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超小型アンテナを使用した300GHz帯テラヘルツ無線通信に成功【NICT、岐阜大学、ソフトバンク】

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Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に向けた研究開発を加速

 岐阜大学、ソフトバンク、NICT、National Research Tomsk State UniversityおよびTomsk Polytechnic Universityの研究グループ(以下、研究グループ)は1月13日、Beyond 5G/6G時代を見据え、300GHz帯テラヘルツ無線(以下、テラヘルツ無線)で動作する超小型アンテナを使用した通信実験に成功したと発表した。

 近年、無線通信の高速化・大容量化の要求によって、100Gbps以上の伝送速度を実現するBeyond5G/6G技術に関する研究開発が世界的に開始されつつある。テラヘルツ無線は、5Gで利用されるミリ波帯と比べて、より広い周波数帯域が利用可能なため、超高速無線システムの候補として期待されている。一方、スマートフォンに搭載可能なサイズで利得の高いアンテナの開発と、そのアンテナを使用して実用的に通信を行うことが課題となっている。

 研究グループは、昨年開発した、フォトニックジェット効果※を用いた小型の誘電体アンテナ(1.36mm×1.36mm×1.72mm、開口面積1.8mm²、利得およそ15dBi)を使用して、600mmという小区間で17.5Gbpsの通信実験に成功した。この距離は最初の一歩として、テラヘルツ帯がスマートフォンなどの近距離通信に使えることを示し、また現在開発が進められているテラヘルツ無線に対応するトランシーバの出力と受信感度の性能が向上することで、より長距離の通信への可能性を示すものとなる。研究グループは「今後は、超小型アンテナを相互に用いたテラヘルツ無線通信のユースケースや、無線送受信機の実現可能性を調査する」との考えを示している。

※フォトニックジェット効果:波長オーダーの誘電体構造に電磁波を照射することで、誘電体の後ろに発生する現象のこと。透過発生したフォトニックジェットを測定して、アンテナ本体の性能を明らかにし、これを通信に応用した。

 今回の研究成果は、2021年1月10日から15日までオンラインで開催される国際会議「European Microwave Week 2020(EuMW2020)」において、「“Short-range Wireless Transmitter Using Mesoscopic Dielectric Cuboid Antenna in 300-GHz Band” Kazuki Yamada, Yuto Samura, Oleg Vladilenovich Minin, Atsushi Kanno, Norihiko Sekine, Junichi Nakajima, Igor Vladilenovich Minin, Shintaro Hisatake(300 GHz帯における波長サイズDCAアンテナによる短距離送信)」の名称で採択された。

開発技術の詳細

 5Gで用いられる準ミリ波帯よりも周波数が1桁高い300GHz帯無線通信を広く活用するためには、大きな伝搬損失を補うために高利得アンテナの開発が重要となる。例えば、kiosk端末から50cm程度離れたスマートフォンに300GHz帯無線通信でデータをダウンロードするユースケースを考えた場合、一般的なスマートフォンに搭載されているレンズと同程度のアンテナ開口面積(3mm²)以下で14dBi 程度以上のアンテナ利得が望まれる。ところが、図1に示すようにアンテナ利得とアンテナ開口面積は、およそ比例関係を有しており、アンテナの小型化と高利得化の両立が課題となっている。今回、研究グループは、昨年開発したフォトニックジェット効果による小型アンテナ(Dielectric cuboid antenna: DCA)を用いて、600 mmという小区間で17.5Gbpsの通信実験に成功した。伝送実験で用いた小型アンテナの開口面積は1.8mm²、利得はおよそ15dBiで、図1の赤丸に相当する。

図1:300GHz帯におけるアンテナ利得とアンテナ開口面積との関係

 図2は、超小型アンテナによる伝送試験の様子。写真の白い立方体部が開発した微小アンテナで、手前の大きなホーンアンテナ(9.0mm×9.0mm×47.5mm、利得23dBi)はテラヘルツ波無線通信で一般に用いられるものだ。試験で用いた送受信機に特別な部品は使用せず、市販の部品のみで構成されている。伝送速度は17.5Gbpsで、これは試験に用いた計測機器により制限されている。開発したアンテナから伝送された信号スペクトル形状を測定したところ、狭窄化などのスペクトル形状の劣化は見られず、開発したアンテナが高速無線通信に適用可能な広帯域性を有していることが確認された。試験では、送受信機間の距離を変えながら、ビット誤り率(Bit error rate :BER) を計測したという。

図2:超小型アンテナ(白い立方体部)による通信試験
 ※通信エラー率から可能となる最大の離隔で検証

図3:ビットエラー率(BER)と伝送距離との関係

 図3は、得られたビット誤り率と伝送距離との関係。図には、伝送距離40mmで得られたアイパターンも併せて示している。伝送距離およそ600mm以下において、一般的に伝送成功の目安となるFEC limt(BER=3.8×10-3)以下のビットエラー率(BER)を確認した。

 研究グループは「今回の研究開発で、スマートフォンなどへの実装が可能と考えられる小型アンテナを用いた300 GHz帯高速無線伝送が市販の部材のみを用いて実現した。300 GHz帯で動作する高感度・小型受信機や高出力アンプの研究開発が世界的に急速に進展している。無線信号の波長と同サイズの小型アンテナの実現によって、テラヘルツ無線で動作する小型集積回路への実装が可能となり、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に貢献すると期待される」としている。

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