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データセンタの空調電力を大幅に削減する空調制御技術を開発【富士通研究所】

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内気循環と外気導入の適切な組み合わせ算出などにより、空調設備の消費電力を29%削減

 富士通研究所は10月19日、データセンタの空調設備の電力を大幅に削減する空調制御技術を開発したと発表した。
 データセンタでは、AIサービスの急速な普及により、高性能かつ高発熱なコンピューティングシステムが設置され、今後ますます消費電力の増加が見込まれる。このため、データセンタでは、全電力量の30%から50%を占める空調設備の省電力化が特に求められている。現在、冷たい外気を取り入れる空調機や、最適な電力最小設定を探索する制御方法など、各データセンタで様々な工夫がされているが、さらなる電力効率の最大化を進める必要がある。今回、温度と湿度の両方の観点から外気の導入率を判断し、かつ各空調機がエリアごとにおよぼす冷却の影響度を測ることで最適な設定温度を算出する空調制御技術を開発し、空調設備の大幅な省電力化を可能にした。
 これにより、29%の空調電力削減を確認することができ、増大するデータセンタの電力消費量の削減に貢献する。

開発の背景

 AIやIoT市場の急速な拡大に伴い、データセンタに代表される大規模コンピューティングシステムでは、AI処理に特化した高発熱デバイスを搭載することによる高性能化が進んでいます。データセンタが使用している電力量は現在でも世界全体の電力消費量の約2%を占めており、この割合は今後ますます増加していくことから、電力コストだけでなく地球環境への影響も深刻となってくる。この課題に対し、データセンタ全体の電力量の約半分を占める空調設備の電力削減に着目し、様々な検討が進められている。

課題

 データセンタの空調機の消費電力を削減するために、自然エネルギーである外気を利用する外気導入式空調機が普及している。外気温度が室内温度より低いときに外気を導入することで、低消費電力での温度管理が可能となるが、空調機には湿度管理の要件もある。
 また、データセンタでは電力消費の異なるユーザの多様なサービスが実行されることになり、各サーバ機器の発熱量が大きく変動しがちだ。さらなる電力消費削減を実現するためには、各サーバの温湿度環境を決められた管理条件に保ちつつ、発熱変動が起こったサーバ機器に追従しながら各空調機の設定値を動的に制御していくことがより重要になる。

開発された技術

外気導入制御技術

 今回、空調機電力をより最小化する外気導入制御と、発熱エリアを特定し効率よく冷却するアルゴリズムを開発したという。このシステムは、富士通研究所がこれまで開発してきた、データセンタにおける温度変化の高精度予測技術と組み合わせることで、たとえば1時間先の状況を予測し、逐次電力が最小となるよう効果的に動作させることが可能になる。

・空調機電力効率に基づいた外気導入制御
 室内の空調機近辺や屋外に温湿度を測定するセンサを設置し、空調機の設定値に対して、内気循環時および外気導入時の冷却・除湿に要する消費電力を計算する。その上で、消費電力が最も小さくなるように、内気循環と外気導入の比率を制御可能な技術を開発した。これにより、温度および湿度を低消費電力で適切に管理することができる。

吹出冷気制御技術

・サーバの発熱変動に追従し、空調機電力を最小化する制御アルゴリズム
 設定温度を変更した際に、過去の室内温度分布の変化を分析し、空調機ごとの各エリアへの影響の大きさを算出する。あるエリアのサーバ温度が上がった時に、サーバが設置されているエリアへの影響が大きい空調機の設定温度を制御することで、最低限の消費電力での温度管理が可能となる。

効果と今後

 富士通研究所は「今回開発した空調制御技術を、300ラック規模の実稼働している社内データセンタにてトライアルを行ったところ、これまでの運用条件と比較して、29%の空調電力削減を実現した。その結果をもとに年間のサーバ電力量7,000万kWh、空調電力量2,200万kWhとなる 1,000ラック規模のデータセンタの条件で試算すると、年間640万kWhの省電力化が見込まれる。これにより、今後電力使用量の増大が見込まれるデータセンタの省電力化を実現し、地球環境の温暖化防止に貢献できる」としており、今後について「開発した空調制御技術を、富士通の運営するデータセンタへ2019年度から順次導入していくとともに、本技術を一体として設計された低電力かつ効果的な空調管理が行えるコンピューティングシステムへと展開していく予定だ」としている。