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世界初、冷却原子量子メモリを光ファイバ通信で動作 ― 長距離量子ネットワークの新技術 ―

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原子と通信波長光子の量子ネットワークの概要

 大阪大学大学院基礎工学研究科の山本俊准教授および生田力三助教らの研究グループは5月24日、大阪大学 井元信之名誉教授、NTT物性科学基礎研究所 向井哲哉主任研究員、情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 三木茂人主任研究員、東京大学大学院工学系研究科 小芦雅斗教授らと共に、光ファイバネットワークにアクセス可能な量子メモリとなる冷却原子と光ファイバネットワークにアクセス可能な通信波長帯光子となる冷却原子の量子ネットワークの実証に世界で初めて成功したと発表した。

 量子ネットワークは量子コンピューターによるハッキングにも耐性のある量子暗号などのセキュリティ通信を実現する。その長距離化のためには、効率的に量子状態を送受信するための中継器が必要とされている。現在のネットワークにおけるサーバのような役割をもつこの量子中継器は、量子状態を壊すことなく保存することができる量子メモリによって構成される。しかし、これまでは光ファイバ通信で利用される波長の光量子状態を長時間保存する量子メモリがなく、量子ネットワークの長距離化を阻む一つの原因になっていた。これを解決するため、効率的に波長を変換する必要があった。
 本研究グループは、量子の不思議を利用できる状態のまま、光子の波長を新開発の波長変換器によって光ファイバ通信波長に変換し、これまで研究されてきた冷却原子による量子メモリと光ファイバ通信波長の光子の間で量子ネットワークが形成されることを実証した。
 この新しい量子ネットワークを光ファイバで繋げることで、遠く離れた原子メモリ間の量子ネットワークの形成や、それを利用した長距離セキュリティ通信に役立つことが期待される。
 なお、本研究は、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」研究領域における研究課題「グローバル量子ネットワーク」(研究代表者:井元信之)の一環として行われた。また、同研究は、文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(A)、新学術領域研究および大阪大学大学院基礎工学研究科附属未来研究推進センターの支援により行われた。