世界初、毎秒1ペタビットスイッチング実験に成功【NICT】
テレコム 無料次世代光ファイバと大規模光ノードによる将来の光基幹ネットワークを試作
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所は10月8日、次世代光ファイバと大規模光ノードの実験ネットワークで、世界で初めて、毎秒1ペタビットの光パスのスイッチング実験に成功したと発表した。このビットレートは、8K放送の1,000万チャンネル分に相当するもの。
今回、低損失なMEMSスイッチ素子を利用した大規模光ノードを開発し、これまで開発した3種の次世代光ファイバと接続して、ペタビット級の実験ネットワークを試作した。現在のネットワークの運用方法に即した4つのスイッチング実験を行い、全てのパターンでスイッチングに成功した。
今回の実験成功により、次世代光ファイバと大規模光ノードで現在の100倍以上の通信容量を持つペタビット級の光基幹ネットワークが可能となることを示し、実用化に大きく前進した。
同実験結果の論文は、第45回欧州光通信国際会議(ECOC2019)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択された。
背景
これまでNICTは、産学と連携し1本の光ファイバに複数の光通信路(コア)を収めたマルチコア光ファイバ等の次世代光ファイバを開発し、伝送容量の世界記録を更新してきた。マルチコア光ファイバの伝送容量としては、ペタビット級の研究成果が報告されているが、実際の光ネットワークには、光ファイバ以外にも、光ノードや光増幅器といった光ファイバと接続する通信機器が必要であり、これらの大容量化も不可欠だ。NICTは、将来の次世代光ネットワークに必要となる光ノードや光増幅器の大容量化の研究開発も進めてきた。
今回の成果
今回NICTは、次世代光ファイバを利用した大容量通信を目指し、低損失なMEMSスイッチ素子を利用した大規模光ノードを新たに開発し、これまで開発した3種類の次世代光ファイバを用い、現在の光基幹ネットワークの運用方法に即した4パターンの光パススイッチング実験を実施した。その結果、世界記録となる、8K放送の1,000万チャンネル分に相当する毎秒1ペタビット光パスのスイッチングや、障害発生時における運用系パスから予備系パスへのスイッチングなどに成功した。
4パターンのスイッチング実験の概要は、次のとおり。
- パターン1: 世界記録となる毎秒1ペタビット光パスのスイッチング
- パターン2: 冗長構成を構築、毎秒1ペタビット光パスの運用系と予備系のスイッチング
- パターン3: 毎秒1ペタビット光パスから容量の異なる2種類の光パスへの分岐
- パターン4: 現在運用されている容量程度の毎秒10テラビット光パスのスイッチング
今後の展望
NICTは「今回の実験成功により、次世代光ファイバと大規模光ノードでペタビット級の光基幹ネットワークが可能となることが確認できたので、今後は、産学官連携による光増幅器を利用した長距離伝送システムの研究も進め、大容量光ネットワークの実用化を目指して、研究開発に取り組んでいく」としている。
実験ネットワークの構成
使用した4種類の光パス
● 空間多重光パス(光ファイバのコア又はモードを多重したパス)
・毎秒1ペタビット=毎秒245ギガビットの光信号×202波長×22コア
・毎秒346テラビット=毎秒245ギガビット光信号×202波長×7コア
・毎秒148テラビット=毎秒245ギガビット光信号×202波長×3モード
● 波長多重光パス(光の波長を多重したパス)
・毎秒10テラビット=毎秒245ギガビット光信号×41波長
スイッチングパターン
[1]: 毎秒1ペタビット空間多重光パスのスイッチング
[2]: 毎秒1ペタビット空間多重光パスの冗長構成で、運用系パスと予備系パスのスイッチング
[3]: 毎秒1ペタビット空間多重光パスから異なる空間多重光パス(毎秒346、148テラビット)への分岐
[4]: 毎秒10テラビット波長多重光パスのスイッチング(毎秒1ペタビット空間多重光パスの合流・分離を想定)