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クラウドプラットフォームを活用したセンサ・設備制御ネットワークシステムの協創【日建設計、協和エクシオ、WHERE、オムロン、神田通信機】

DX/IoT/AI 無料

 日建設計、協和エクシオ、WHERE、オムロン、神田通信機は4月8日、働き方改革や脱炭素社会の実現のために、ワークプレイスの有効利用と室内環境の最適化を目指すクラウドプラットフォームを活用したセンサ・設備制御ネットワークシステムの開発・改善・普及に向けた取り組みを共同で実施していくことに合意したことを発表した。
 既に、実際のオフィスを利用したセンサ・ネットワークシステムの実証実験を開始。今後は、設備制御やAIとの連携の拡大を図り、実フィールドにおける省エネルギー効果の検証や働き方改革への応用を試行していくという。

協創の背景と目的

 昨今、国内労働人口の減少とその加速が予測され、国先導の下、各企業による労働力確保や生産性向上など働き方改革への取り組みが喫緊の課題となっている。また、地球温暖化の急速な進行が顕在化し、脱炭素化は今まで以上に社会全体での課題となると見られている。
 従来、空調・照明・防犯・防災・日射遮蔽・映像音響などの建築設備では、各システムが独自にセンサを設置しており、相互無関係に制御されてきた。これに対し、より快適に、より効率的に建築空間を運用し、生産性向上や脱炭素化を促進するためには、空間の全体最適化を可能とす るシステム開発が必要となる。本協創は、ネットワーク、センサ、設備制御、建築設計などの各分野の連携による建築空間を様々な側面から統合的に全体最適化の実現を目的としている。

従来システムと今回の協創システムのイメージ

システムコンセプト

 今回の協創におけるシステムコンセプトは、デジタルツインとオープンスタンダードの概念に基づいている。
 デジタルツイン(サイバー空間にリアルの物体や事象をリアルタイムな連動性をもって再現するもの)は、センサが収集した現実世界の情報をサイバー空間で解析し、現実世界の制御へのフィードバックを可能とする。
 オープンスタンダードの一つであるAPI(Application Programing Interface: ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に向けて公開することにより、第三者が開発したソフトウェアと機能を共有できるようにするもの) は、相互接続性・相互運用性を可能とする。
 これらの概念に基づき、建物内にセンシング専用のネットワークを構築、複数センサのデータをクラウドプラットフォームにアップロード、マッシュアップし、全体最適解を探索するため総体的に解析、設備制御にフィードバック可能な設備制御ネットワークシステムの構築を目指す。さらに、センサや設備のマルチベンダ化が促進され、拡張・更新が容易で陳腐化しないシステムの構築が図られる。同時に、建物オーナーやユーザー自身が、アップロード・マッシュアップされたデータを利用し、ワークスペースの改善やワーカーの活動支援に活用が可能となる。同システムは、今後の普及が見込まれているクラウドプラットフォームを利用したセンシングと制御のオープンな連携の端緒となる。

要素技術と各社の役割

要素技術の連携イメージ


各社の役割。次の開発フェーズでは、空調・防犯・防災・日射遮蔽・映像音響設備との制御連携を強化し、AIを活用した健康で知的生産性の高いワークプレイス実現のため、さらなる協創拡大を目指すという。

開発・実証実験のフィールド

 都内某オフィス(対象エリア1000㎡)に、センサ/ネットワークおよびクラウドプラットフォー ム・照明制御を導入し、既に運用を開始している。このフィールドを利用して、設備制御連携の拡張やセンサ種別の最適配置を検討することにより、制御連携を一層推し進め、実証実験により 改善・向上を図り、普及を目指した研究開発を実施していくという。

開発・実証実験のフィールドのイメージ

活用イメージと期待される効果

 人が滞在し、設備制御がなされている空間であれば、人や物の位置情報や利用状況、室内環境を 定量化し、これらに応じたきめ細やかな制御が可能となるため、同システムは、オフィスや学校、病院、工場など多様な建物用途に貢献できる。特にワークプレイスにおける利用が有効であると考えられ、下記の2点により働き方改革や脱炭素社会の実現に貢献する。

  • 空間の利用状況および室内環境の把握によるワークプレイスの継続的な改善
  • 空間の利用状況および室内環境に応じた高精細かつリアルタイムな制御

 個人の状況( 業務や体調) に応じて働く場所を能動的に選択する働き方(ABW:Activity Based Wor king) が注目されている。個人の高集中化、コミュニケーションを適正化することで、生産性や 健康の向上が期待できるとともに、固定席が排除されることでオフィス効率が向上するため、省エネ、脱炭素化も同時に図ることができる。この働き方を強力にバックアップするのが同システムだ。人や物の位置情報や利用状況、室内環境を定量化し、空間効率と生産効率を継続的に改善していくことが可能となると同時に、利用状況や室内環境に応じてきめ細やかな設備制御が可能となる。

 5社は「協創による実証実験をもとに、本システムの開発、普及、改善を通して、働き方改革や 脱炭素社会の実現に貢献する」としている。