5G基地局用GaN増幅器モジュールの小型・高効率化技術を開発【三菱電機】
モバイル/無線 無料5G基地局の小型化と設置性向上、低消費電力化に貢献
三菱電機は7月14日、5G基地局の小型化と設置性向上、低消費電力化に向けて、6mm×10mm と小型ながら世界最高(2020年7月14日現在、三菱電機調べ)の電力効率 43%以上(5Gで使用される周波数範囲3.4~3.8GHzにおいて)を実現したGaN増幅器モジュールの小型・高効率化技術を開発したと発表した。同開発成果の詳細は、8月開催の国際会議「IMS 2020」で発表するという。
開発の概要
独自高密度実装技術で小型化を実現し、5G 基地局の設置性向上に貢献
・整合回路にコンデンサーやインダクターなど従来の金属箔の線路と比べてサイズの小さいチップ部品を適用し、高精度な電磁界解析手法に基づく独自高密度実装技術により、チップ部品間の干渉を抑制しながら高密度実装することで、同社従来(※1)比90分の1となる6mm×10mmの小型化を実現
・増幅器モジュールの小型化により、アンテナや増幅器、他の周辺回路から構成される多素子 アンテナを有する5G 基地局の小型化と設置性の向上に貢献
独自整合回路技術で世界最高の電力効率を実現し、5G 基地局の低消費電力化に貢献
・高効率動作が可能なGaNトランジスタの採用により、増幅器の高効率化を実現
・チップ部品数を最少化する独自整合回路技術により電力損失を抑制し、世界最高の電力効率43%以上を達成(5Gで使用される周波数範囲3.4~3.8GHzにおいて)
・増幅器の高効率動作により、基地局の低消費電力化に貢献
※1:同社開発の4G基地局用増幅器(2017年1月12日発表)との比較。
今後の展開について同社は「出力電力や周波数などの仕様が異なる5G 基地局用GaN増幅器モジュールへの本技術適用に向けて、研究開発を進める」としている。
開発の背景
超高速・超低遅延・多数同時接続を特長とする5Gは、今後の社会インフラを支える技術として期待されており、国内でも運用が開始されている。5G基地局は、多数同時接続を実現するために、複数の多素子アンテナを協調動作させて任意の方向に電波のビームを形成するが、アンテナの数が増え、密に配置されることから、各部品の小型化に加え、特に発熱による電力損失が大きい増幅器の低消費電力化が求められている。
同社は今回、これらのニーズに応えるために、5G基地局用 GaN増幅器モジュールの、6mm×10mmの小型サイズと世界最高の電力効率を両立する小型・高効率化技術を開発した。
特長の詳細
独自高密度実装技術で小型化を実現し、5G基地局の設置性向上に貢献
多素子アンテナを使用しない 4G基地局の増幅器には、金属箔の線路を用いた整合回路が使用されている。金属箔の線路は電力損失が比較的小さいため高効率動作が可能である一方、サイズは比較的大きいため、小型化と高効率動作の両立が求められる5G基地局への適用は困難だった。
今回、コンデンサーやインダクターなどのチップ部品を用いた整合回路を増幅器に適用した。高精度な電磁界解析手法を導入し、チップ部品を高密度に実装する独自の技術を適用す ることにより、同社従来(※1)比90分の1となる小型なモジュールを実現した。
独自整合回路技術で世界最高の電力効率を実現し、5G 基地局の低消費電力化に貢献
チップ部品を用いた整合回路の適用により、増幅器の小型化が可能となる一方、チップ部品は金属箔の線路に比べて電力損失が大きいことから、増幅器の電力効率が低下する傾向にある。そのため、多数のチップ部品の組み合わせから、少ない部品数で金属箔の線路と同等の特性を確保する必要がある。
今回、チップ部品の組み合わせにより、金属箔の線路と同等の特性を確保するとともに、チップ部品数を最少化した独自の回路構成を考案することにより、5Gで使用される周波数範囲 3.4~3.8GHzにおいて、世界最高の電力効率 43%以上を達成した。
同社は環境への貢献について「増幅器の電力効率向上により、5G基地局の低消費電力化に貢献する」としている。