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Wi-Fi AllianceがWi-Fi 6を6 GHz帯に拡張

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6GHz帯の開放と同時に多くのメリットを提供する「Wi-Fi 6E」

 Wi-Fi Allianceは1月3日、6GHz 帯利用に対応したWi-Fi 6デバイスを他のデバイスと区別する新しいテクノロジーを発表した。6GHz 帯は免許が不要な帯域で、間もなく世界各国の規制当局が開放することが見込まれている。これまで以上のパフォーマンス、低レイテンシ、高速なデータレートをはじめとするWi-Fi 6の機能と能力を6GHz帯にまで広げるデバイスを消費者が簡単に見分けられるようにした業界標準規格が「Wi-Fi 6E」となる。
 この帯域の利用が規制当局に承認されれば、市場にはWi-Fi 6Eデバイスがすぐに出回ることが見込まれている。これまで以上に幅広い帯域を利用できるようになることで、これからもWi-Fiのイノベーションを提供できるとともに、消費者、企業、経済環境全体に高い価値を提供することが可能になる。
 世界各国で6 GHz帯域の利用が可能になり次第、いつでもWi-Fiデバイスはこの帯域を活用できるようになる。Wi-Fi Allianceは「6 GHz帯域の開放に向けた世界各国の活動を支援しながら、この帯域を利用している既存のデバイスを保護していく。Wi-Fiは、IoTの基盤テクノロジーであるとともに、5Gの実現に欠かせず、現在容量が不足している領域の通信ネットワークを広げる重要なツールであり、世界経済にも大きく貢献していることが認められている。以前より5GHz帯をサポートし、絶え間なく成長しているWi-Fiにとって隣接する6GHz帯は最適な帯域で、既存のWi-Fi 4/Wi-Fi 5デバイスとの干渉が少ない帯域でこれまで以上に幅広いチャネルを利用できるようになる」としている。

 IDC リサーチ ディレクターのPhil Solis氏は「規制環境さえ整えば、多くの企業が6GHz 帯を対象にした製品を積極的に展開していくだろう。どの企業も、この免許不要帯域が顧客に大きな価値をもたらすことをよく分かっている。今年の早いうちにこの帯域が解放されれば、6 GHzをサポートする製品は急速な勢いで広がることになるだろう。6 GHzの容量は膨大で、Wi-Fi 6および今後の新しいバージョンのWi-Fiも有効に活用することができる。現在この6 GHz市場は米国が大きくリードしているが、欧州とアジア太平洋地域もこの帯域の活用法を探っている」とコメントを出している。

 アナリストの予測では、6 GHz帯域の利用が認められた場合、まず消費者向けアクセス ポイントとスマートフォン、続けて企業レベルのアクセス ポイントが普及すると考えられている。また産業分野においてもマシン アナリティクスやリモート メンテナンス、スタッフのバーチャル トレーニングといったアプリケーションでのWi-Fi 6E利用が広まることが見込まれている。Wi-Fi 6Eは、6 GHz帯を活用して消費者、企業、産業分野におけるAR(拡張現実)およびVR(仮想現実)のユースケースをサポートする。
 Wi-Fi Alliance プレジデント兼CEOのエドガー・フィゲロア(Edgar Figueroa)氏は「6 GHz帯を利用できるようになれば、Wi-Fi の帯域利用への高まっているニーズに応え、Wi-Fi ユーザの皆様はそれぞれのデバイスでこれまでと変わらない質の高いユーザ体験を楽しむことができる。6GHzの利用が認められたときに、この帯域をサポートするデバイスをWi-Fi ユーザの皆様がすぐに見分けられるように、業界全体が足並みをそろえるための共通の基盤として、Wi-Fi Alliance はWi-Fi 6Eをリリースした」とコメントを出している。
 6GHz帯を利用できるようになれば、隣接するスペクトラム ブロックを通じて最大14の80 MHzチャネルと7つの160 MHzチャネルを利用できるようになるため、Wi-Fiの利用帯域不足が解消される。これらのチャネルは、HD動画ストリーミングやVRといった高速データ スループットが求められる高帯域アプリケーションに欠かすことができない。Wi-Fi 6Eデバイスは従来を上回るチャネルと大きな容量をフル活用することで、たとえ非常に密度が高い輻輳環境であっても、優れたネットワーク パフォーマンスを提供しながら数多くのユーザを同時にサポートすることができるという。Wi-Fi Allianceは「6 GHz帯域の利用が認められた際にWi-Fiユーザがさまざまなメリットを活用できるように、Wi-Fi 6Eの相互接続性テストの策定を進めている」としている。

6 GHz帯域の利用に対するWi-Fi Allianceメンバー企業の声(※編集部による一部抜粋)

 AirTies CTOのMetin Taskin氏は「Wi-Fi で6 GHzを利用できるようになることは、消費者とオペレーターの両方にとって画期的な変化となる。利用可能な帯域とチャネルが増えることで、これまで以上に多くのデバイスを、これまで以上に速いスピードでサポートすることが可能になるだろう。オペレーターがあらゆるデバイスで常に最高品質の体験を提供するためには、ホーム ネットワーク内のすべてのデバイスのパフォーマンスを最適化するためのツールが欠かせない。当社のSmart Wi-Fi ソフトウェアとクラウド ベースの管理ソフトウェアによって、オペレーターの皆様は能動的にデバイスを管理して、6 GHzを利用する新しいWi-Fi 6デバイスだけでなく、2.4 GHzや5 GHzを利用する既存のレガシー デバイスでも、最高のパフォーマンスを引き出すことができる」とコメントを出している。

 Hewlett Packard Enterpriseの子会社である、Aruba ワイヤレス スタンダード&ストラテジー担当バイスプレジデントのChuck Lukaszewski氏は「米国の消費者と企業の両方にとってWi-Fiは最も重要なワイヤレス通信技術となっており、2023年までに米国経済にもたらす価値は1兆ドルに上ることが見込まれている。Wi-Fi のアプリケーションおよび全体的なニーズが引き続き高まっている中、免許不要帯域である6 GHzを利用できるようになることで、Wi-Fi は今日市場にもたらしている様々なイノベーションと社会経済的なメリットをこれまでと変わらずに提供しながら、5G時代の新たな要件を満たすことが可能になる」とコメントを出している。

 ASSIA 最高戦略責任者のTuncay Cil氏は「6 GHz帯域がWi-Fiに開放されれば、間違いなくこれからの10年におけるWi-Fiの成長を支える力になるでしょう。幅広い帯域で数多くのチャネルを同時に展開できるようになることで、データ負荷が高い通信およびマルチノード ワイヤレス ネットワークのバックホールとフロントホールをサポートできるとともに、Wi-Fi システム全体として干渉への耐性が高まる。さらに副次的なメリットとして、Wi-Fi 信号位置の精度が大幅に向上することで、さまざまな新しいアプリケーションへの扉が開かれる。当社は、Wi-Fiエコシステム全体を通じてベンダーに依存しない中立的な形で、6GHzの新しい能力の標準化と商業化を積極的にサポートしていきたい」とコメントを出している。

 CableLabs テクノロジー ポリシー担当バイスプレジデントのRob Alderfer氏は「当社は、米国連邦通信委員会(FCC)が5.9 GHzと6 GHzの両周波数帯の利用に向けて前進したことに拍手を送りたい。ケーブル業界は、10Gプラットフォームをベースにブロードバンドの未来を築こうとしている。消費者の皆様が10Gのイノベーションのメリットをフル活用するためには堅牢なワイヤレス リンクが必要となり、このようなニーズにとってこの周波数帯は不可欠な存在だ」とコメントを出している。

 CEVA ワイヤレスIoT事業部VP兼GMのAnge Aznar氏は「6 GHz帯をWi-Fiが利用できるようになることを大歓迎する。切望されてきた幅広い帯域が開放されることで、すべてのWi-Fi ユーザが質の高いユーザ体験を利用できるようになるだろう。これまで当社は Wi-Fi 4、5、6、そして今回はWi-Fi 6Eと、 Wi-Fi市場の驚くべき成長に寄与してきました。また、これまでにウェアラブルや医療分野、IoT、スマートホーム、アクセス ポイント、ゲートウェイなど幅広い市場セグメントの大手半導体企業にRivieraWaves Wi-Fi IPおよびプラットフォームのライセンスを付与してきたことを誇りに思う」とコメントを出している。

 Cisco Intent-based Networking グループ、エンジニアリング担当SVPのAnand Oswal氏は「これまで以上の高いパフォーマンス、低いレイテンシ、高品質な環境を6 GHz帯に提供するWi-Fi 6E は、ワイヤレス環境の能力をレベルアップする上で重要な役割を果たすことになるだろう。6GHz帯が価値を発揮するのはWi-Fiだけではないので、あらゆるコミュニティがコラボレーションを基盤にこの周波数帯を共有して、よりシームレスな体験を創り出すことができると期待している。また、6 GHz帯では位置情報の精度も高まるので、最適なビジネスを実現するアプリケーションとユースケースを生み出す新しいエキサイティングな機会への道が開かれるだろう」とコメントを出している。

 Cisco Meraki製品管理担当ディレクターのJayanthi Srinivasan氏は「Wi-Fi によって世界は変わったが、これからもWi-Fiが世界を変えていくことができるように、Wi-Fi Allianceと連携していくことを嬉しく思う。Wi-Fi 6により6 GHz帯へ利用範囲が広がることは、2つの意味でこれまでの環境を根本から変える要因になる。 1つはこれまで以上に幅広いチャネルを利用できるようになること、もう1つはARやVRといった高帯域幅アプリケーションで160Mhzを利用できるようになることだ。これらによって、さまざまな新しいアプリケーションと利用体験を実現する膨大な機会が消費者と企業の両方にもたらされる。 Wi-Fi 6Eをベースに標準化を進めることで、私たちCisco Merakiに限らず業界の他の企業も次世代のワイヤレス体験を顧客に提供することが可能になる」とコメントを出している。

 CommScope ホーム ネットワーク担当CTOのCharles Cheevers氏は「Wi-Fi 6E によってWi-Fi 6が本来持っている能力をフル活用できるようになり、次のレベルの低レイテンシと決定論的Wi-Fi サービスを実現するための基盤が確立される。このような拡張機能によって、次世代の高速ラップトップとタブレット、Wi-Fi 6E ワイヤレス メッシュをベースにしたアプリケーション、高品質な8K動画とVRの配信、また時間的制約が厳しい(タイム センシティブ)サービスなどが可能になる」とコメントを出している。

 Extreme Networks 製品管理担当ディレクターのPerry Correll氏の「新しい帯域を利用できるようになるたびに、これを利用する新しいデバイスとアプリケーションが登場し、これまで想像すらしなかったような体験が可能になり、あっという間に私たちのライフスタイルに溶け込んでいきます。新たに6 GHz帯を利用できるようになることで、利用可能なWi-Fi周波数がこれまでの倍以上に増え、Wi-Fi 対応通信で大きな効果を発揮することになるだろう。帯域幅が広がることによって輻輳レベルが低くなりWi-Fi 6のパフォーマンスが高まるだけでなく、5 GHz帯では大きな制約下にある80 MHzや160 MHzチャネルを効果的に展開するための十分な帯域が確保される。これで、やっと6 GHzはVRとARの発展に欠かせない高いデータレートを正式に提供できるようになり、消費者も企業もこれまでとはまったく違う新たな活用方法を見出すことが可能になる」とコメントを出している。

 LANCOM Systems社 事業開発担当バイスプレジデントのJan Buis氏は「米国に比べれば欧州で開放されている帯域は狭いが、Wi-Fi 6の飛躍的な成長にとって6GHz帯が重要であることに変わりはない。データレートは倍に、レイテンシは半分になり、Wi-Fiはキャンパス ネットワークの5G環境にとって最適なオプションになるだろう」とコメントを出している。

 Qualcomm Technologies社コネクティビティ&ネットワーキング担当シニア バイスプレジデント兼ジェネラル マネージャーのRahul Patel氏は「当社は、免許不要帯域におけるテクノロジーの絶え間ない進化によって、世界中で多様な製品カテゴリーを通じて次世代の強力なコネクテッド体験を大規模に提供することが可能になると確信している。すでに革新的な特性を備えているWi-Fi 6が6 GHz帯にまで広がることがもたらす非常に大きな可能性は、どれほど言葉を尽くしても言いすぎるということはない。このような環境で高速、低レイテンシのWi-Fi 6体験を6GHz帯にまで広げる新たな時代を主導するWi-Fi Allianceは、称賛に値すると言えるだろう」とコメントを出している。