバ通信ネットワークとの接続性・拡張性を担保しながら、移動体(ドローン、低速走行車)に高品位無線通信環境を提供するBeyond 5Gフロントホールコア技術を追究する。4年間の研究で新しい電波・光融合技術を開発して社会実装へ向けたフィールド実験を行い、Beyond 5G無線としての有用性を実証する。
※公募等の概要
今回の課題については、令和3年4月30 日~5月31日まで公募が行われた。NICTは「学識経験者で構成される評価委員会(委員長:安藤真 東京工業大学名誉教授)の評価等を踏まえ、採択した」としている。