車載用Ethernet用の画期的なテスト・ソリューションを発表【テクトロニクス】
DX/IoT/AI 無料車載用Ethernet、PAM3の重要な信号解析における困難なテスト問題を解決
テクトロニクスは7月31日、2種類のソフトウェア・パッケージを発表した。これらを5シリーズ/6シリーズMSO(ミックスド・シグナル・オシロスコープ)と組み合わせることで、車載用Ethernetのテスト、デバッグ、プロトコル・デコードを大幅に簡略化できるという。新しいPAM3信号分離ソフトウェアを使用することで、自動車のエンジニアは双方向カプラを取り付けるためにECUシステムを切り離すことやEthernetケーブルを切断することなく、車載用Ethernetのテストができる。PAM3解析パッケージは、システム・レベルで信号特性を詳細に解析することができる。
自動車のテクノロジーが車載Ethernet(IEEE 802.3bw、それ以前はBroadR-Reach)に移行するなか、複数のECU間でのインターオペラビリティと確実な動作を検証するためには、総合的な設計検証が重要になっている。現状の車載用Ethernetテスト・ソリューションでは、全二重信号を分離するために双方向カプラを取り付ける必要があるが、これにより挿入損失、リターン損失が発生するため、エラーの原因がシステムにあるのか、追加したハードウェアにあるのかの判断が難しくなる。
この問題を解決するため、テクトロニクスが開発した独自のSignal Separationソフトウェアは、電圧波形、電流波形を観測することでマスタとスレーブのテスト・ポイントの両方から全二重信号を分離し、専用のアルゴリズムで分離した信号を取り出す。この方法により、双方向カプラを必要とせずに真のECU信号が表示でき、マスタとスレーブのECUを同時に完全なプロトコル・デバッグすることができる。テクトロニクスのPAM3信号分離ソフトウェアは操作が簡単なため、テストに要するコストを抑え、測定確度を向上させることができる。PAM3信号分離ソフトウェアは、設計から保守まで、すべての車載用Ethernetのテスト工程に対応する。このソリューションは、車載テストにも使用でき、エンジン始動中、または他の条件におけるシングル・インテグリティ・テストでも使用できる。
テクトロニクス 自動車/時間ドメイン・ソリューション部門 ジェネラル・マネージャのSudipto Bose氏は「自動車は急速に、『タイヤの付いたデータ・センタ』になりつつあり、実績のあるIT技術が車載ネットワークに採用されています。安全性と信頼性は非常に重要であるため、テストはより複雑に、時間のかかる作業になった。今回発表する新製品のソフトウェアが示すように、当社は全工程における画期的なソリューションを積極的に開発することで、システム・テスト、製品開発を簡素化し、迅速化する一方、テスト時間とコストを抑える」とコメントを出している。
日立製作所 ユニットリーダ主任研究員の植松裕氏は「車載用Ethernetは、今後の自動車において非常に重要な役割を果たすものと信じている。テクトロニクス殿との協業により、車載用Ethernetテストのための新しいソリューションの提供が可能になった」とコメントを出している。
PAM3解析
車載用EthernetにおけるPAM3の3値レベルは、3つの振幅で2つのアイ・ダイアグラムができるため、シグナリングをさらに複雑にし、テスト方法において新たな要求が発生している。テクトロニクスのPAM3解析パッケージは、ソフトウェアによるクロック・リカバリで総合的な測定が行えるため、詳細な信号特性が得られ、異なる長さのケーブル、異なるノイズ条件、またはECU構成によるPAM3の検証、特性評価が迅速に行える。さらに、アイの開口部測定、アイ・マスク・テスト、現実のECU環境におけるジッタの分離、BERのプロットも実行できる。
PAM3解析ソリューションとPAM3信号分離ソリューションは、業界トップクラスのOEMメーカ、Tier 1メーカによってテスト、検証されてきた。
テクトロニクスのソリューションには、信号/プロトコルの解析の他に、Open Alliance TC8仕様による車載用Ethernetの全自動テスト、詳細なパス/フェイル・レポートによる物理レイヤ・コンプライアンス・テストも含まれている。
テクトロニクスの5シリーズMSO、6シリーズMSOは、最高8GHzのアナログ周波数帯域、25GS/sのサンプル・レート、12ビットのADコンバータを搭載し、車載用Ethernet信号の細部の観測に必要な、優れた信号忠実度、分解能による波形取込みが可能な性能を備えている。