業界で唯一、5μm帯のレーザの特性評価を高精度に行えるベンチトップ型分散分光方式の光スペクトラムアナライザ「AQ6377」発売【横河計測】
テレコム 無料環境分野の研究や環境計測関連品の開発に貢献
横河計測は1月15日、波長範囲1.9μm~5.5μmのレーザの光スペクトルを、広い測定ダイナミックレンジと高い波長分解能で高精度に測定する光スペクトラムアナライザ「AQ6377」を開発したと発表した。販売開始は1月16日。「AQ6377」は、5μm帯に対応した業界初(※1)の分散分光方式(※2)のベンチトップ型光スペクトラムアナライザだ。
光スペクトラムアナライザは、半導体レーザやファイバレーザなど光デバイスの光波長成分を分解し、波長特性を評価するために使用される測定器。「AQ6377」は、環境計測分野などで注目されている5μm帯の光デバイスの普及や性能向上に貢献する製品となる。
主な対象ユーザ:環境計測分野などの大学・研究機関および光半導体デバイスメーカ、光モジュールメーカなど。
主な用途:半導体レーザ、ファイバレーザや広帯域光源の発光スペクトル評価、FBGなどの光フィルタの波長透過特性測定。
※1 2019年12月現在、同社調べ
※2 分散分光方式:広範囲の波長の光を回折格子で分散させ、細い隙間を通らせることで狭い範囲の波長を取り出す分光方式の一種
開発の背景
近年、環境計測分野では、炭素酸化物(COx)、窒素酸化物(NOx)および炭化水素ガス(CxHy)などのガスを検出する技術として、レーザ吸収分光法(※3)が普及している。レーザ吸収分光法では、近赤外領域の半導体レーザが広く使用されている。これらのガスには波長が長い光ほど吸収しやすいという性質があるため、より長い中赤外領域の波長の光を利用して高精度にガスや物質を測定したいというニーズが加速している。この測定には、5μm帯半導体レーザが用いられるが、5μm帯の光スペクトルを測定するには、波長が干渉を起こす性質を利用した干渉計型の測定器や、分光器を用いた大掛りなシステムが必要となる。また、測定可能なダイナミックレンジや波長分解能などの測定精度に課題があり、小型で高性能な光スペクトラムアナライザが望まれていた。
今回開発された「AQ6377」は、同社が1980年に光スペクトラムアナライザ市場に参入して以来、可視光領域や近赤外線領域で培ってきた、光スペクトルを高精度に測定する技術を基に、中赤外線領域の5μm帯にも対応できるようにした分散分光方式の測定器となる。
※3 レーザ吸収分光法:ある分子にレーザ光を当てたとき、分子の種別によって特定の波長の光を吸収することを利用し、光スペクトルを分析してその分子の量を測定する方法
新製品の特長
業界最高の広い測定レンジ:「AQ6377」の測定ダイナミックレンジは、波長5μm帯向けの干渉計型測定器と比較して約2,000倍に相当する73dB、近傍ダイナミックレンジ(※4)は、約10倍に相当する50dBを実現した。半導体レーザのサイドモード特性の測定に十分な性能を実現した。ともに業界最高性能(※5)を実現しているという。
※4 近傍ダイナミックレンジ:被測定光のピーク光と近接したスペクトル(サイドモード)を分離し測定する性能
※5 2019年12月現在 同社調べ
ただし、測定ダイナミックレンジは性能を示す参考値(代表値)であって保証値ではない。
業界最高の高い波長分解能:「AQ6377」の波長分解能は、波長5μm帯向けの干渉計型測定器の3分の1に相当する200pmを実現した。これは業界最高(※6)の波長分解能だという。
※6 2019年12月現在 同社調べ
200pmは、波長5μmの光を測定時に設定できる波長分解能の最高値
被測定光本来の光スペクトルの測定が可能:分光器内の空気に含まれる微量な水蒸気を除去して特定の波長の光の吸収を抑制する機能と、分光器の原理上発生する高次回折光(入力光波長の2~3倍の波長に現れるゴースト現象)の影響を低減する機能を搭載した。被測定光本来の光スペクトルの測定を可能にする。