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Beyond 5G/6Gに向けたテラヘルツ無線通信用のアンテナの開発に成功【NICT、岐阜大学、ソフトバンク】

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岐阜大学、ソフトバンクおよび情報通信研究機構が、超高速無線通信などの実用化に向けて研究開発

 岐阜大学、ソフトバンク、情報通信研究機構(以下、NICT)は6月18日、National Research Tomsk State UniversityおよびTomsk Polytechnic Universityの研究グループは、Beyond 5G/6G時代を見据え、300GHz帯テラヘルツ無線(以下、テラヘルツ無線)で動作する超小型アンテナの開発に成功したと発表した。

 近年、無線通信の高速化・大容量化の要求によって、100Gbps以上の伝送速度を実現するBeyond 5G/6G技術に関する研究開発が世界的に開始されつつある。テラヘルツ無線は、5Gで利用されるミリ波帯と比べて、より広い周波数帯域が利用可能なため、超高速無線システムの候補として期待されている。一方で、テラヘルツ無線の周波数は伝搬損失が大きく、実用化するには利得の高いアンテナの開発が必須となる。アンテナの寸法を大きくすることで利得は向上するが、スマートフォンなどへの実装を考えると、小型で利得の高いアンテナの開発が必要不可欠であり、サイズと利得の両立が課題とされていた。

 今回、同研究グループは、無線信号波長(約1mm)と同程度の大きさの直方体型誘電材料を使用することで発生するフォトニックジェット効果(※)に着目して、小型アンテナの開発に応用した。開発したアンテナは、利得を約15dBi(シミュレーション値)と大きく保ったまま、無線信号波長と同程度の1.36 mm×1.36 mm×1.72 mmというサイズ(開口面積:1.8 mm2)を実現。アンテナの開発に加えて、現在開発が進められているテラヘルツ無線に対応するトランシーバの出力パワーと受信感度の性能が向上することで、テラヘルツ無線通信技術の実用可能性が広がる。
※フォトニックジェット効果:波長オーダーの誘電体構造に電磁波を照射することで、誘電体の後ろに発生する現象のこと。透過発生したフォトニックジェットを測定して、アンテナ本体の性能を明らかにした。

 今後は、テラヘルツ無線伝送システムに超小型アンテナを適用して、無線送受信機の実現可能性を調査するという。無線信号波長と同サイズの小型化アンテナの実現によって、テラヘルツ無線で動作する集積回路への実装を可能にし、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に貢献することが期待される。

 今回の研究成果は、6月1日から30日までオンラインで開催される国際会議「EuCAP2020 (14th European Conference on Antennas and Propagation)」において、「”High-gain and Low-profile Dielectric Cuboid Antenna at J-band,” Y. Samura, K. Yamada, O. V. Minin, A. Kanno, N. Sekine, J. Nakajima, I. V. Minin, and S. Hisatake (Jバンドにおける高利得小型誘電体キューブアンテナ)」の名称で採択された。

 同研究グループは「今後もBeyond 5G/6G時代の超高速無線通信などの実用化に向けた研究開発を加速し、通信事業の発展に貢献していく」との考えを示している。

開発された超小型アンテナ。(大きさを比較するためにスマートフォン上に配置)

Beyond 5G/6Gに向けたテラヘルツ無線通信用のアンテナ開発の研究成果

図1:アンテナ開口面積とアンテナ利得との関係。(これまでの先行研究開発の成果と本成果との優位性)

 一般的に、無線通信システムを実現するために、アンテナは必要不可欠だ。アンテナ利得が大きいアンテナでは、伝搬する無線信号強度を増強する効果があり、テラヘルツ無線のように伝搬損失が大きい無線システムでは、高アンテナ利得のアンテナ素子が必要不可欠だ。しかしながら、図1のように、アンテナ利得とアンテナ開口面積は比例関係を有しており、高アンテナ利得の実現にはアンテナ開口面積の大口径化が必須だった。

 今回の研究開発では、フォトニックジェットを発生させる直方体誘電材料を用いたアンテナ(Dielectric Cuboid Antenna: DCA)をテラヘルツ無線アンテナとして利用することで、アンテナ利得を15dBi(シミュレーション値)程度と比較的大きく保ったまま、開口面積1.8 mm2の小型化が実現できたという。これは、同程度のアンテナ利得のホーンアンテナと比較して体積がおよそ40%程度にまで小型化されることに相当する。同寸法のホーンアンテナと比較した場合は、3dBビーム幅(FWHM)がE面で80%程度、H面で70%程度に狭窄化されたことに相当する。

 このアンテナから放射された300GHzテラヘルツ電磁波の、アンテナ開口面での電界分布の実測結果が図2となる。放射された電磁波の位相分布はアンテナ開口面で一様となり、位相に敏感な無線通信にも実現可能であることを確認したという。

図2:開発したアンテナの近傍界(実測)。振幅分布と位相分布を示している。開発されたアンテナ(DCA)の開口を併せて示している。

図3:開発したアンテナ(DCA)の遠方界(E面)。メインローブについてはシミュレーション結果と実測結果はよく一致している。

 DCAの放射パターン(E面)の実測による推定結果と、シミュレーションによる数値計算結果を併せたのが図3となる。実測した近傍界分布を遠方界に変換することで、推定放射パターンとして示している。得られた放射パターンはシミュレーション結果と非常によく一致しており、3dBビーム幅(FWHM)の実測値はE面で23度だったという。
 今回の研究開発で実現した小型DCAをスマートフォンなどへ実装することにより、100Gbpsを超えるBeyond 5G/6Gデバイスの実現が期待できる。

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