5GとAIを活用した映像伝送・解析で、工場の作業を自動的かつリアルタイムに見える化【住友電工、ソフトバンク】
DX/IoT/AI 無料スマート工場の実現に向けて、DXで工場の生産性向上へ
住友電気工業(以下、住友電工)とソフトバンクは6月9日、スマート工場の実現に向けた取り組みの一環で、5Gを活用した映像伝送とAIを用いた映像解析により、工場の作業を自動的に、かつリアルタイムに見える化する実証実験を実施していたことを発表した。
その結果、作業の分類や作業時間の集計にかかっていた人的リソースを削減できた他、分析結果や映像を基に作業の遅延の原因を特定することで作業の改善や効率化を図ることが可能になり、工場の生産性向上につながることを確認できたという。
背景
住友電工はソフトバンクの協力の下、スマート工場の実現に向けて、5GやAI、IoTを活用した工場での作業者の行動分析など、DXで工場の生産性を向上させる取り組みを進めている。
生産性の向上を図るには、作業を見える化して分析する必要がある。従来は人が手動で作業内容を記録し作業時間を計測した上で、作業の分類別にデータを集計しており、人的リソースがかかることや、実態の把握までに時間がかかることが課題となっていた。こうした課題を解決するため、住友電工とソフトバンクは、工場の作業を自動的に、かつリアルタイムに見える化する実証実験を行った。
実証実験の成果
今回の実証実験では、住友電工の工場内に高精細カメラを4台設置して作業の様子を撮影し、その映像をソフトバンクの5Gネットワークを利用して住友電工のデータセンタ内のクラウドサーバに伝送した。伝送された映像をAIが解析し、作業の分類や時刻との照合などを行った上で、住友電工が独自開発したソフトウエアが個々の作業のタイムチャートを生成することで、作業を自動的かつリアルタイムに見える化することができた。また、このソフトウエアは、1日ごとの目標時間と実際の作業時間を分析し、自動でグラフ化することにも対応している。
「高速・大容量」という特長を持つ5Gを活用することにより、複数台のカメラで撮影された高精細な映像を、常時遅延なく安定して伝送できることを確認した。5Gネットワークの利用には、住友電工が開発した産業用5G端末を使用。この端末を使用することで、工場内に新たなネットワークを構築する必要がないため、ネットワークの整備にかかる負担を軽減することができる。
実証実験の結果、手動での作業時間の計測・集計や作業の分類にかかっていた人的リソースを大幅に削減できた他、作業者は目標時間と実際の作業時間の差分を確認し、効率性を意識して作業に取り組むことが可能になった。また、作業時間のグラフをクリックすることで、該当する日付の作業映像を再生し、作業の遅延が発生した箇所を特定して原因を分析できるため、速やかに作業の改善や効率化を図ることができ、工場の生産性の向上につながっている。
実証実験の概要
期間:2021年3月26日~5月24日
場所:住友電工 大阪製作所内
目的:5GとAIを活用した映像伝送・解析による工場の作業の見える化
カメラ台数:4台(撮影面積:240平方メートル)
今後の展開
今後、住友電工は、サプライヤとして産業用5G端末の製品化に向けた開発を進めるとともに、ユーザとして5Gの活用検討を進める予定だ。また、ソフトバンクは、今後も住友電工をはじめ様々な企業と連携し、5Gを活用したソリューションの開発に取り組む他、2022年度をめどに法人向けの5Gマネージドサービス「プライベート5G」を提供する予定だという。
両社は「5Gを活用したソリューションビジネスの展開により、社会課題を解決するための取り組みを共同で進めていく」との考えを示している。